セブンスソード

奏せいや

143

「聖治君」

 隣にいる香織の声がいつも以上に固い。俺だってそうだ。目に力が入る。一切気が抜けない。

「残念だがセブンスソードは失敗のようだ。器を用意はしたもののやはり中身が問題だったようだ」
「仕方がねえさ。そこまで時間をかけていられなかった。それにあの人が戻ってくればなんの問題もないんだ」
「ロハネス」
「へいへい」

 ロハネスの軽口を半蔵が諫めるが本人に反省の色はない。

 あの人が戻ってくれば問題ない?

 どういうことだ。半蔵がわざわざ止めたってことは無意味なはずがない、重要なことのはずだ。
 セブンスソードはスパーダを殺し合わせ団長を創造する儀式、そう香織は言っていた。

 でも、もしかしたらそれだけじゃない? 何かを隠しているのか?

 そういえば前の世界で半蔵も似たようなことを言っていなかったか?

「剣聖の器」

 そこで二人の目つきが変わった。

「どういうことだ、セブンスソードは七人のスパーダを殺し合わせ最後の一人を魔卿騎士団の団長にする。そういう儀式じゃないのか?」

 俺が言うと香織も続けて聞く。

「そもそも分からないのは、なぜ私たちなのかってこと」

 相手は管理人の二人だ。だが香織は臆することなく聞いていく。

「魔卿騎士団の団長。こんな強引なやり方で作り出そうとするからにはそれだけ重大なことのはず。なのになんの関係もない私たちを選ぶなんて明らかにおかしいわ。私たちの誰が生き残ろうとも団長に相応しくないのはあなたたちが一番分かっているはず。なのになぜ? なぜ私たちをセブンスソードに選んだの?」
「…………」

 香織が追及する。俺たちを追い込む最凶最悪の儀式。そんなものに参加させたこいつらは絶対に許さないし理由だって分からない。

 ロハネスも半蔵も黙ったままだ。

「答えろよ」

 こんな身勝手が許されていいわけがない。ロハネスはあっけらかんと、半蔵は険しい顔を張り付けているが俺は二人を睨み続ける。 

「ふん。いいじゃねえか半蔵。どの道これで終わりなんだ、謎を残したまま死ぬなんてさすがにあんまりだろ」

 と、ロハネスが話し出した。相変わらず気負わない態度で飄々とした口調だ。

「だが」

 しかし、その目が妖しく細められると俺と香織を見つめてくる。

「なるほど、さすが未来組か。他と違うってわけだ」
「未来組?」
「そうさ、お前ら三人は未来から送り込まれてきた。今回の補充さ。本来の三本はトラブっちまって数が合わなかったからな」

 未来から来た。それはかつて香織も言っていたことだ。当たっている。

 やはり俺と香織は未来から来たのか。

「お前等も知っての通り、現団長グレゴリウス・レウス・ギルバートはこの世を去った。肉体は滅び魔卿騎士団のかつての栄光も地に落ちたってわけだ。だが、あの人は完全に消滅したわけじゃない」
「なに?」

 咄嗟に声が出る。

 ロハネスは、衝撃的なことを言ってきた。

「あの人は、まだ生きている」
「馬鹿な! 団長は死んだ、だからセブンスソードを始めたんじゃないのか?」
「落ち着けよ。話は最後まで聞くもんだ」

 焦るがロハネスは落ち着いておりそれで俺も平静さを取り戻していく。

「団長は死んだよ。だがあくまでも肉体がなくなっただけだ。あの人は魂となってなおこの地上に踏みとどまっている。だが魂だけでは駄目なんだ。存在を保てない。この地上で活動するには肉体と心、そして魂が必要なんだ。三位一体となってはじめて完全な存在となる」

 肉体と心と魂。言われれば確かに、どれが欠けていても活動することは出来ない。

「だから、あの人が復活するためには強い肉体と強い心がいる。それがセブンスソードとセブンスハートなのさ」
「セブンスハート?」

 初めて聞く言葉だ。

「お前たちの持つスパーダ。それは特異な力を秘めているが一本では大した力じゃない。だが、それを合わせることでその力は強大なものとなる。心も同じさ。一つに合わせることで強くなる。お前たちにはその強い心が備わっていた。どのような困難だろうが諦めず貫き通す固い決意と信念。大切な者を思う気持ち。それは誰しもが持っているものじゃない。そうして七つを掛け合わせ作り上げた肉体と心。そこに団長の魂が合わさり、はじめてあの人は復活を果たす。それが」

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