セブンスソード

奏せいや

164

 コロポックルは両手をかざすとマジックショーみたいに煙とともにフラスコや試験管、アルコールランプなどの科学セットが現れた。そこによく分からない液体やらなにやらを混ぜ合わせていく。緑と黄色の液体は一つになり赤色へと変色した。

「できたズラ!」

 赤い液体の入ったフラスコを持ち上げそれを仮面の男に投げつける。仮面の男は振り返ることなく放られたフラスコを槍で突き液体が全身にかかる。それはすぐに揮発(きはつ)し赤いオーラとなって仮面の男を包んでいた。

「は!」

 仮面の男が駆ける。仮面の男も巨体だがその大きさに似合わず俊敏だ。すぐに星都の前に現れ槍を振り下ろす。星都もグランで迎え撃つ。

 グランと槍がぶつかった。重量の大剣が当たるが槍はそれに拮抗していた。

「ちい!」

 力は互角。二人は離れ一端距離が開ける。

 バフ担当か! さきほどの赤い液体をかけられて明らかに力が上がっている。揮発しているから長い間は続かないだろうがそれでも厄介だ。

 それは見ていた他の隊員も思ったんだろう。銃の標的がコロポックルに向かう。

「うわああ! 撃たれるズラ!」
「じゃ、私はこれで!」
「助けてくれズラァー」
「ちょっと、足掴むな。飛べないでしょうが!」
「オイラとお前の仲じゃなかったのかズラ!?」
「知るかバーカ! 死ぬなら一人で死ね!」 

 コロポックルとピクシーめがけ一斉に発射された。

「「ひいいい!」」

 だが、それらは当たる前に黒い空間へと消えていった。

「助かったズラ~」
「さすがイッチー、頼りになる~」
「…………」

 女の悪魔、あれが守ったのか。

 くそ。別空間を出現させ移動や防御を可能とするあの能力をどうにかしなければやつらは倒せない。

 星都はスパーダを構え直し女の悪魔を見た。倒す気だ。そうしなければ誰も倒せない。星都が踏み込もうとしたその瞬間だった。

「デューク!」

 ピクシーが唱える。それで星都の動きが止まった。

「なに?」

 まるで標的を失ったように顔を左右に振っている。まさか、見えていないのか?

 あのピクシーはデバフ担当か。星都は目が見えるようになったが攻める前に仮面の男に攻撃され防戦だ。

 厄介だな。というかバランスが取れている。

 オフェンス二人にディフェンス、バフとデバフが一人ずつ。ディフェンスを崩したいがバフとデバフが邪魔をしてくる。互いの能力がシナジーしている。

 すると三頭の犬がまたも暴れ出し、さらに柱を壊し始めた。生き埋めにするつもりか! やつらは黒い空間に逃げ込めばいいからまずいぞ! 隊員たちも銃で応戦するが利いていない。

「させるかあ!」

 星都が犬へと迫る。エンデュラスの速度では誰も止められない。

「デューク!」

 ピクシーが再び目眩ましの呪文を唱える。だが星都は止まらなかった。犬は見た。ならそこを目指し攻撃するまで。目が見えなくても星都は記憶を頼りに犬へと攻撃していた。

「ぐうう!」

 犬が再び吹き飛ばされる。あれほどの巨体が転がり壁へと激突している。星都は目を開き追撃せんとさらに剣を構える。それを三つの頭が見る。

「グオオオオ!」

 三頭の叫びがこの場を襲う。それは地下で反響し肌を刺すほどの音量だった。だがそれだけじゃない。

「ぬ!」

 星都が持つグランがいきなり落ち地面がひび割れていた。

 グランの能力はどうしたんだ? 重力の影響を受けないグランなら地面に落ちるなんてことないはずなのに。

 まさか、今の雄叫び。あれのせいで能力が消えたのか? 狼の叫びは魔を払うというがあの三頭の犬は異能をかき消せるのか。

「御免!」

 能力が打ち消された隙に仮面の男が星都を突いた。星都はなんとか体を反らすが先端が腕を掠める。

 仮面の男はそのままの勢いで星都を横切っていく。犬の叫びは止まった。吠えている間異能を打ち消すのならこれで再び使えるはず。

 だが、グランは地面にめり込んだままだった。

「封魔の槍で突いた。その傷が癒えるまで能力は使えん」

 そんな。それじゃあスパーダが使えない!

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