セブンスソード
178
「魔卿騎士団幹部。どれほどのものかと思ってみたがこの程度の集まりとは期待はずれもいいとこだ。そんなのだから団長一人がいなくなっただけで瀕死にもなる。そして、その器を作るべく始めたスパーダにもこの様だ。魔卿騎士団などもはや不要だろう、大人しく滅びたらどうだ」
「そう」
魔来名の台詞にエルターの表情がみるみる冷めていくのが分かる。声からも激情のようなものは消えていた。
「お前自身に興味はなかったがその体は重要だ。よって温情を掛けていた私の方が浅はかだったわね」
冷たい。そしてどこか諦めたような心情。
「中身がどうであれ、お前のようなものを団長にはさせられない」
今まで殺気だと思っていたものですら過剰反応だった。炎のような戦意から氷のような殺意へと切り替わる。
「ふん。早くしろ、時間の無駄だ」
そう言う魔来名だが感じているはずだ、エルターの気配が変わったことを。
エルターは弓を構えた。鋭い眼光が魔来名をとらえるがその弦には矢がセットされていなかった。耳よりも後ろに引くもののそれでは意味がないはず。
しかし、矢はすでにセットされていた。
「なんだあれは!?」
見たこともない光景に思わず声が出る。
エルターの後方、その頭上に巨大な黒い穴が空いていた。穴が空くと同時に強風が巻き起こり落ち葉や石ころなどが吸い込まれていく。俺も地面に手をつき必死に抵抗した。気を抜けば俺まであの穴に吸い込まれそうだ。
吸引される風の中なんとか穴の向こう側を見てみる。黒い穴にはいくつもの光が見えた。まるで夜空の星のような光の数々。
いや、比喩なんかじゃない。星そのものだ!
あの穴は宇宙空間に繋がっているんだ。それだけじゃない。宇宙になにかある。
それは光で編まれていく一つの柱。周囲に煌めく星光を集めて像を成し、宇宙の彼方から破滅の光がこちらを伺っている。
「天より裁きよ来たれ断罪の時(ジャッジメント・デスペナルティ)」
あんなものが打ち込まれたらどうしようもない。避ける避けないとかじゃない、爆発に巻き込まれ殺される。この町一帯ただじゃ済まないぞ!
「それがお前の全力か」
そう言って魔来名は居合いの構えを取った。今までにない脅威を前にしても怯えはない。
「こい、次の一撃で終わりにしよう」
弓と抜刀による早抜き勝負。一つは空間転移による宇宙からの戦略級の爆撃。
片や刀による斬撃。両者の距離は数メートルは離れている。どう考えても魔来名が不利だ。もし失敗すれば俺も魔来名も終わり。
緊張が極限まで張りつめる。魔来名のつま先がじりりと前へと滑り、エルターの目つきが鋭さを増す。
どちらが勝つにしても、次の勝負で決まる。
エルターが弦から指を離した。さらに周囲に浮かべた矢も一斉に発射する。いくつもの矢と矢と表すには巨大過ぎる杭。宇宙に輝くミサイルは加速すらなく瞬時に襲いかかってきた。
迫るいくつもの脅威。いくつもの光。
それらを正面から捉えて魔来名も動いた。刀身が鞘から出るなり充満する死の気配を漂わせ。瞬間この場は死の呪いに支配される。
彼は、言った。
「刹那(せつな)斬り」
瞬間、勝負は終わっていた。
なにが起こったのかは分からない。ただ分かるのは魔来名の姿は直後消え、気づいた時にはエルターの背後に立っていたことだ。そこで彼は天黒魔を納刀していく。その最中、首を失ったエルターの遺体が地面に倒れていた。
勝負は、決していた。
放たれた矢は標的を失ったように明後日の方向へと消えていき、宇宙に空いていた穴は閉じて光の柱がこちらへ来ることはなかった。
魔来名は姿勢を元に戻す。そこには最初に負っていた傷以外はない。あの瞬時の勝負を完全に制していたんだ。
「術師が死ねば因果律の操作も解けるか。つくづく詰めが甘かったな」
魔来名の言うとおり矢が追撃してくることはなかった。あのまま消えていったのはそういうことなんだろう。
そこでエルターの遺体が消えていき代わりに光の玉が浮かび上がっていた。それは魔来名に吸い込まれるように近づいていく。
魔来名はそれを片手で捕まえた。それは散っていきながら魔来名の体に溶けていく。
「……ふん」
その光景の一部始終を俺は見つめていた。なんだかとんでもないものを見てしまった気分だ。
なにせ、あの管理人をスパーダが倒したのだ。俺たちがどんなに頑張っても倒せなかった管理人を、しかも一人で。こんなの普通に考えてめちゃくちゃだ。あまりのことに唖然としてしまう。
魔来名はスパーダを消した。敵はいなくなり勝負は終わったんだ。
いや、そうじゃなくて。これからどうなるんだ? 普通に考えて今度は俺が殺される?
逃げないと。そう思うが体が動かない。くそ。エルターからつけられた傷で満足に動けない。さらに意識まで薄れてきた。
体から力が抜け地面に倒れる。だんだんと意識が遠のく。
やばい……。
ぼんやりとした視界に魔来名が映る。俺に近づき見下ろしている。
俺は見上げるが、それを無視するように意識が底へと沈んでいった。
「そう」
魔来名の台詞にエルターの表情がみるみる冷めていくのが分かる。声からも激情のようなものは消えていた。
「お前自身に興味はなかったがその体は重要だ。よって温情を掛けていた私の方が浅はかだったわね」
冷たい。そしてどこか諦めたような心情。
「中身がどうであれ、お前のようなものを団長にはさせられない」
今まで殺気だと思っていたものですら過剰反応だった。炎のような戦意から氷のような殺意へと切り替わる。
「ふん。早くしろ、時間の無駄だ」
そう言う魔来名だが感じているはずだ、エルターの気配が変わったことを。
エルターは弓を構えた。鋭い眼光が魔来名をとらえるがその弦には矢がセットされていなかった。耳よりも後ろに引くもののそれでは意味がないはず。
しかし、矢はすでにセットされていた。
「なんだあれは!?」
見たこともない光景に思わず声が出る。
エルターの後方、その頭上に巨大な黒い穴が空いていた。穴が空くと同時に強風が巻き起こり落ち葉や石ころなどが吸い込まれていく。俺も地面に手をつき必死に抵抗した。気を抜けば俺まであの穴に吸い込まれそうだ。
吸引される風の中なんとか穴の向こう側を見てみる。黒い穴にはいくつもの光が見えた。まるで夜空の星のような光の数々。
いや、比喩なんかじゃない。星そのものだ!
あの穴は宇宙空間に繋がっているんだ。それだけじゃない。宇宙になにかある。
それは光で編まれていく一つの柱。周囲に煌めく星光を集めて像を成し、宇宙の彼方から破滅の光がこちらを伺っている。
「天より裁きよ来たれ断罪の時(ジャッジメント・デスペナルティ)」
あんなものが打ち込まれたらどうしようもない。避ける避けないとかじゃない、爆発に巻き込まれ殺される。この町一帯ただじゃ済まないぞ!
「それがお前の全力か」
そう言って魔来名は居合いの構えを取った。今までにない脅威を前にしても怯えはない。
「こい、次の一撃で終わりにしよう」
弓と抜刀による早抜き勝負。一つは空間転移による宇宙からの戦略級の爆撃。
片や刀による斬撃。両者の距離は数メートルは離れている。どう考えても魔来名が不利だ。もし失敗すれば俺も魔来名も終わり。
緊張が極限まで張りつめる。魔来名のつま先がじりりと前へと滑り、エルターの目つきが鋭さを増す。
どちらが勝つにしても、次の勝負で決まる。
エルターが弦から指を離した。さらに周囲に浮かべた矢も一斉に発射する。いくつもの矢と矢と表すには巨大過ぎる杭。宇宙に輝くミサイルは加速すらなく瞬時に襲いかかってきた。
迫るいくつもの脅威。いくつもの光。
それらを正面から捉えて魔来名も動いた。刀身が鞘から出るなり充満する死の気配を漂わせ。瞬間この場は死の呪いに支配される。
彼は、言った。
「刹那(せつな)斬り」
瞬間、勝負は終わっていた。
なにが起こったのかは分からない。ただ分かるのは魔来名の姿は直後消え、気づいた時にはエルターの背後に立っていたことだ。そこで彼は天黒魔を納刀していく。その最中、首を失ったエルターの遺体が地面に倒れていた。
勝負は、決していた。
放たれた矢は標的を失ったように明後日の方向へと消えていき、宇宙に空いていた穴は閉じて光の柱がこちらへ来ることはなかった。
魔来名は姿勢を元に戻す。そこには最初に負っていた傷以外はない。あの瞬時の勝負を完全に制していたんだ。
「術師が死ねば因果律の操作も解けるか。つくづく詰めが甘かったな」
魔来名の言うとおり矢が追撃してくることはなかった。あのまま消えていったのはそういうことなんだろう。
そこでエルターの遺体が消えていき代わりに光の玉が浮かび上がっていた。それは魔来名に吸い込まれるように近づいていく。
魔来名はそれを片手で捕まえた。それは散っていきながら魔来名の体に溶けていく。
「……ふん」
その光景の一部始終を俺は見つめていた。なんだかとんでもないものを見てしまった気分だ。
なにせ、あの管理人をスパーダが倒したのだ。俺たちがどんなに頑張っても倒せなかった管理人を、しかも一人で。こんなの普通に考えてめちゃくちゃだ。あまりのことに唖然としてしまう。
魔来名はスパーダを消した。敵はいなくなり勝負は終わったんだ。
いや、そうじゃなくて。これからどうなるんだ? 普通に考えて今度は俺が殺される?
逃げないと。そう思うが体が動かない。くそ。エルターからつけられた傷で満足に動けない。さらに意識まで薄れてきた。
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