セブンスソード
111
「ふぅ……」
重い息が出る。ずっしりとした緊張を感じる。胸が重くてなんかの病気みたいだ。洗面台に両手を付き顔を伏せる。
今日は、特別な日になる。その重みに潰されそうになるのを必死に耐える。
約束の時間になるまで、俺は洗面台の前に立ち続けていた。
ピピピ。セットしていたスマホから電子音が鳴り響く。時間だ。
俺は、顔を上げた。
階段を使ってマンションのロビーに降りる。ここで此方たちと集合し駅を使って水戸水族館まで行く手はずだ。
まだ見慣れたとはいえない我が家のロビーにつくと、そこにはすでに此方の姿があった。しかし日向ちゃんの姿はない。
「あれ、日向ちゃんは?」
「あ、聖治」
俺が声をかけたことで此方が振り返る。それで俺を見ると少しだけ驚いたように目つきが変わった。
「日向は、その、風邪を引いちゃったみたいで」
「風邪?」
昨日あんなに元気だったのに?
一瞬疑問に思ったがああと納得する。そういうことか。こんな時期にペンギンを見に行きたいなんておかしいと思ったがそっちの理由なら言い出しそうだな。
「それより」
と、此方がなんだか嬉しそうに話しかけてきた。
「今日の聖治、いつもとなんだか雰囲気違うね」
「え、あ、そうかな?」
「うん。かっこいいよ」
笑顔でそう言われ素直にうれしい。照れてしまう。
「此方も今日は雰囲気違うな」
「そうかな?」
だがそれはお互い様だ。
今日の此方はいつもの黒を基調とした服ではなく半袖の白の服にピンクのミニスカート姿だ。爽やかな雰囲気でありながらスカートは可愛らしい。普段の凛然とした彼女もかっこよくていいと思うが今日は特に女の子らしい。彼女の知らない一面を見た感じだ。
「うん。なんだか爽やかっていうか。可愛いよ」
「う、うん。ありがとね」
此方は恥ずかしいのか目線を下げたが顔は嬉しそうだ。
「それじゃあ、行くか」
「うん」
此方が頷き、俺たちは一緒にマンションを出た。
それから電車を使って港近くにある水戸水族館に着く。山と海に挟まれた水戸市にはこの町を代表する水族館がある。家族連れから友達、俺たちみたいな男女のペアもいる。
チケット売場の受付は長蛇の列だ。三つの窓口があるがそれでもすごい数が並んでいる。
「たくさんいるわね」
「いい天気だし外出する人が多いんだろ。ここにいるみんなペンギン目当てなのか?」
「こんな数にふれ合わされるペンギンも気の毒ね」
「俺ならストレスでハゲるぜ」
「ふふ」
「はは」
俺たちは冗談を交え列に並ぶ。ようやく順番がきてチケットを購入した。それを入り口の係りに渡し入館する。中は広く薄暗い。だが奥に水色の光が広がっており自然と足が向かう。他の人たちもそこに集まっていた。
「おー」
声が漏れる。それは巨大な水槽だった。厚いガラスの向こうにはたくさんの魚たちが泳いでいる。群を成す小魚や一匹ゆっくり泳ぐ大きな魚、ひらひらと泳ぐエイもいる。珊瑚なんかも置いてあり本当に海の一部を切り取ったようだ。
「すごいな」
「うん。きれい」
大小様々な魚たちが泳ぐ様は見ているだけで圧巻だ。自然というか、生命というのはそれだけで偉大なんだと感じる。
「サメもいるぞ。食べたりしないのかな」
見れば一緒にサメも泳いでいる。暴れることはなくおとなしく他の魚と一緒に泳いでいる。とはいえサメからすれば周りぜんぶエサだろうに。
「こういうのはちゃんと食事管理がされてるみたいだから食べたりしないんだって」
「そういうもんか。なんていうか、目の前を寿司やステーキが泳いでいるってどんな心境なんだろうな」
「うーん……難しいわね」
「サメのみぞ知る、か」
当の本人は悠然と水槽の中を泳いでいた。
「他のも見に行こうか」
「うん」
重い息が出る。ずっしりとした緊張を感じる。胸が重くてなんかの病気みたいだ。洗面台に両手を付き顔を伏せる。
今日は、特別な日になる。その重みに潰されそうになるのを必死に耐える。
約束の時間になるまで、俺は洗面台の前に立ち続けていた。
ピピピ。セットしていたスマホから電子音が鳴り響く。時間だ。
俺は、顔を上げた。
階段を使ってマンションのロビーに降りる。ここで此方たちと集合し駅を使って水戸水族館まで行く手はずだ。
まだ見慣れたとはいえない我が家のロビーにつくと、そこにはすでに此方の姿があった。しかし日向ちゃんの姿はない。
「あれ、日向ちゃんは?」
「あ、聖治」
俺が声をかけたことで此方が振り返る。それで俺を見ると少しだけ驚いたように目つきが変わった。
「日向は、その、風邪を引いちゃったみたいで」
「風邪?」
昨日あんなに元気だったのに?
一瞬疑問に思ったがああと納得する。そういうことか。こんな時期にペンギンを見に行きたいなんておかしいと思ったがそっちの理由なら言い出しそうだな。
「それより」
と、此方がなんだか嬉しそうに話しかけてきた。
「今日の聖治、いつもとなんだか雰囲気違うね」
「え、あ、そうかな?」
「うん。かっこいいよ」
笑顔でそう言われ素直にうれしい。照れてしまう。
「此方も今日は雰囲気違うな」
「そうかな?」
だがそれはお互い様だ。
今日の此方はいつもの黒を基調とした服ではなく半袖の白の服にピンクのミニスカート姿だ。爽やかな雰囲気でありながらスカートは可愛らしい。普段の凛然とした彼女もかっこよくていいと思うが今日は特に女の子らしい。彼女の知らない一面を見た感じだ。
「うん。なんだか爽やかっていうか。可愛いよ」
「う、うん。ありがとね」
此方は恥ずかしいのか目線を下げたが顔は嬉しそうだ。
「それじゃあ、行くか」
「うん」
此方が頷き、俺たちは一緒にマンションを出た。
それから電車を使って港近くにある水戸水族館に着く。山と海に挟まれた水戸市にはこの町を代表する水族館がある。家族連れから友達、俺たちみたいな男女のペアもいる。
チケット売場の受付は長蛇の列だ。三つの窓口があるがそれでもすごい数が並んでいる。
「たくさんいるわね」
「いい天気だし外出する人が多いんだろ。ここにいるみんなペンギン目当てなのか?」
「こんな数にふれ合わされるペンギンも気の毒ね」
「俺ならストレスでハゲるぜ」
「ふふ」
「はは」
俺たちは冗談を交え列に並ぶ。ようやく順番がきてチケットを購入した。それを入り口の係りに渡し入館する。中は広く薄暗い。だが奥に水色の光が広がっており自然と足が向かう。他の人たちもそこに集まっていた。
「おー」
声が漏れる。それは巨大な水槽だった。厚いガラスの向こうにはたくさんの魚たちが泳いでいる。群を成す小魚や一匹ゆっくり泳ぐ大きな魚、ひらひらと泳ぐエイもいる。珊瑚なんかも置いてあり本当に海の一部を切り取ったようだ。
「すごいな」
「うん。きれい」
大小様々な魚たちが泳ぐ様は見ているだけで圧巻だ。自然というか、生命というのはそれだけで偉大なんだと感じる。
「サメもいるぞ。食べたりしないのかな」
見れば一緒にサメも泳いでいる。暴れることはなくおとなしく他の魚と一緒に泳いでいる。とはいえサメからすれば周りぜんぶエサだろうに。
「こういうのはちゃんと食事管理がされてるみたいだから食べたりしないんだって」
「そういうもんか。なんていうか、目の前を寿司やステーキが泳いでいるってどんな心境なんだろうな」
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当の本人は悠然と水槽の中を泳いでいた。
「他のも見に行こうか」
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