セブンスソード

奏せいや

46

 二人に走る。力也はお腹を押さえているが星都はピクリとも動いていない。

「力也……? 力也、しっかりしろ! なんで回復しないんだ!?」

 叫ぶけれど一向に傷は治らない。そうしている間にも力也からは血が流れ落ちていっている。

「聖治君」

 力也の弱々しい目が俺を見た。

「ごめん、ねえ……」
「力也?」

 そう言って、力也から力が抜けていった。

「あ。ああ」

 一瞬だった。瞬く間にすべてが終わっていた。

「うわああああ!」

 膝を付き地面を殴る。

 ぬるりとした感触に自分の手を見てみる。手は血で真っ赤に染まっていた。

 しまった。しまったしまったしまった! 馬鹿か俺は!

 なぜ加勢しなかった? 二人の言葉に甘えてなんでなにもしなかった? 俺も戦っていれば守れたかもしれないのに! 

 そんな、俺のせいだ!

「お前えええ!」

 立ち上がった。こいつは絶対に許さない。よくも、俺の友達を!

「待って!」

 沙城さんも悔しそうに力也と星都を見つめている。だが、彼女も立ち上がった。

「沙城さん」
「聖治君はここにいて」
「いや、俺も戦う!」

 俺は見てるだけだった。そのせいでこんなことになってしまった。なにより、三人がかりでも勝てなかったのに一人で戦うなんて無謀だ!

「ううん」

 だが、彼女は言った。

「聖治君はいない方がいい」

 きっぱりと。そう言われてしまった。

「でも!」
「お願い」

 沙城さんは俺を見ていなかった。表情が見えない横顔が、俺を拒絶していた。

「今、聖治君が加勢しても死ぬだけだから」
「…………」

 その言葉に、言い返すことができない。

 悔しさに、涙が溢れた。拳を痛いほど握りしめる。友達が殺されたのに、俺は戦うことも出来ないのか?

 それが、悔しくて仕方がない。

 力が、力が欲しい。もっと、今よりももっと大きな力が。それさえあれば魔来名を倒せた。二人を死なせることもなかったのに。

 力が、欲しい!

「私が戦う。聖治君は下がってて」
「駄目だ。なら逃げるべきだ」

 俺は弱い。悔しいけど沙城さんの言う通りだ。俺が戦ったところで殺されるのが落ちだろう。でもそれは沙城さんだって同じはずだ。

「このままじゃ沙城さんまで。前はディンドランで治せたけど、あいつの怪我は治せなかった。きっとそれがあいつの能力なんだ、無茶だ!」

 沙城さんの能力は封じられたも同然だ。相性が悪すぎる!
 それでも、沙城さんは退かなかった。

「私は、この日のためにここに来た。そして、聖治君も守ってみせるッ」

 すると沙城さんはディンドランを消した。どうして、治せないからって消すことはないのに。

 星都と力也の体が発光している。二人の体から光の玉が浮かび上り沙城さんの体に吸い寄せられていく。それは彼女の体の中に入っていった。

 それを受けて沙城さんが両手を前に出す。

「来て」

 呼びかける。それにより現れた光は二つ。

「光帝剣エンデゥラス。鉄塊王グラン!」

 彼女の両手に星都と力也のスパーダが握られた。水色と緑の二刀流。それは本来沙城さんのものじゃない。

 そうか、これがスパーダを取り込むということなのか。さきほど星都と力也の光を吸収したから沙城さんは二人のスパーダが使えるようになった。

 沙城さんは二つのスパーダを構え魔来名を見つめる。

「いつでも攻め入られたはずなのに、待っててくれたんですか?」
「死を悼(いた)むくらい見逃してやる。どの道いつでも殺せる相手だ」
「そうッ」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品