セブンスソード

奏せいや

195

「なんで、なんで教えてくれなかったんだよ、兄さん!」

 涙が、溢れて止まらなかった。

「あああああ!」

 今だけじゃない。あんたは、戦っていたんだ。ずっと。ずっと。たった一人で。

 俺のために!

 考えれば分かったことじゃないか。パーシヴァルは誰かが発動しなければ再始動しない。なら最初の世界で、誰がパーシヴァルを発動した?

 決まってる。俺たちを殺した、魔堂魔来名だ。

 あんたはその時俺の魂に触れた。そして思い出したんだよな?

 俺が、あんたの弟だったことを。

 その時から、あんたの旅は再開したんだ。

 何度も、何度も。たとえ世界が形を変えて、味方も仲間もいなくても。俺と交わした約束を守るためだけに。

 ずっと、一人で。

「兄さん!」

 魔来名の体を抱きしめる。ううん、本当の名前は剣島正和(まさかず)。俺の兄だった人。頑固で、決して仲がいいとは言えない人だったけど。

 俺の、たった一人の家族だったんだ。

 俺には使命がある。みんなとした未来を変えるっていう約束が。

 だから今俺がするのはここで一人悲しんで泣き叫ぶことじゃない。天黒魔と一緒にみんなと合流すること。

 それは分かってる。

 だけど。

「俺は」

 これでいいのか? ずっと戦ってきたんだぞ? ずっと守ってきたんだぞ? それがこんな終わり方でいいのかよ?

 こんな報われない終わり方でッ。

「絶対に見捨てない!」

 俺は、パーシヴァルを取り出した。

「一人だって!」

 魔来名の体を下ろし、反対の手に天黒魔を出す。俺は天黒魔を握る手に力を入れ、壊れるように念じた。

 天黒魔が砕ける。紫色の欠片となって散っていく。その力を取り込みパーシヴァルの輝きが増していく。

「仲間は、絶対に見捨てない!」

 俺は、念じる。

 たとえ次の世界がどんな形か分からなくても。それが今より困難なものだったとしても。

 俺は、すべてを知ったんだ。

 なら、諦めてたまるか。

 香織。星都。力也。此方。日向ちゃん。そして魔来名。

 俺はみんなのことを知った。みんなと出会い、みんなと同じ時を過ごした。

 そして、仲間になったんだ! 敵なんかじゃない。それぞれの胸に大事な想いを抱えてセブンスソードに挑んでいた。見捨てるなんてしない。

 みんな、俺の掛け替えのない仲間だから。

 だから、ここからまた始めるんだ。

 俺の旅を。

 俺の望む、未来に向かって!

「レインボー・ロード!」

 パーシヴァルの光が世界を包む。世界を変えていく。

 新しい世界に旅立つために。

 パーシヴァルの光が、俺の視界を覆っていった。

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