セブンスソード

奏せいや

40

「あ、えっと。じゃあ、こっちだから」

 俺は沙城さんと並んで歩き出した。なんだか沙城さんは楽しそうで見ていて俺も嬉しくなる。

 なんでだろうか。彼女と一緒にいるとほっとする。それでいて楽しい。出会ってまだ間もないのに彼女には不思議なことばかりだ。湧き上がる興奮に俺は気合いを入れた。

 よし。それじゃあまずはどこに行こうかな。

 とりあえず思いついたのはカラオケだった。二人でカラオケの部屋に入る。小さな部屋だったけどテレビ画面とリモコン、テーブルの上には分厚い曲引きの本が置いてある。

 カラオケは星都や力也とたまに行っている。それにカラオケなら女の子だって好きだろうし。

 沙城さんは部屋に入ると物珍しそうに部屋を見渡していた。

「カラオケ、か」
「あ、もしかして沙城さんカラオケ苦手だった?」

 しまった、早速間違えたか?

「ううん! ただ、すごく新鮮だったから」
「そうだったか。ちなみによく行く場所とかはあったの?」
「うーん、私の時はどんどん娯楽産業は廃れていったから、あんまりお店で遊んだ覚えはないんだ。でも、だからすっごく楽しみ。なんだかドキドキしちゃうね」

 そうだったのか。でも、それならなおさら案内のしがいがあるってものだ。

「他にももっと案内するさ」
「うん!」

 俺は彼女の隣に座り使い方を教えてあげた。まずは最初に俺が歌い次に彼女の番になる。が、沙城さんはカタログを見たまま俯いていた。

「沙城さん、どうかした?」
「…………知ってる曲がない……」
「…………」

 それはどうしようもないな……。

 カラオケで歌った後は一緒に映画を見に行った。アクションものの映画だったけれど初めて映画を見る彼女は興奮しっぱなしだった。その後はウインドウショッピングをしていろいろな場所に行った。その度に驚いたり興味を示したりしてくれるものだから案内する俺の方まで楽しい。なんかこれじゃスパーダ探しなんだかただ遊んでいるようだ。それくらい俺たちは自由に遊びまわっていた。

 ファミレスから出て数時間後、俺たちはゲーセンに立ち寄っていた。俺の前ではぬいぐるみが入ったクレーンゲームを沙城さんが必死に挑戦している。

「もう少し……もう少し……」

 クレーンを慎重に動かしていく。クレーンは下がっていきぬいぐるみを掴むが残念、ぬいぐるみは倒れるだけで掴むことはできなかった。

「あああ~!」

 盛大に悔しがっている。

「もぉう、あと少しだったのに!」
「はは。沙城さん、次は俺がやるよ」

 沙城さんに譲ってもらいクレーンゲームの前に立つ。硬貨を入れてクレーンを動かした。だいたいここら辺かな?

「聖治君? そこだと届かないよ」
「まあ、見てて見てて」

 クレーンはぬいぐるみよりも少しズレたところで下がっていく。これではぬいぐるみは掴めない。でもこれが狙いで、アームが動いたことでぬいぐりみがひっかり、そのまま穴に落ちていった。

「あ」

 俺は落ちてきたシロクマのぬいぐるみを取り出し口から手に取った。

「な」

 それを彼女に見せてやった。

「すごい! 聖治君にこんな特技があったなんて!」

 沙城さんは驚くも写メを取り忘れたと悔しがっている。

「俺もうまい方じゃないんだけどな、以前星都が転売目的で乱獲してるのを見たことがあってさ。結局うまくいかなくて散財(さんざい)してたけど。これはうまくいってよかったよ。はい、これ」
「もらってもいいの?」
「俺が持ってても仕方がないさ」

 俺はぬいぐりみを沙城さんに渡してあげた。かわいいけど俺の趣味じゃないし。沙城さんが持ってる方がこのクマだって嬉しいだろう。

 ぬいぐるみを受け取り沙城さんは笑ってくれた。

「ありがとう! ずっと大切にするね」
「はは。喜んでくれてよかったよ」

 それからせったくなのでプリクラに入り写真を撮った。やり方を沙城さんに教えてあげて、撮った写真にいろいろ書き込んだ。けっこうはしゃいでいて本当に楽しんでいる。

「見て見て! これすごく可愛い!」

 女子好みの背景やスタンプに飛び上がる勢いだ。

「沙城さん、これで最後だけどどうしよっか」

 最後の写真だけどなにを書き込もうかな。

 それで聞いてみたんだが、沙城さんは考えると一旦落ち着いた。

「屋上で言ってくれた言葉、覚えてる?」
「ん? どれのこと?」

 いろいろ話してたからな、どれのことか咄嗟に分からない。

「セブンスソード」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く