セブンスソード
62
「どうしたんですか?」
俺は身を乗り出しタクシー運転手を見る。
「な!?」
そこには、誰もいなかった。
「そんな、どこにいった!?」
さっきまでタクシーを運転していたドライバーがいない。
「力也!」
「ううん! 僕も分からないんだなぁ!」
助手席にいた力也も気づかなかったなんて。ドライバーはどこに行ったんだ。そもそも走っている車から誰にもバレずに出ていくなんてことできるのか?
「聖治!」
「どうした?」
星都から呼ばれ俺は振り向いた。
「どうやら止まってるのは俺たちだけじゃねえ」
言われ窓の外を見る。
「止まってる……?」
まだ日の明るいこの時間、俺たちがいる高速道路ですべての車が止まっていた。渋滞なんてしていない。前は空いているんだから走ろうと思えばできるはずなのに。
それで外にいる車の運転席を見れば、そこには誰もいなかった。
「そんな。誰もいないの……?」
香織が不安そうな声を漏らす。
「どうする?」
星都に聞かれ、考える。
「……走らない車に乗っていても仕方がない」
このままここにいてもどうしようもない。
「でも、このまま出たら」
「たぶん……」
これが偶然ではないのは明らかだ。それに無人になるのも前の世界で起こった駅前と同じ。
なら、この後の展開も同じはず。
「みんな、警戒してくれ」
ドアを開け外へと出る。高速道路なのに車が停止しているというのは不思議な感じだ。また高速道路を歩くというのも新鮮だった。
みんなも恐る恐るタクシーから降り前へと歩いていく。辺りを見渡し警戒していた。
そこで、俺たちの足が止まった。
ちょうど車と車の間が開けた場所、その向こう側に黒い人影が立っている。
フードの付いた黒の外套。全身を黒で包んだその姿は魔卿騎士団の管理人だ。
「くそ」
悟られていたか。
魔来名ではなかったが危険な相手なのは間違いない。まるで幽霊みたいにぼうと立っている。その姿からは戦意どころか存在感すら感じない。気配を完全に消している。
もしかして、あの槍男とは別の管理人か? 身長も一七〇センチほどと槍男と比べると小柄だ。
俺たちは管理人と対峙した。
「君たちに問いたい」
声は男のものだが槍を使った管理人とは違う。やはり別人か。
「セブンスソードとは互いのスパーダで殺し合いその力を得る儀式。だが君たちは停戦しこの町から出ようとしている。明確な逃走行為でありセブンスソードの放棄である。そうした場合、管理人の手によって処罰を受ける。皆森星都。君には直接伝えていたはずだったが」
星都が? ということは星都が会った管理人がこの男というわけか。
「イエスと言った覚えはないぜ」
「是非の問題ではない。これは決まっていることだ」
そう言うと男はフードに手をかけ、素顔を明かした。
二〇代ほどの青年だった。髪はなく代わりに額から伸びた入れ墨が彫ってある。静かな佇まいだがその目と表情は精悍でありどこか僧侶のような雰囲気がある。
「私の名は魔卿騎士団管理人、半蔵(はんぞう)。君たちに警告する。これ以上の逃走を図るのであれば強制的に儀式を執行する」
静かな瞳が俺たちを鋭く貫いた。
「俺たちを殺すってことか」
「如何にも」
半蔵と名乗った男からは殺気どころか戦意すら感じない。でも分かる。この男はこれで戦闘態勢なんだ。殺意なく、油断なく、この男は人を殺せる。まるで機械のように。
「みんな、やるしかない」
俺はパーシヴァルを出した。黄色の神剣を手に取り半蔵に向ける。
戦うしかない。仲間同士で殺し合う。そんな悲劇を選ぶくらいならここで管理人と戦う方が断然いい。俺の能力は依然不明瞭だけど剣なんだ、当たれば斬れる。
みんなもスパーダを手に取る。俺たちは横に並び戦う意思を見せた。
今度は逃げない。見てるだけなんてしない。みんなと一緒に、俺も戦うんだ!
「それが君たちの答えか」
俺は身を乗り出しタクシー運転手を見る。
「な!?」
そこには、誰もいなかった。
「そんな、どこにいった!?」
さっきまでタクシーを運転していたドライバーがいない。
「力也!」
「ううん! 僕も分からないんだなぁ!」
助手席にいた力也も気づかなかったなんて。ドライバーはどこに行ったんだ。そもそも走っている車から誰にもバレずに出ていくなんてことできるのか?
「聖治!」
「どうした?」
星都から呼ばれ俺は振り向いた。
「どうやら止まってるのは俺たちだけじゃねえ」
言われ窓の外を見る。
「止まってる……?」
まだ日の明るいこの時間、俺たちがいる高速道路ですべての車が止まっていた。渋滞なんてしていない。前は空いているんだから走ろうと思えばできるはずなのに。
それで外にいる車の運転席を見れば、そこには誰もいなかった。
「そんな。誰もいないの……?」
香織が不安そうな声を漏らす。
「どうする?」
星都に聞かれ、考える。
「……走らない車に乗っていても仕方がない」
このままここにいてもどうしようもない。
「でも、このまま出たら」
「たぶん……」
これが偶然ではないのは明らかだ。それに無人になるのも前の世界で起こった駅前と同じ。
なら、この後の展開も同じはず。
「みんな、警戒してくれ」
ドアを開け外へと出る。高速道路なのに車が停止しているというのは不思議な感じだ。また高速道路を歩くというのも新鮮だった。
みんなも恐る恐るタクシーから降り前へと歩いていく。辺りを見渡し警戒していた。
そこで、俺たちの足が止まった。
ちょうど車と車の間が開けた場所、その向こう側に黒い人影が立っている。
フードの付いた黒の外套。全身を黒で包んだその姿は魔卿騎士団の管理人だ。
「くそ」
悟られていたか。
魔来名ではなかったが危険な相手なのは間違いない。まるで幽霊みたいにぼうと立っている。その姿からは戦意どころか存在感すら感じない。気配を完全に消している。
もしかして、あの槍男とは別の管理人か? 身長も一七〇センチほどと槍男と比べると小柄だ。
俺たちは管理人と対峙した。
「君たちに問いたい」
声は男のものだが槍を使った管理人とは違う。やはり別人か。
「セブンスソードとは互いのスパーダで殺し合いその力を得る儀式。だが君たちは停戦しこの町から出ようとしている。明確な逃走行為でありセブンスソードの放棄である。そうした場合、管理人の手によって処罰を受ける。皆森星都。君には直接伝えていたはずだったが」
星都が? ということは星都が会った管理人がこの男というわけか。
「イエスと言った覚えはないぜ」
「是非の問題ではない。これは決まっていることだ」
そう言うと男はフードに手をかけ、素顔を明かした。
二〇代ほどの青年だった。髪はなく代わりに額から伸びた入れ墨が彫ってある。静かな佇まいだがその目と表情は精悍でありどこか僧侶のような雰囲気がある。
「私の名は魔卿騎士団管理人、半蔵(はんぞう)。君たちに警告する。これ以上の逃走を図るのであれば強制的に儀式を執行する」
静かな瞳が俺たちを鋭く貫いた。
「俺たちを殺すってことか」
「如何にも」
半蔵と名乗った男からは殺気どころか戦意すら感じない。でも分かる。この男はこれで戦闘態勢なんだ。殺意なく、油断なく、この男は人を殺せる。まるで機械のように。
「みんな、やるしかない」
俺はパーシヴァルを出した。黄色の神剣を手に取り半蔵に向ける。
戦うしかない。仲間同士で殺し合う。そんな悲劇を選ぶくらいならここで管理人と戦う方が断然いい。俺の能力は依然不明瞭だけど剣なんだ、当たれば斬れる。
みんなもスパーダを手に取る。俺たちは横に並び戦う意思を見せた。
今度は逃げない。見てるだけなんてしない。みんなと一緒に、俺も戦うんだ!
「それが君たちの答えか」
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