セブンスソード

奏せいや

99

 でも、星都だって必死だった。今でもこいつは俺の中で友達のままなんだ。

 大事な、仲間の一人なんだ!

「それは!」
「言うな、うっとうしい」
「でも!」
「言うなよ。……後悔しそうになるじゃねえか」
「星都……」

 見れば、星都は泣いていた。泣いていたんだ、瞳から涙が静かに流れ落ちていく。こいつが泣くところなんて初めて見た。

「くそ、くそ……。なんで、こんな……」

 力也も死んで、香織も死んで、自分も死にそうになっている。星都も悔しくて、悲しいんだ。

 こいつも、同じ被害者なんだ。

 その時だった。

 星都の胸を、此方が突き刺した。

「此方!」

 カリギュラの赤い刀身が星都の胸に突き刺さる。日向ちゃんと同じように。それで星都は絶命した。

「なんで、なんで刺した!? そんなことする必要なかっただろ!」

 立ち上がる。星都を見下ろす鋭い顔に言う。

 すると此方が俺の胸を掴んできた。

「なんで平気なの!?」
「此方」

 俺は怒るが、それ以上の怒りに退いていく。

 此方が俺を睨む。胸ぐらを激しく捕まれ、顔が近づく。

「あいつは! 日向を殺したのよ! ……なんで? ねえ、なんでよ? なんで一緒に戦ってくれなかったの? あんたは日向のことが好きじゃなかったの?」
「それは」

 此方の追及に言葉が出ない。まるで金縛りにあったかのように、体が動かない。

「日向の恋人じゃなかったの? あの子はあんたを信じてた。あんたのことが大好きだったのに! ねえ、なのになんで!?」

 次第に、此方の瞳には涙が浮かんで、流れていく。涙を流しながら此方は必死に訴えかけてくる。

「あんたがなにもしないから、あの子が庇って死んだのよ!」
「!?」

 彼女の言葉が、胸を貫く。

「好きだったのに、愛していたのに! 私だってあんたを信じてた。それなのに、あんたは戦うどころか、助けてもくれなかった!」

 そうだ、此方の言うとおりだ。言葉でどれだけかっこつけたって、俺がやったことは傍観、それによって戦いを止めるどころか日向ちゃんが刺された。

 俺のせいなんだ。俺がなにもしなかったから、ここまで最悪なことになってしまった。

「なんで、なんでよぉお! なんで!」

 此方が泣いている。胸を掴んでいた此方は俺の胸に額を当てて、泣き叫んでいた。

「守るって、約束したじゃない!」

 俺の胸を、此方が殴りつけてくる。何度も。何度も。でも、そんなのぜんぜん痛くない。

 それよりも、彼女の言葉の方が百倍も重くて、俺を押し潰しそうだ。

 此方が顔を上げる。真っ赤に充血した目が、悲しい瞳が、俺を映す。

「あんたの守る覚悟って、なんだったの!?」

 その言葉に、なにも言えない。

 俺が思っていた覚悟、抱いていた決意。

 それって、けっきょくなんだったんだ? みんなで生き残るって、諦めないって、そんな思いを抱いたところでなにになった? なにが救えた?

 俺が思っていた覚悟なんて、俺が考えていた決意なんて、なんにも役に立っていないじゃないか。

 もう、胸が苦しくて仕方がなかった。目の前が真っ暗で、なにを信じていいのか分からない。此方の言葉が俺の首を縄のように締め上げていく。もう、なにも考えたくない。休みたかった。

 俺は星都のスパーダを得て三本になっていた。パーシヴァルに光が宿る。

 俺は此方の声を黙って聞きながら、パーシヴァルに念じていた。

「答えてよ……答えて、聖治!」

 此方が聞いてくる。でも、俺は答えられない。

 そのままパーシヴァルの光が広がっていく。此方を覆い、星都を覆い、日向ちゃんと香織を覆い、世界すべてを覆っていった。

 世界が、再び姿を変えて、回り出す。

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