セブンスソード
188
魔来名は走り出した。それに合わせロハネスの攻撃が再開される。空間にいくつもの波紋が生まれ槍が生えてくる。それを切り裂いた。天黒魔を振るう度に一歩踏み出し、踏み出す毎に天黒魔を振るう。そうしてロハネスとの距離が縮まっていく。
魔来名とロハネスの距離が勝敗を決める。それがゼロになった時魔来名は勝てる。
迫りくる槍を伐採し、針地獄のような窮地を踏破して、ついに魔来名はロハネスの前まで近づいた。
勝った!
「ふん!」
魔来名がスパーダを振るう。勝利を確定させる一撃。
しかし、それは空振りに終わっていた。
「そんな!?」
ロハネスは天黒魔が振るわれる前に空間転移で別の場所に移動していたのだ。魔来名と十分距離を離した場所で悠々と立っている。
「惜しかったな。でも残念、振り出しだ」
魔来名の不発に笑みまで見せてくる始末だ。
「いいね、やっぱり戦いっていうのはこうでなくちゃ。まあ、欲を言えばもっと斬り合いたいんだがな」
あれでも結構危なかったはずだがロハネスは笑っている。本当に戦いを楽しんでいる。
くそ、駄目なのか?
ロハネスが空間を操ってくるのは分かっていた。でもこうするしかないんだ。なんとかしてロハネスの懐に潜り込み攻撃を当てるしかない。
「…………」
離れた敵を魔来名は静かに見つめている。ロハネスが空間転移したことで勝機は遠のいた。普通なら戦意消失してもおかしくない。
けれど。
その目は死んでいなかった。
血を流し、勝機を逃し、それでも魔来名はロハネスを見つめている。戦意を湛えた瞳で。
絶望なんて、していない。
「ずいぶん楽しんでいるようだが」
魔来名は天黒魔の柄に手を添えた。
「そろそろ終わりにするか」
「できるのか?」
「お前の底は知れた。感覚も掴めた。これ以上延ばす理由もない」
「ほー」
ロハネスも槍を構える。距離はあるが斬り合う姿勢を取る。
「こっちは盛り上がってきたのに、残念だ」
「ふん」
まるで次の一撃で決まるかのような雰囲気がこの場を覆う。
「…………」
「…………」
無言でにらみ合い、息を飲むほどの緊張が俺にまで伝わってくる。
「ッ」
ロハネスが動く。目が見開かれる。それと同時に展開されるいくつもの空間転移。それによって魔来名の周りに何本もの槍が出現する。
「!」
それとほぼ同時、魔来名は居合いを一閃させた。天黒魔が鞘から抜かれるが、しかし槍はまだ間合いに入っていない、早すぎる!
天黒魔の黒い刀身が空を切る。それはただの空振りに思われた。
だが、
「がああああ!」
直後、挙がったのはロハネスの悲鳴だった。
ロハネスの体の至る所から血が流れ斬られている。ロハネスも槍を回しいくつかは防いだようだが同時にいくつも放たれた斬撃すべては防げずその場に膝を突く。
魔来名の周りには槍が空間から顔を覗かせているが襲ってはこない。勝負がついたことをロハネスも分かったんだろう。波紋は消え槍も下がっていく。
「多元同時攻撃、か。やっぱりな」
血が滴り地面に落ちる。この一瞬で痛々しい姿に成り果てたロハネスだがその口調はどこまでも楽しげだった。
「出張るのが遅すぎたか。いや、どの道変わらなかったかもしれないな」
負傷した自身の体を見る。今のロハネスは魔来名よりもひどい。
もうすぐで命は事切れる。ロハネスは満足げに笑い、魔来名を見上げた。
「俺のわがままにつき合わせたな。分かってるだろ、お前のその体」
「…………」
「最後にやり合えた。それだけで俺は満足さ」
ロハネスの顔が下がる。それからはなにも言わず、体が音もなく消えていく。
ロハネス・ガンブルクはそれだけを言うと俺たちの前からいなくなっていた。最後に残った魂だけが魔来名に吸収されていく。
俺たちは、生き残ったんだ。
魔来名とロハネスの距離が勝敗を決める。それがゼロになった時魔来名は勝てる。
迫りくる槍を伐採し、針地獄のような窮地を踏破して、ついに魔来名はロハネスの前まで近づいた。
勝った!
「ふん!」
魔来名がスパーダを振るう。勝利を確定させる一撃。
しかし、それは空振りに終わっていた。
「そんな!?」
ロハネスは天黒魔が振るわれる前に空間転移で別の場所に移動していたのだ。魔来名と十分距離を離した場所で悠々と立っている。
「惜しかったな。でも残念、振り出しだ」
魔来名の不発に笑みまで見せてくる始末だ。
「いいね、やっぱり戦いっていうのはこうでなくちゃ。まあ、欲を言えばもっと斬り合いたいんだがな」
あれでも結構危なかったはずだがロハネスは笑っている。本当に戦いを楽しんでいる。
くそ、駄目なのか?
ロハネスが空間を操ってくるのは分かっていた。でもこうするしかないんだ。なんとかしてロハネスの懐に潜り込み攻撃を当てるしかない。
「…………」
離れた敵を魔来名は静かに見つめている。ロハネスが空間転移したことで勝機は遠のいた。普通なら戦意消失してもおかしくない。
けれど。
その目は死んでいなかった。
血を流し、勝機を逃し、それでも魔来名はロハネスを見つめている。戦意を湛えた瞳で。
絶望なんて、していない。
「ずいぶん楽しんでいるようだが」
魔来名は天黒魔の柄に手を添えた。
「そろそろ終わりにするか」
「できるのか?」
「お前の底は知れた。感覚も掴めた。これ以上延ばす理由もない」
「ほー」
ロハネスも槍を構える。距離はあるが斬り合う姿勢を取る。
「こっちは盛り上がってきたのに、残念だ」
「ふん」
まるで次の一撃で決まるかのような雰囲気がこの場を覆う。
「…………」
「…………」
無言でにらみ合い、息を飲むほどの緊張が俺にまで伝わってくる。
「ッ」
ロハネスが動く。目が見開かれる。それと同時に展開されるいくつもの空間転移。それによって魔来名の周りに何本もの槍が出現する。
「!」
それとほぼ同時、魔来名は居合いを一閃させた。天黒魔が鞘から抜かれるが、しかし槍はまだ間合いに入っていない、早すぎる!
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だが、
「がああああ!」
直後、挙がったのはロハネスの悲鳴だった。
ロハネスの体の至る所から血が流れ斬られている。ロハネスも槍を回しいくつかは防いだようだが同時にいくつも放たれた斬撃すべては防げずその場に膝を突く。
魔来名の周りには槍が空間から顔を覗かせているが襲ってはこない。勝負がついたことをロハネスも分かったんだろう。波紋は消え槍も下がっていく。
「多元同時攻撃、か。やっぱりな」
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「出張るのが遅すぎたか。いや、どの道変わらなかったかもしれないな」
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もうすぐで命は事切れる。ロハネスは満足げに笑い、魔来名を見上げた。
「俺のわがままにつき合わせたな。分かってるだろ、お前のその体」
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ロハネスの顔が下がる。それからはなにも言わず、体が音もなく消えていく。
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俺たちは、生き残ったんだ。
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