セブンスソード
162
その時だった。
コツン、コツンと足音が扉越しに聞こえてくる。すぐに全員が銃を構えた。一歩一歩、まるで余裕すら感じられる歩調で近づいてくる。日向ちゃんじゃない。音が徐々に大きくなり、俺はつばを飲み込んだ。
敵が、ついに来たんだ。
足音は扉の前まで来ると止みこの場は静寂に包まれる。緊張感が最大まで張りつめて心臓がバクバク鳴っているのが自分でも分かる。
静けさが重い。
瞬間だった。扉の前の空間に黒いシミのようなもやが現れた。それは広がっていき人一人分の大きさになると奥から一人の女性が現れた。
くるみの髪をした女性だった。腰まで伸びるストレートは滑らかで肌は白く、胸元を強調し露出の高い赤いボンテージ状の服を着ている。
なにより、彼女の背中にはコウモリのような翼が広がっていた。また腰からは尻尾も伸びている。彼女はなにも喋らず、氷のような瞳が戦場を見つめている。
その姿は妖艶だった。でもそれ以上に冷たい。心を凍てつかせ芯まで凍ったような。表情は無感情なのに目だけがかすかな殺意を湛えている。
これが悪魔? 俺が知っているのとは全然違う。
「撃てぇ!」
星都の号令を合図に銃声が鳴り響く。三十近くになる銃口が彼女をとらえ一斉に発射される。一人に対してそれは明らかなオーバーキルだ。
だが、銃弾が彼女に当たる直前、空間には黒いシミのような空間が現れ銃弾はそこへ飲み込まれていた。銃弾が彼女に迫る度黒い空間が現れては消えていく。まるで湖に雨が降っている時の水面のようだ。次々に波紋が現れては消えていく。銃弾が一斉に彼女に放たれるがすべて当たる前に黒い世界へと消えていった。
「止めぇ!」
これでは続けていても弾薬の無駄だ。耳をつんざくほどの銃声が止み静けさが戻る。
どうするべきか。銃弾が利かないなら星都のエンデュラスで切りかかるべきか? だがそれで星都まであの黒い空間に飲み込まれてしまったらお仕舞いだ。
次の一手を考える。だが次に動いたのは相手の方だった。
彼女が片手を横に切る。すると彼女の背後に巨大な黒い空間が現れそこから新たに四体の悪魔が現れたのだ。
一体は三十センチほどの翼の生えた女の子。
一体は一メートルにも満たない小人。
一体は全身が緑色の鱗で覆われ尻尾がある仮面の男。
一体は三頭を持つ巨大な犬。
ここまでにある防御壁や扉をすり抜けて、彼女は仲間を召喚したのだ。
その内の一体、空を浮遊している金髪のツインテールで黒い服を着た女の子が大仰に腕を広げた。
「パンパカパーン! 大変長らくお待たせしました! ドブネズミみたいに地下でうじうじ暮らす人類のてめえら、その惨めな人生に引導を渡してやるから感謝しろよなー。せめて好きな相手の名前でも浮かべながらドラマチックに死んでいけよ」
明るい口調でめちゃくちゃ物騒なことを言っている。これから殺し合いをするっていうのにまるで遊びみたいだ。
すると足下にいる小人がやれやれと顔を振った。小人というよりも小学生くらいの男の子で全体的に緑色の服を着ており大きなとんがり帽子を被っている。さらに明らかに丈の合っていない長めのマントを羽織っていた。
「それが宣戦布告ズラ~? 品がないにもほどがあるズラ」
「黙れコロポックル、こういうのは最初が肝心なんだからガツンといかなきゃいけないのよ。小心者のあんたには分からないでしょうけど」
「なにを~!? オイラがお前よりも小心者なんて聞き捨てならないズラ!」
「ああ~!? コロポックルのくせに生意気な!」
「ピクシーのくせに威張るなズラ!」
なにやら二体の間で火花が散っている。
そんな様子を仮面の男や三頭の犬は気にせず星都たちの出方を伺っていた。男は人型のワニのような容姿をしており背は二メートル近くもあった。さらに鎧を着けておりその手には槍が握られている。顔は白い仮面をかぶっているので見えないがその奥から声が響く。
「これから決戦だというのに緊張感がないな。いつものことと言えばそれまでだが」
それに対し三頭の内真ん中の頭がしゃべる。犬の形をしているがとても大きい。見上げるほどの高さで象よりも大きい。灰色の毛並みはきれいだがその顔つきは厳格だ。番犬。そういう印象がしっくりくる。大きいだけじゃなく放つオーラのでかさからも強いのが伝わってくる。
「しょせん下級悪魔だ。足りていないおつむではこの舞台道化にしかならんわ」
「ちょっとー。ケロちゃんそういう言い方傷つくんですけど!」
「ケロちゃん言うな!」
ピクシーの反抗に犬の方も応戦している。仲が良さそうには見えないが仲間ではあるんだろう。本当に仲が悪かったらこんなやり取りはできないはずだ。
コツン、コツンと足音が扉越しに聞こえてくる。すぐに全員が銃を構えた。一歩一歩、まるで余裕すら感じられる歩調で近づいてくる。日向ちゃんじゃない。音が徐々に大きくなり、俺はつばを飲み込んだ。
敵が、ついに来たんだ。
足音は扉の前まで来ると止みこの場は静寂に包まれる。緊張感が最大まで張りつめて心臓がバクバク鳴っているのが自分でも分かる。
静けさが重い。
瞬間だった。扉の前の空間に黒いシミのようなもやが現れた。それは広がっていき人一人分の大きさになると奥から一人の女性が現れた。
くるみの髪をした女性だった。腰まで伸びるストレートは滑らかで肌は白く、胸元を強調し露出の高い赤いボンテージ状の服を着ている。
なにより、彼女の背中にはコウモリのような翼が広がっていた。また腰からは尻尾も伸びている。彼女はなにも喋らず、氷のような瞳が戦場を見つめている。
その姿は妖艶だった。でもそれ以上に冷たい。心を凍てつかせ芯まで凍ったような。表情は無感情なのに目だけがかすかな殺意を湛えている。
これが悪魔? 俺が知っているのとは全然違う。
「撃てぇ!」
星都の号令を合図に銃声が鳴り響く。三十近くになる銃口が彼女をとらえ一斉に発射される。一人に対してそれは明らかなオーバーキルだ。
だが、銃弾が彼女に当たる直前、空間には黒いシミのような空間が現れ銃弾はそこへ飲み込まれていた。銃弾が彼女に迫る度黒い空間が現れては消えていく。まるで湖に雨が降っている時の水面のようだ。次々に波紋が現れては消えていく。銃弾が一斉に彼女に放たれるがすべて当たる前に黒い世界へと消えていった。
「止めぇ!」
これでは続けていても弾薬の無駄だ。耳をつんざくほどの銃声が止み静けさが戻る。
どうするべきか。銃弾が利かないなら星都のエンデュラスで切りかかるべきか? だがそれで星都まであの黒い空間に飲み込まれてしまったらお仕舞いだ。
次の一手を考える。だが次に動いたのは相手の方だった。
彼女が片手を横に切る。すると彼女の背後に巨大な黒い空間が現れそこから新たに四体の悪魔が現れたのだ。
一体は三十センチほどの翼の生えた女の子。
一体は一メートルにも満たない小人。
一体は全身が緑色の鱗で覆われ尻尾がある仮面の男。
一体は三頭を持つ巨大な犬。
ここまでにある防御壁や扉をすり抜けて、彼女は仲間を召喚したのだ。
その内の一体、空を浮遊している金髪のツインテールで黒い服を着た女の子が大仰に腕を広げた。
「パンパカパーン! 大変長らくお待たせしました! ドブネズミみたいに地下でうじうじ暮らす人類のてめえら、その惨めな人生に引導を渡してやるから感謝しろよなー。せめて好きな相手の名前でも浮かべながらドラマチックに死んでいけよ」
明るい口調でめちゃくちゃ物騒なことを言っている。これから殺し合いをするっていうのにまるで遊びみたいだ。
すると足下にいる小人がやれやれと顔を振った。小人というよりも小学生くらいの男の子で全体的に緑色の服を着ており大きなとんがり帽子を被っている。さらに明らかに丈の合っていない長めのマントを羽織っていた。
「それが宣戦布告ズラ~? 品がないにもほどがあるズラ」
「黙れコロポックル、こういうのは最初が肝心なんだからガツンといかなきゃいけないのよ。小心者のあんたには分からないでしょうけど」
「なにを~!? オイラがお前よりも小心者なんて聞き捨てならないズラ!」
「ああ~!? コロポックルのくせに生意気な!」
「ピクシーのくせに威張るなズラ!」
なにやら二体の間で火花が散っている。
そんな様子を仮面の男や三頭の犬は気にせず星都たちの出方を伺っていた。男は人型のワニのような容姿をしており背は二メートル近くもあった。さらに鎧を着けておりその手には槍が握られている。顔は白い仮面をかぶっているので見えないがその奥から声が響く。
「これから決戦だというのに緊張感がないな。いつものことと言えばそれまでだが」
それに対し三頭の内真ん中の頭がしゃべる。犬の形をしているがとても大きい。見上げるほどの高さで象よりも大きい。灰色の毛並みはきれいだがその顔つきは厳格だ。番犬。そういう印象がしっくりくる。大きいだけじゃなく放つオーラのでかさからも強いのが伝わってくる。
「しょせん下級悪魔だ。足りていないおつむではこの舞台道化にしかならんわ」
「ちょっとー。ケロちゃんそういう言い方傷つくんですけど!」
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