セブンスソード
52
ずっと友達だった。同じ寮に住んでいて、登下校を一緒にしたし、何度だって遊びに行った。ちゃんと覚えてる。
星都は笑いながら、やれやれといった風だった。
「そりゃー、そうだろ。それとも続けた方がよかったか?」
「うん。僕たち初めて会うんだなぁ」
言葉を失い、俺は二人から一歩下がる。
星都は冗談を言っているんじゃない、力也もだ。
同時に状況がだんだんと飲み込めてきた。
ここは、俺が知ってる世界じゃない。俺はこの教室にはじめてきて、みんなと出会うのもはじめてなんだ。スマホの履歴に二人の番号がなかったのも、壊れていたんじゃない。出会っていなかったんだ。
「えーと剣島君、それじゃあそろそろホームルーム始めるから席に座ってくれるかな?」
青山先生に言われ俺はふらふらと空いている席に着いた。顎に手を添え状況を整理していく。
俺は魔来名との戦いの中で命を落とした。けれど目が覚めてそこでは俺が転校生となっておりみんなとは初対面だった。
俺が知っている世界との違いは今のところ二つ。
日付が三日前なこと。そして俺が転校生なことだ。
理由は分からないが、どうも死んだことが原因らしい。
確認しないと。俺は知らないことが多すぎる。
*
ホームルームが終わると転校生、とりわけ奇抜な登場をした俺にみんなが集まってきてくれたが、それを申し訳なく断りつつ星都と力也を屋上に呼び出した。どうしても三人で話がしたいと必死に頼み込み、二人はよく分かっていないようだったがついてきてくれた。
すぐにでも話がしたくて俺が率先して屋上へと向かっていく。見慣れた扉を開け三人で屋上へと出た。もうすぐ一限目が始まる時間なので誰もいない。
「なあ転校生、よくこの道分かったな」
「何度も来てるんだ」
「?」
星都と力也はお互いを見合い星都は両手を上げている。
「それで、俺たちに話ってなんだよ」
「えっと、その」
そう言われるとなんと切り出せばいいものか。難しいな。正直に言ったところで信じてもらえるとは思えないし。
でも、言うしかないんだ。
俺は意を決めた。
「その、信じてもらえないと思うけど」
「おう、信じられないな」
「まだなにも言ってないだろ!」
聞けよ!
だっていうのに星都は悪気もなく平然としている。
「だってあれだろ、俺たちは前にも出会ってるんだ、とかだろ?」
「ん。そうだけど」
「やっぱりだ」
ばれていたのか。というか、それしかないからな。
「そんなこと言われても俺も力也も覚えにないんだ。覚えてもないこと信じられるかよ」
そうだ、星都の言うとおりだ。
自分が知らないことをそう簡単に信じてもらえるわけがない。
「星都君、ちょっと待っててぇ。ねえ剣島君」
「聖治でいいよ。そう呼ばれてたんだ……」
他人行儀っていうのが妙に胸に刺さるな。
もしかしたら、香織もこんな気持ちだったのかな。そう思うと胸が切ない。
「ええっと、じゃあ聖治君。僕達ってどういう関係だったのかな?」
「それは」
俺たちの関係。それを言うのは別にいいんだが、それだとセブンスソードのことも話さなくてはならない。この様子だと絶対に信じてはもらえない。
「なんだ、言いにくいことなのか?」
星都が不審がっている。仕方がない、言うしかない。
「信じられないと思うけど、特に星都。笑うなよ」
俺は前置きを置いて二人に以前のことを伝えた。そこで俺たちが友達だったこと、転校生は俺ではなく沙城香織という女の子だったこと、そしてセブンスソードとその顛末(てんまつ)を。
俺たちは全員殺された。魔堂魔来名(まどうまきな)。あの男に手も足も出ず、殺されてしまったんだ。
その後俺は目覚めると見覚えのある別世界にいたこと。
話はこれで全部だ。二人は終始黙って聞いていた。
星都は笑いながら、やれやれといった風だった。
「そりゃー、そうだろ。それとも続けた方がよかったか?」
「うん。僕たち初めて会うんだなぁ」
言葉を失い、俺は二人から一歩下がる。
星都は冗談を言っているんじゃない、力也もだ。
同時に状況がだんだんと飲み込めてきた。
ここは、俺が知ってる世界じゃない。俺はこの教室にはじめてきて、みんなと出会うのもはじめてなんだ。スマホの履歴に二人の番号がなかったのも、壊れていたんじゃない。出会っていなかったんだ。
「えーと剣島君、それじゃあそろそろホームルーム始めるから席に座ってくれるかな?」
青山先生に言われ俺はふらふらと空いている席に着いた。顎に手を添え状況を整理していく。
俺は魔来名との戦いの中で命を落とした。けれど目が覚めてそこでは俺が転校生となっておりみんなとは初対面だった。
俺が知っている世界との違いは今のところ二つ。
日付が三日前なこと。そして俺が転校生なことだ。
理由は分からないが、どうも死んだことが原因らしい。
確認しないと。俺は知らないことが多すぎる。
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ホームルームが終わると転校生、とりわけ奇抜な登場をした俺にみんなが集まってきてくれたが、それを申し訳なく断りつつ星都と力也を屋上に呼び出した。どうしても三人で話がしたいと必死に頼み込み、二人はよく分かっていないようだったがついてきてくれた。
すぐにでも話がしたくて俺が率先して屋上へと向かっていく。見慣れた扉を開け三人で屋上へと出た。もうすぐ一限目が始まる時間なので誰もいない。
「なあ転校生、よくこの道分かったな」
「何度も来てるんだ」
「?」
星都と力也はお互いを見合い星都は両手を上げている。
「それで、俺たちに話ってなんだよ」
「えっと、その」
そう言われるとなんと切り出せばいいものか。難しいな。正直に言ったところで信じてもらえるとは思えないし。
でも、言うしかないんだ。
俺は意を決めた。
「その、信じてもらえないと思うけど」
「おう、信じられないな」
「まだなにも言ってないだろ!」
聞けよ!
だっていうのに星都は悪気もなく平然としている。
「だってあれだろ、俺たちは前にも出会ってるんだ、とかだろ?」
「ん。そうだけど」
「やっぱりだ」
ばれていたのか。というか、それしかないからな。
「そんなこと言われても俺も力也も覚えにないんだ。覚えてもないこと信じられるかよ」
そうだ、星都の言うとおりだ。
自分が知らないことをそう簡単に信じてもらえるわけがない。
「星都君、ちょっと待っててぇ。ねえ剣島君」
「聖治でいいよ。そう呼ばれてたんだ……」
他人行儀っていうのが妙に胸に刺さるな。
もしかしたら、香織もこんな気持ちだったのかな。そう思うと胸が切ない。
「ええっと、じゃあ聖治君。僕達ってどういう関係だったのかな?」
「それは」
俺たちの関係。それを言うのは別にいいんだが、それだとセブンスソードのことも話さなくてはならない。この様子だと絶対に信じてはもらえない。
「なんだ、言いにくいことなのか?」
星都が不審がっている。仕方がない、言うしかない。
「信じられないと思うけど、特に星都。笑うなよ」
俺は前置きを置いて二人に以前のことを伝えた。そこで俺たちが友達だったこと、転校生は俺ではなく沙城香織という女の子だったこと、そしてセブンスソードとその顛末(てんまつ)を。
俺たちは全員殺された。魔堂魔来名(まどうまきな)。あの男に手も足も出ず、殺されてしまったんだ。
その後俺は目覚めると見覚えのある別世界にいたこと。
話はこれで全部だ。二人は終始黙って聞いていた。
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