セブンスソード

奏せいや

110

「聖治、本当にいいの?」
「うん。……いいさ」
「そう……。ありがとね」

 俺は愛想笑いを浮かべ顔を横に振る。

 明日は三人で水族館に行くことになった。



 それから、夕食は終わり聖治が自分の部屋に戻ってから、此方と日向はテーブルで作戦会議中だった。話は当然明日に控えた水族館デート作戦のことだ。とりあえず話はつけれたことに日向は満足そうに腕を組む。

「第一段階終了! この作戦でもっとも重要かつ困難だと思われた仕込みがすんなり進んでよかったよかった。まあ、これもひとえに私のアシストがあってこそだったと思うけどね。じゃなきゃ恋愛へっぽこお姉ちゃんには一生かかっても無理だったろうし。このことをこれから永遠に感謝してもいいんだからね?」
「あんた殴るわよ?」
「ひーん、ごめんなさい~」

 此方がすごむ。調子に乗っていた日向は涙目で謝る。

「まったく」

 此方はやれやれと紅茶を一口飲んだ。

「まあ、手伝ってくれたのは感謝してる。ありがとね」
「えへへ」

 とはいえこの妹が後押ししてくれたのは確かでそのおかげだというのは此方も分かっている。実際日向がいなければ遊びに行く約束なんて取り付けられなかっただろう。

「それじゃ明日なんだけど、明日は水族館デート。とりあえず予定通りでいいんだけど、それじゃあれだから目標を決めようよ」
「目標?」

 明日は水族館に行くことは事前に話していたが目標というのは初めてだ。行くだけで此方としてはドキドキなのにそれ以上に目標とはハードルが高い。

「そう。それで目標は」

 日向は顔を近づけ指を立てる。

「ズバリ、キス!」
「え?」

 いきなりの単語に息を飲む。

「キ、キス? ちょっと待ってよ」

 両手を突き出し日向を押し戻す。

「そういうのって、雰囲気とか距離感とかいろいろあるし、目標を持ってすることじゃないと思うんだけど」
「だからそういう雰囲気とか距離感を作るのが目標なんだよ。ただ遊びに行くだけでも効果はあるだろうけど、それで満足してちゃダメ。チャンスは活かすくらいの気持ちがないと」
「気持ち、ねえ」
「攻める勇気、恋は駆け引きだよ、お姉ちゃん!」
「うーん。う、うん」

 たしかにそうかもしれない。此方は面くらいながらも頷いた。

「それじゃあ明日はしっかり準備して、初デートをばっちり成功させるぞ!」
「お、おー……」

 日向が腕を天井に挙げる。それにつられるように此方も控え目に拳を挙げた。



 翌日、俺は目覚め一人で朝食を食べていた。なんでも二人は朝早くから予定があるとかで出かけてしまった。俺は一人でも食べられるようにトーストを作ろうとトースターにジャムを塗ったパンを入れたら出てこなくなり壊れたためそのまま食パンを食べていた。このままでもまあまあうまい。

 水族館へ遊びに行くのは午前十一時だ、見れば時計の針は九時を指している。まだまだ時間に余裕はある。このまま時間を過ごして待ってもいいんだが。

「思えば、これはデートになるのか?」

 日向ちゃんも一緒という変則ではあるが此方とは恋人なんだ、デートといえばデートだろう。

「そうか……」

 こういう展開になるとは思ってなかった。水族館に行こうというのも突然だった。

 でも、これはある意味で好都合なのかもしれない。いや、そう思わなくては駄目だ。飲まれるな、集中するんだ。

 昨日は日向ちゃんの強い希望で水族館に行くことになったが、きっと此方も喜んでいた。彼女にとってもこの日は特別なはず。せめて、楽しい一日にしたいと俺も思う。

 俺は立ち上がりクローゼットの前まで来て扉を開ける。そこから服を引っ張り出した。中は前も見たけどいくつも服がかかっている。それなりに数は多い。この世界の俺に感謝だな。

 俺はその中から白の服の上から黒のジャケットを羽織り、ジーパンを履いた。引き出しを見ればネックレスがあったのでそれを付ける。なるべくかっこいいのを選んでみたつもりだ。次に洗面台に行き髪をセットする。最後に鏡でチェックする。うん。それなりにおしゃれに整っている。服装が変わるだけでずいぶん雰囲気も変わるものだ。これなら恥ずかしくないだろう。

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