セブンスソード

奏せいや

93

 そこで星都の姿が視界から消えた。

「いない?」
「上よ!」

 木を足場にしたのか、頭上高く飛んでいた星都が剣を振り下ろしてくる。それをパーシヴァルで受ける。

「ぐううう!」

 星都の全身と落下の衝撃が両腕に走る。剣を握ってる指が折れそうだ。

「もらった!」

 だが隙だらけだ。今の星都は足が地面から離れている。これなら移動できないし剣は俺が受け止めている。そこへ此方がカリギュラを振るう。

「!」

 瞬間、再び加速する。頭上から降りて来た星都は足を曲げると俺を蹴りその反動で離脱していった。俺は地面に倒され此方の攻撃も空振りに終わる。

 なんてやつだ。攻撃の速攻性と回避能力がずば抜けている。味方なら頼もしかったけど敵になるとこうも強いなんて。

「聖治、大丈夫!?」
「くそ」

 俺を庇うように此方が立ち背中越しに聞いてくる。俺は立ち上がろうとするが両腕がしびれて痛みがひどい。

「う、うでが」

 人一人が落下してきたのを剣で受けたんだ。指が動かない。

 このままじゃまずい。でも俺のパーシヴァルはまだ能力が分かっていない。

「此方! スパーダを使え!」

 彼女の背中に叫ぶ。分かっているのは彼女のスパーダだけだ。

「でも、これは」
「俺に構うな、やれ!」

 魔皇剣カリギュラの攻撃は無差別だ。いわばマップ攻撃であり敵味方まとめて攻撃してしまう。
 でも、このままじゃ俺たちがやられる!

「分かった」

 俺も覚悟を決めた。またあの苦しさがくると重うと憂鬱だがそんなこと言っていられない。

「カリギュラ!」

 彼女の叫びと同時にカリギュラが赤い光を発する。それによりこの場の空気が一変する。

「う」

「ぐうう!」
「なに、これ」

 覚悟していたがやっぱりキツい。座っているのに息が上がる。筋トレをした直後みたいに疲れて体が動かない。

 これがカリギュラの減衰。これに星都は膝をつき香織も四つん這いになっている。

 その中で唯一立っているのはカリギュラの主、此方だけだ。

 強い。いざ戦闘となればカリギュラはダントツだ、それに特化している。

「聖治は休んでて、あとは私がやる」

 此方がゆっくりと星都に近づいていく。まるで死を漂わせて近寄る死神のように。此方は膝を付く星都の前に立つとスパーダを振り上げる。

「私がやらなくちゃ。私が」

 あとは振り下ろすだけ。それで星都を倒すことができる。星都は剣を持ち上げるどころか逃げることもできない。

「止めろ此方!」

 でも俺は星都たちを倒したいわけじゃない。動きを止められたならそれでいいんだ。

「まだ言ってるの? こいつらは敵なのよ? ここでやらなきゃ、日向だって危険だわ」
「でも話し合えるだろ!」

 こうして戦闘は止まっているんだ、戦いは回避できる。

「ディンドラン!」
「え」

 見れば香織は四つん這いのままディンドランを出現させている。ディンドランも光を発し星都の体が淡いピンク色に包まれる。

「おらあ!」

 それにより体力を回復した星都がスパーダを持ち上げる。カリギュラとエンデュラスがぶつかった。

 星都はなんとかその場から離れる。香織のもとまで戻り構えた。

「そうか」

 ディンドラン。それがあったか。それでカリギュラの減衰を治していたのか。でも治せるのは一人分だけで香織は今も四つん這いになっている。

「うう」

 駄目だ、俺も限界が近い。苦しい。地上にいるの溺死しそうだ。

「聖治!?」

 此方が駆け寄ってくる。カリギュラを解いたのか一気に肺に空気が入ってくる。

「ごほ、ごほ」
「ごめんなさい、大丈夫?」

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