セブンスソード

奏せいや

155

「バレてるならもういいだろ。足でも切り落とせ」
「怖いこと言うなよ、撃ち抜くだけでいいだろ」

 そう言って男が拳銃を向けてくる。

 くそ。悔しい。けっきょくこうなのか? 俺はなにもできず、こんなやつらが生き残って好き勝手している。それは変えられないって?

 俺は、なんて無力なんだッ。

 俺の思いは届くことなく、男は引き金を引いた。

 銃声がなる。

 それを、つかみ取る手があった。

「がああ!」

 俺と隊員の間を突風が通る。俺は撃たれていない。

「なんだ!?」

 男たちも慌てる。一体なにが起きた。風が通り抜けた先を見る。

 そこには男が立っていた。白い髪。銃弾を手の上で遊ばせ白いロングコートを着た男はゆっくりと振り返る。

 男は、まるでいたずら好きな笑みを浮かべていた。

「よう。間一髪だったな、相棒」

 その手には、エンデュラスが握られていた。

「お前、まさか星都か?」

 それは紛れもなく星都だ。エンデュラスを持っているし、その呼び方が懐かしく思える。

 でも俺が知っている星都とは少し違っていた。背が俺よりも高い気がするし表情も大人っぽくなっている。こいつ、本当に星都か?

「言いたいことは分かるぜ。命の恩人、僕にキスをしてだろ?」
「違うわ」

 間違いない、こいつ星都だわ。

「分かってるよ。話したいことはいろいろあるがちょっと待ってろ。ゴミが散らかってるからな、話は片づけてからだ」

 星都は銃弾を空き缶みたいに放り捨て片手に持ったエンデュラスを男たちに向ける。

「てめえ」

 男たちも星都に銃口を向ける。すさまじい殺気とともに今にも発砲しそうだ。

「司令官がのこのこ出てきやがって。お前を倒せば褒美が出る。死ねぇ!」
「どんな褒美か知らねえがてめえらがそれを受け取ることはねえよ」

 男たちは一斉に銃を撃ち出した。アサルトライフルからいくつもの弾丸が連続して放たれる。それが五つだ。人ひとりなんて蜂の巣にされ瞬く間に絶命してしまう。

 そんな銃弾の嵐の中で、星都は無傷のままだった。

 まるで星都の前にバリアでもあるかのようにすべての銃弾が弾かれていく。いや、切り落とされていた。すさまじい金属音だ。破裂するかのような音がいくつも重なり爆音になって響く。

 星都が見逃すよりも早くに男たちの銃弾が底を突いた。いくら引き金を引いてももう弾は出ない。星都は全弾を防いでいた。なんてやつだ、いったい何発斬ったんだ。

 男たちは急いで弾倉を変えようとするが遅い。特に星都の前でそれは致命的だ。

 直後、この場を突風が駆け抜けていった。気づけば星都は男たちの背後に立っており、男たちは全員が斬られていた。

「ぎゃああ!」

 悲鳴が五つ同時に上がる。男たちは倒れ起き上がることはなかった。

「眠ってろクズが、一生な」

 俺は見ているだけだった。それしかできないし、する必要もなかった。気づけば星都が助けてくれていた。

 星都がゆっくりと俺に歩いてくる。俺が知っている風貌とはちょっとだけ違うその顔が、知ってる通りの笑顔を見せ手を伸ばしてくれた。

「よく起きてくれたな。お前を待ってたぜ、聖治」



 それから駆けつけてきてくれた星都の仲間たちと合流し俺は今度こそ星都たちの本拠地へと向かっていた。廃墟と化したビルに入っていくと思ったら地下へと潜りそこからいくつもの道を通っていく。

「地下にあるんだな」
「地上はもうやつらの勢力下だからな、ここくらいしか居場所がないのさ」

 通路を歩き続けていくと鉄の扉が見えてきた。巨大な丸い扉で銀行にある金庫みたいだ。

 その扉がゆっくりと開けられる。扉の先にはさらに一本道が続いていた。

「長いんだな」
「防衛上仕方がないんだよ」
「なるほど」

 それからもしばらく歩き進め今度は普通の扉が現れた。

「ここだ」

 扉をノックする。するとのぞき扉が開かれ星都たちであるのを確認してから扉が開かれる。

「へえ」

 中に入って驚いた。

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