セブンスソード

奏せいや

197

 眩しい。瞼の上からも強い光を感じる。ぼんやりとしていた意識が浮上して、俺は新しい世界で目を覚ます。

 見上げる世界には光があった。青い空に大きな雲。そしてさきほどから俺の目を刺激する太陽の光。温かさが上空と床から伝わってくる。

 辺りを見渡せばここがどこかはすぐに分かった。

「学校の……屋上か」

 校舎の白い床に俺は寝そべっている。ここには俺しかいない。静かな屋上に風が吹き抜けていく。

 その風にあおられて、目に浮かんでいた涙が頬へ滑った。

「兄さん」

 つぶやきが一人きりの屋上に消える。

 魔堂魔来名。彼は、俺の兄だった。絶望しかない未来の世界でそれでも俺を守ると約束してくれた人。不器用で無愛想だけれどその約束だけを貫いて、あの人はセブンスソードを戦っていたんだ。

 たった一人で。

 友と敵対して、見失って、裏切った俺なんかとは違う。

 あの人は一度たりとも曲げたりしなかった。

 昔から、あの人は変わらない。

 俺もそうなりたい。みんなと一緒にこのセブンスソードを生き残るんだ。それをもう曲げたりしない。屈したりしない。

 何度繰り返したって、俺は世界とみんなを救うんだ!

 やる気を新たに立ち上がる。ここは学校だ。きっと香織や星都、力也がいる。まずはみんなと合流しよう。星都や力也は初対面かもしれないが香織と一緒ならきっと分かってくれる。

 いや、でももし香織がいない世界だったらどうしようか? それかまた敵対する世界だったら?
 分からない。くそ。とはいえまずは知るところからだな。星都や力也が味方でいてくれることを今は願おう。

 そう思っている時だった。屋上の扉が開き誰かが入ってくる。

 その人物が声を掛けてきた。

「キャナイヘルプユー?」
「お前」

 それは星都だった。どうしてここに? それに俺を知ってるのか?

「大丈夫かよ聖治、助けに来たぜ」
「覚えてるのか?」
「おう、全部覚えてるよ」
「全部?」

 扉から星都が近づいてくる。その後に続いて何人もやってきた。

「うん、だから大丈夫ぅ。今度は僕たちも一緒に戦うからね」
「力也」
「そういうこと」
「此方!? どうしてお前がここに?」
「お姉ちゃんだけじゃないんだな~」
「日向ちゃんも!?」

 なんで此方がここに? でも制服は同じだ。日向ちゃんは学年は違うだろうが同じ制服を着ている。

 扉の前にみんなが並ぶ。俺を見ながらどこか誇らしげに笑っている。

 そんなみんなの背後から最後の人物がやってきた。

「香織」

 見間違えることのない彼女の髪が歩くたびに揺れている。香織は近づき俺の前にまでやってきた。

「聖治君」
「香織、これは」

 どういう状況なんだ? 俺だけ取り残されている感が半端じゃないんだが。

 そんな俺とは対照的に香織はまっすぐと俺を見つめている。

「大丈夫」

 そう言って手を差し出す。まるで俺を迎えにきたように、彼女は優しく笑っていた。

「ここが、旅の終点だよ」
「終点?」
「うん。ここで、すべてを終わらせよう」

 彼女がうなずく。その表情は明るくて、これからどうするか不安だった俺の心が彼女の言葉によって温められていく。

「終わる、のか? だって」
「大丈夫。私たちがいるから」

 終わりの見えないこの旅を、みんなで終わらせる。

 それが、この世界でできるのか?

 俺はみんなへと顔を動かした。みんなは俺を見つめていて、その顔はぜんぶを承知のようだ。

「みんな覚えてるよ。だから安心して。もう、聖治君は一人じゃないから」

 みんな覚えている? 香織だけじゃなくて?

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