セブンスソード

奏せいや

59

 俺はゆっくりと目を覚ますと今まで見ていた夢を振り返っていた。

 それは、俺が彼女の魂に触れたからなのか。思い出した記憶の一部だった。

 恋人だった時の彼女。そして灰色の世界。人類は悪魔の侵攻によって壊滅し残ったのは僅かな逃亡者と悪魔についた人狩りだけ。夢も希望もない、最悪の世界だ。そこで俺たちは生きていた。辛かったけど、隣には世界で一番優しい人がいた。それだけで幸せだった。

 その幸せを守るために、俺は五本のスパーダを手に入れたんだ。

 だけど思い出せたのはそれだけだ。どうやって未来から来たのか。ロストスパーダを見つけてどうするつもりだったのか。そこまでは分からず彼女が忘れている以上調べようがない。文字通りロストしてしまった。後悔先に立たずだがもっと詳しく聞いておけばよかった。

 なにより、世界はいずれ悪魔に襲われてしまう。このままでは俺や仲間たちだけじゃない、人類まで滅んでしまう。そうしないためにも俺には力と仲間が必要だ。

 セブンスソード。異能の剣を持った七人の殺し合い。ひどい話だ。だがスパーダなら力がある。そこで仲間を集められれば悪魔たちと戦えるかもしれない。俺がすべきことは殺し合うことじゃなく仲間を集めることだ。

 そのためにも、まずは香織、星都、力也。今度こそみんなでセブンスソードから生き延びる。それが俺の使命だ。

 未来で起きる悲劇。これについては今は伏せておこう。みんな目の前の出来事で頭がいっぱいのはず。そこへ悪魔から襲われるなんて思考放棄しかねない。

 登校後、俺は学校に着くなり屋上へと呼び出さた。この流れは覚えがある、前の世界で俺たちが香織にしたことだ。

 屋上には俺と星都、力也に香織。やはりこの四人だった。

「転校生、どういうことだよ?」
「その様子だと会ったみたいだな」

 星都と力也の顔は切羽詰まっている。なにもない日常生活でする顔じゃない。

「昨日話した通りだよ。やつらがなにを話したのか知らないけど、たぶんその通りだ」
「全部か?」
「きっとな」
「殺し合えって言ってたぞ!」

 星都が大声で叫ぶ。その気持ちは理解できる。俺だって同じ気持ちだ。二度目だからみんなより冷静なだけで、本当だったら叫びたいくらいだ。

「星都くぅん」
「……分かってる」

 星都は暴れたいくらいの気持ちはなんとか押さえ込んでいる。力也も気丈だ、本当だったら力也も不安に押しつぶされそうなはずなのに、今も表面上は落ち着いている。

 星都は俯きながらも自分を必死に落ち着けていた。 

「悪い、転校生。俺もなにがなんだか。昨日から落ち着かなくてさ」

 俺は星都に近づき、こいつの肩に手を置いてやった。

「大丈夫、俺だって同じだよ」

 星都が俺を見る。俺は頷くと手を放した。

「それと、呼び方は聖治でいい。俺も呼び捨てで言うぞ、その方が慣れてるんだ」
「分かったよ、聖治」
「聖治君」

 香織が俺の名を呼んだ。その顔つきはきりっとしている。覚悟を決めた顔だ。

「昨日、部屋で考えたんです。かなり迷ったんですけど、でも皆森君や織田君まで同じ目に遭って。だから私決めたんです。聖治君の言うこと、信じようって」
「そうか」

 どうやら決めてくれたようだな。ぜんぶ話したわけじゃないけれど、彼女が信じてくれたことは嬉しい。

「沙城が襲われたのを救ったんだよな。なあ、その剣だけど見せてもらうわけにはいかないのか?」
「それもそうだったな」

 星都に言われ思いつくが、話より見せた方が早いか。百聞は一見にしかずていうし。

「分かった。これから俺のスパーダを見せる」

 俺は神剣パーシヴァルを取り出し二人に見せてやった。突然剣が現れたことに驚いている。彼女は二度目だがそれでも多少は驚いたような、興味深いといった顔をしていた。
 いつまでも出しておくのもあれなので俺はパーシヴァルを消す。

「どうだ? これが話していたスパーダだ。これは俺だけじゃなくてセブンスソードの参加者、スパーダなら誰でもできることだ」
「マジかよ」
「すごいんだぁ」
「どうだ、信じる気になったか?」

 星都と力也は唖然としながらも納得してくれた。

「でもよ、それならなんで昨日それを見せてくれなかったんだ?」
「俺もいろいろ混乱してたんだよ」

 あいにくそこまで機転が利く方じゃない。あんな状況で冷静でいられるか。
 とりあえず三人とも話を信じてくれる気になったらしい。

「なあ聖治、それで俺たちこれからどうすればいいんだ?」
「問題はそこなんだよな」

 そう、ここまではいわば下準備。大事なのはここからだ。

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