セブンスソード
74
「もう、聖治さんから言い出したんだよ? 危険だからお互い合鍵を持っておこうって。もう、聖治さんったら。しっかりしてよね」
笑顔でそう言い白い髪の女の子は離れていった。小さな顔だ。それに可愛い。女の子らしい服装も相まって可憐だと思う。
「それよりも聖治さん。早く早く」
「え、なにが」
「なにがじゃなくて、ぷおぷお。今日はぜったいに私の方が多く勝つんだから」
「え?」
俺は女の子に手を引かれリビングのテレビ前に連れてこられた。テレビとゲーム機の電源を入れコントローラーを渡される。
「はい、聖治さんの」
それをうやうやしく受け取りテレビ画面に向かう。
画面にはパズルゲームのぷおぷおが表示されていた。昔からある人気シリーズだ。上から落ちてくる可愛らしいグミ状のパズルを操作しパズルを消していくというもの。
「よーし、今度こそやっつけちゃうからね」
なんだか楽しそうだ。状況が未だに分からないが流されるがままプレイしていく。今は目の前の現実に集中しよう。というか考えたくない。
俺は現実逃避に打ち込むようにぷおぷおに集中した。
「ええー! そんな、六コンボ!?」
気づけば難度の高いコンボを決め彼女の画面は邪魔なパズルでいっぱい。そのまま埋もれてしまい俺の勝ち。やり始めてからまさに連戦連勝、破竹の勢いで勝ち続けていた。やれやれ、年下の女の子に本気を出しすぎたかな。
「…………」
いやそうじゃない!
冷静になれ俺。どう考えてもこの状況はおかしい。俺は隣に座っている女の子の素性どころか名前すら知らないんだぞ。呑気にゲームなんてしてる場合じゃないだろ!
「はあ~、また負けた~」
女の子はしょぼんとコントローラーを握ったまま下を向いていた。「とほほ~」と今も言っている。ずいぶん感情豊かな子だな。
「聖治さんのど乾いた? 私持ってくるよ」
「あ、ええっと」
女の子は立ち上がり冷蔵庫へと歩いていく。とはいえここは俺の家のはずで、そういうのは俺が用意すべきなんだよな。
「いいよいいよ、俺がいれるって」
俺も立ち上がり冷蔵庫へと向かった。
「もう、そんな気を遣わなくてもいいですよ」
女の子は顔だけを俺に向け歩いていく。
「あ」
「あ」
だがよそ見をしていたからかつまづいてしまった。体が前に傾く。
「危ない!」
急いで駆け寄り彼女に手を伸ばす。そのまま後ろから彼女の体を抱きしめていた。
「あ、ごめん」
すぐに手を放す。
「ううん」
が、その手を女の子は掴まえた。
「もっと、してて欲しい」
「え」
彼女の方から腕を掴んできたことに驚く。後ろから抱きついているから顔が見えない。
「ありがとね、聖治さん」
「いや、これくらい」
うれしそうな、それでいて噛みしめるような声。
「聖治さんのおかげで私は笑えるんだなって、改めて分かった」
「言い過ぎだろ」
「そんなことないよ」
彼女の小さく笑う声が聞こえる。ただし、彼女の顔が下がったのが後ろから見ていても分かった。
「セブンスソードが、私は怖かった」
「!?」
セブンスソード。ということは、この子もスパーダ?
そんな。この子も敵だっていうのか?
「怖くて、怖くて、ずっと怯えてた。そのせいでお姉ちゃんにもたくさん心配かけて」
お姉ちゃん?
「私は、自分のことが嫌いだった」
彼女のつぶやきはいつの間にか暗いものに変わっていた。最初にあった明るい雰囲気とは違い、俺が抱きしめる彼女はとても弱々しくて繊細で、今まで辛い思いをしてきたんだと分かる。
「でもね」
そこで、彼女は俺の腕を掴む手に力を入れた。
「ここには聖治さんがいた。引っ越してきた私たちをいろいろ手伝ってくれた。聖治さんもスパーダだと知った時は驚いたけど、聖治さんは優しくしてくれた。私たちだけじゃない、ちゃんとした人もいるんだって安心できた」
「…………」
「すごく嬉しかった。聖治さんと出会えて、ほんとうに良かった」
笑顔でそう言い白い髪の女の子は離れていった。小さな顔だ。それに可愛い。女の子らしい服装も相まって可憐だと思う。
「それよりも聖治さん。早く早く」
「え、なにが」
「なにがじゃなくて、ぷおぷお。今日はぜったいに私の方が多く勝つんだから」
「え?」
俺は女の子に手を引かれリビングのテレビ前に連れてこられた。テレビとゲーム機の電源を入れコントローラーを渡される。
「はい、聖治さんの」
それをうやうやしく受け取りテレビ画面に向かう。
画面にはパズルゲームのぷおぷおが表示されていた。昔からある人気シリーズだ。上から落ちてくる可愛らしいグミ状のパズルを操作しパズルを消していくというもの。
「よーし、今度こそやっつけちゃうからね」
なんだか楽しそうだ。状況が未だに分からないが流されるがままプレイしていく。今は目の前の現実に集中しよう。というか考えたくない。
俺は現実逃避に打ち込むようにぷおぷおに集中した。
「ええー! そんな、六コンボ!?」
気づけば難度の高いコンボを決め彼女の画面は邪魔なパズルでいっぱい。そのまま埋もれてしまい俺の勝ち。やり始めてからまさに連戦連勝、破竹の勢いで勝ち続けていた。やれやれ、年下の女の子に本気を出しすぎたかな。
「…………」
いやそうじゃない!
冷静になれ俺。どう考えてもこの状況はおかしい。俺は隣に座っている女の子の素性どころか名前すら知らないんだぞ。呑気にゲームなんてしてる場合じゃないだろ!
「はあ~、また負けた~」
女の子はしょぼんとコントローラーを握ったまま下を向いていた。「とほほ~」と今も言っている。ずいぶん感情豊かな子だな。
「聖治さんのど乾いた? 私持ってくるよ」
「あ、ええっと」
女の子は立ち上がり冷蔵庫へと歩いていく。とはいえここは俺の家のはずで、そういうのは俺が用意すべきなんだよな。
「いいよいいよ、俺がいれるって」
俺も立ち上がり冷蔵庫へと向かった。
「もう、そんな気を遣わなくてもいいですよ」
女の子は顔だけを俺に向け歩いていく。
「あ」
「あ」
だがよそ見をしていたからかつまづいてしまった。体が前に傾く。
「危ない!」
急いで駆け寄り彼女に手を伸ばす。そのまま後ろから彼女の体を抱きしめていた。
「あ、ごめん」
すぐに手を放す。
「ううん」
が、その手を女の子は掴まえた。
「もっと、してて欲しい」
「え」
彼女の方から腕を掴んできたことに驚く。後ろから抱きついているから顔が見えない。
「ありがとね、聖治さん」
「いや、これくらい」
うれしそうな、それでいて噛みしめるような声。
「聖治さんのおかげで私は笑えるんだなって、改めて分かった」
「言い過ぎだろ」
「そんなことないよ」
彼女の小さく笑う声が聞こえる。ただし、彼女の顔が下がったのが後ろから見ていても分かった。
「セブンスソードが、私は怖かった」
「!?」
セブンスソード。ということは、この子もスパーダ?
そんな。この子も敵だっていうのか?
「怖くて、怖くて、ずっと怯えてた。そのせいでお姉ちゃんにもたくさん心配かけて」
お姉ちゃん?
「私は、自分のことが嫌いだった」
彼女のつぶやきはいつの間にか暗いものに変わっていた。最初にあった明るい雰囲気とは違い、俺が抱きしめる彼女はとても弱々しくて繊細で、今まで辛い思いをしてきたんだと分かる。
「でもね」
そこで、彼女は俺の腕を掴む手に力を入れた。
「ここには聖治さんがいた。引っ越してきた私たちをいろいろ手伝ってくれた。聖治さんもスパーダだと知った時は驚いたけど、聖治さんは優しくしてくれた。私たちだけじゃない、ちゃんとした人もいるんだって安心できた」
「…………」
「すごく嬉しかった。聖治さんと出会えて、ほんとうに良かった」
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