セブンスソード
14
そう言うと彼女は意を決したようだ。
「聖治君は、スパーダって聞いて、思い出すことはある?」
「スパーダ?」
いや。なんだろうな、車か? それか楽器かな? 駄目だ、全然察しがつかない。
沙城さんは強い眼差しで詰め寄ってくる。
「私たちは、未来からそれを探すために来たんだよ?」
「未来?」
「聖治君。私と一緒に、ロストスパーダを探して」
おいおい、ちょっと待ってくれ。
「未来って、え?」
まいったな。
沙城さんの顔を今一度確認してみる。大きな瞳に整った眉、小顔で可愛らしい印象を受ける。目の前にいるのはどこをどう見ても美少女だ。
なのに、未来から来ただって? 冗談ならともかく本気で言ってるなら中二病だぞ。おいおい、ほんとに漫画みたいな展開だな。
「それも嘘か?」
「これはほんとなの!」
改めてそう言われてしまう。マジか。
「えっと、それ、もしかして本気で言ってる?」
しかし、それですんなり納得できるはずがない。今なら冗談で済む話だ、お願いだから冗談だと言って欲しい。
だが彼女はそうは言わなかった。その変わり悲痛な表情で「そんな……」と俯いている。
なんだか、笑える感じじゃないな。彼女の言っていることは信じられないけど、だからといって彼女の反応まで嘘とは思えない。本気で落ち込んでいるように見える。
でも、未来から来た? 彼女だけでなく、俺も?
どうしたものかな。こういう時なんて返すのが正解なんだ?
とりあえず、この話は終わらせよう。やっぱり未来から来たなんて話関わらない方がいいと思う。
「ごめん、沙城さんのこと疑うわけじゃないんだけど、俺にはなんのことだか分からない。いきなり未来から来たとか、さ? 信じられないよ」
「それは」
無理があるのは分かっているんだろう。あんなに悩んでいたんだし、そこら辺の分別(ふんべつ)は付くみたいだ。
「そういうことだから、俺は行くよ」
「聖治君、でも!」
「話はまた明日聞くからさ。たぶんだけど時間を置いた方がいいと思う。それじゃあ」
そう言ってやや強引にその場から離れた。
そのまま昇降口で靴に履き替え帰路につく。ふぅと息を吐く。夕焼けで茜色に染まった住宅街、その道を一人歩き俺の影が伸びる。
「それにしてもなぁ」
一人になったことで落ち着くが、しかし頭の中はさきほどのことで一杯だ。
転校生である沙城香織。見た目は可愛くて性格もきつい印象はない。一見完璧なその少女は俺たちが未来から来たと言う。はっきり言っておかしい、かなり普通じゃないと思う。いわゆる電波系というやつなのか? 今まで会ったことも見たこともないが、あれがそうなんだろうか。
「あ」
でも待てよ、彼女は俺の名前を知っていた。それはどういうことなんだ? 誰かから聞いた? それか最初から知っていたのか?
それにあの時の彼女。
「ほんとに悲しそうだったな」
俺から会ったことあったっけ、と聞かれた時の彼女の表情。ほんとにショックで、辛そうにしていた。見て分かったんだ、傷ついてるって。すごく驚いていて、それでいて辛そうなのが。
聞いた時は反射的に拒絶してしまったがもしかしたらなにか事情があったのかもしれない。もしそうなら彼女には悪いことをしてしまったな。
「明日、真面目に聞いてみるか」
日が移ろう空を見上げる。オレンジの空がきれいだ。
そんな風に思っている時だった。
「ん?」
視線を正面に戻しそこにいる人物に目が止まる。
いつからいただろう。六月になりもう夏だというのに黒いコートを着ている。コートについたフードを目深に被っており顔は見えず、白い髪が出ているのが分かるくらいだ。その人が道の中央で俺をじっと見ていた。
変わっている人だな、それにこっちを見てきてなんだか薄気味悪い。
ここは顔を見ず素通りしよう。
「おいおい、無視かよ」
「え」
男の声だ。でもなんで? 声をかけてきた?
「聖治君は、スパーダって聞いて、思い出すことはある?」
「スパーダ?」
いや。なんだろうな、車か? それか楽器かな? 駄目だ、全然察しがつかない。
沙城さんは強い眼差しで詰め寄ってくる。
「私たちは、未来からそれを探すために来たんだよ?」
「未来?」
「聖治君。私と一緒に、ロストスパーダを探して」
おいおい、ちょっと待ってくれ。
「未来って、え?」
まいったな。
沙城さんの顔を今一度確認してみる。大きな瞳に整った眉、小顔で可愛らしい印象を受ける。目の前にいるのはどこをどう見ても美少女だ。
なのに、未来から来ただって? 冗談ならともかく本気で言ってるなら中二病だぞ。おいおい、ほんとに漫画みたいな展開だな。
「それも嘘か?」
「これはほんとなの!」
改めてそう言われてしまう。マジか。
「えっと、それ、もしかして本気で言ってる?」
しかし、それですんなり納得できるはずがない。今なら冗談で済む話だ、お願いだから冗談だと言って欲しい。
だが彼女はそうは言わなかった。その変わり悲痛な表情で「そんな……」と俯いている。
なんだか、笑える感じじゃないな。彼女の言っていることは信じられないけど、だからといって彼女の反応まで嘘とは思えない。本気で落ち込んでいるように見える。
でも、未来から来た? 彼女だけでなく、俺も?
どうしたものかな。こういう時なんて返すのが正解なんだ?
とりあえず、この話は終わらせよう。やっぱり未来から来たなんて話関わらない方がいいと思う。
「ごめん、沙城さんのこと疑うわけじゃないんだけど、俺にはなんのことだか分からない。いきなり未来から来たとか、さ? 信じられないよ」
「それは」
無理があるのは分かっているんだろう。あんなに悩んでいたんだし、そこら辺の分別(ふんべつ)は付くみたいだ。
「そういうことだから、俺は行くよ」
「聖治君、でも!」
「話はまた明日聞くからさ。たぶんだけど時間を置いた方がいいと思う。それじゃあ」
そう言ってやや強引にその場から離れた。
そのまま昇降口で靴に履き替え帰路につく。ふぅと息を吐く。夕焼けで茜色に染まった住宅街、その道を一人歩き俺の影が伸びる。
「それにしてもなぁ」
一人になったことで落ち着くが、しかし頭の中はさきほどのことで一杯だ。
転校生である沙城香織。見た目は可愛くて性格もきつい印象はない。一見完璧なその少女は俺たちが未来から来たと言う。はっきり言っておかしい、かなり普通じゃないと思う。いわゆる電波系というやつなのか? 今まで会ったことも見たこともないが、あれがそうなんだろうか。
「あ」
でも待てよ、彼女は俺の名前を知っていた。それはどういうことなんだ? 誰かから聞いた? それか最初から知っていたのか?
それにあの時の彼女。
「ほんとに悲しそうだったな」
俺から会ったことあったっけ、と聞かれた時の彼女の表情。ほんとにショックで、辛そうにしていた。見て分かったんだ、傷ついてるって。すごく驚いていて、それでいて辛そうなのが。
聞いた時は反射的に拒絶してしまったがもしかしたらなにか事情があったのかもしれない。もしそうなら彼女には悪いことをしてしまったな。
「明日、真面目に聞いてみるか」
日が移ろう空を見上げる。オレンジの空がきれいだ。
そんな風に思っている時だった。
「ん?」
視線を正面に戻しそこにいる人物に目が止まる。
いつからいただろう。六月になりもう夏だというのに黒いコートを着ている。コートについたフードを目深に被っており顔は見えず、白い髪が出ているのが分かるくらいだ。その人が道の中央で俺をじっと見ていた。
変わっている人だな、それにこっちを見てきてなんだか薄気味悪い。
ここは顔を見ず素通りしよう。
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