セブンスソード
5 プロローグ
そう言うと香織の表情がわずかに晴れる。怖かった。不安だった。いつ死ぬかもしれないと心細かった。だけどそんな心を彼女が救ってくれた。
握る手に力が入る。この世界には生きる希望も救う価値もないのかもしれない。
唯一、彼女との手の繋がりが安らぎだった。もしこの繋がりさえなくなってしまえば俺にはなにもない。
失いたくない、彼女だけは。この繋がりだけは。
絶対に。
彼女という存在が、俺にとって救いそのものなんだ。
俺たちは互いの存在を認め合うように見つめていた。
すると香織の視線がなにかを見つけたように動いた。
「聖治君、人がいる!」
「え?」
つられて香織の視線の先を見る。
道路の向こう側、ちょうどT路になっている通りに一人の影があった。まだ遠いが確かに人がいる!
「よかった、私たち以外にも人が」
「ああ!」
急いで走る。声を掛けようとも思ったが悪魔に気づかれるかもしれない。俺たちは黙って近づいた。
見れば相手は四十代くらいの男性でさらに両手には銃を持っていた。なにも持っていない俺たちからすればこれ以上ないってくらい心強い存在だ。
「あの!」
近づいたことで声を掛ける。それで相手も振り向いた。
「よかった、まだ生きている人がいたなんて」
胸をなで下ろす。よかった、よかった。出会えただけなのにまるで救われたような気持ちだ。
「そうか、まだいたのか」
男の人もそう言うと俺たちを見て笑った。
「よかったよ、ノルマがきつかったところだ」
「え?」
男の人は持っていた銃を俺たちに向けてきた。
「え?」
頭が真っ白になる。なんで俺たちが狙われているんだ?
「なんで、どうして」
「なんだ、知らないのか」
そう言うと男の人は肩を俺に見せるように前に出してきた。離れていた時は見えなかったが、そこには腕章があり五つの丸で星を作ったマークが載っている。
そのマークは、悪魔の指導者とされる殺戮王のものだ。
「まさか、人狩り?」
聞いたことがある。悪魔に寝返って人を襲うやつらがいると。同じ人間なのに、心を悪魔に売った最低なやつらだ。
「そういうことだ、運がなかったな」
男は銃口を持ち上げ両手を挙げるように指示してくる。仕方がなく両手を挙げる。
そんな。嘘だろ? 殺される? そんなの嫌だ。死にたくない。
「なんで、こんなことするんですか?」
「香織?」
振り返る。隣に立つ香織は両手を挙げつつも男を見つめていた。怯えている。だけど屈していない。
「あ?」
「あなたにも、大切な人がいたんじゃないんですか? その人を守りたいって気持ちがあったんじゃないんですか? その気持ちが分かるなら、人に銃を向けるなんて、悲しいことは止めませんか?」
「香織、駄目だ」
言いたいことは分かる。でも今は駄目だ!
「お前なに言ってんだ?」
銃口が俺から香織に向けられる。男の声が苛立っているのが分かる。
「ふざけたこと言ってるとここで撃つぞ!」
男の怒鳴り声がぶつけられる。香織の体が縮まる。それでも香織は止めなかった。
「死ぬのが怖い、その気持ちは分かります。でも、だからといって、それで誰かを傷つけるなんて、そんなの間違っています。どんなに辛くても正しく生きませんか?」
「てめええ!」
男が銃を構えた。
「香織ぃいいい!」
叫ぶと同時、俺は男に飛びついていた。考える前に体が動いていて、銃身を両手で掴むと一緒に倒れる。男の上に乗る形で必死に銃を掴んだ。
「このガキぃ!」
「うおおおお!」
絶対に放さない! 放してたまるか! 死んでも放すか!
握る手に力が入る。この世界には生きる希望も救う価値もないのかもしれない。
唯一、彼女との手の繋がりが安らぎだった。もしこの繋がりさえなくなってしまえば俺にはなにもない。
失いたくない、彼女だけは。この繋がりだけは。
絶対に。
彼女という存在が、俺にとって救いそのものなんだ。
俺たちは互いの存在を認め合うように見つめていた。
すると香織の視線がなにかを見つけたように動いた。
「聖治君、人がいる!」
「え?」
つられて香織の視線の先を見る。
道路の向こう側、ちょうどT路になっている通りに一人の影があった。まだ遠いが確かに人がいる!
「よかった、私たち以外にも人が」
「ああ!」
急いで走る。声を掛けようとも思ったが悪魔に気づかれるかもしれない。俺たちは黙って近づいた。
見れば相手は四十代くらいの男性でさらに両手には銃を持っていた。なにも持っていない俺たちからすればこれ以上ないってくらい心強い存在だ。
「あの!」
近づいたことで声を掛ける。それで相手も振り向いた。
「よかった、まだ生きている人がいたなんて」
胸をなで下ろす。よかった、よかった。出会えただけなのにまるで救われたような気持ちだ。
「そうか、まだいたのか」
男の人もそう言うと俺たちを見て笑った。
「よかったよ、ノルマがきつかったところだ」
「え?」
男の人は持っていた銃を俺たちに向けてきた。
「え?」
頭が真っ白になる。なんで俺たちが狙われているんだ?
「なんで、どうして」
「なんだ、知らないのか」
そう言うと男の人は肩を俺に見せるように前に出してきた。離れていた時は見えなかったが、そこには腕章があり五つの丸で星を作ったマークが載っている。
そのマークは、悪魔の指導者とされる殺戮王のものだ。
「まさか、人狩り?」
聞いたことがある。悪魔に寝返って人を襲うやつらがいると。同じ人間なのに、心を悪魔に売った最低なやつらだ。
「そういうことだ、運がなかったな」
男は銃口を持ち上げ両手を挙げるように指示してくる。仕方がなく両手を挙げる。
そんな。嘘だろ? 殺される? そんなの嫌だ。死にたくない。
「なんで、こんなことするんですか?」
「香織?」
振り返る。隣に立つ香織は両手を挙げつつも男を見つめていた。怯えている。だけど屈していない。
「あ?」
「あなたにも、大切な人がいたんじゃないんですか? その人を守りたいって気持ちがあったんじゃないんですか? その気持ちが分かるなら、人に銃を向けるなんて、悲しいことは止めませんか?」
「香織、駄目だ」
言いたいことは分かる。でも今は駄目だ!
「お前なに言ってんだ?」
銃口が俺から香織に向けられる。男の声が苛立っているのが分かる。
「ふざけたこと言ってるとここで撃つぞ!」
男の怒鳴り声がぶつけられる。香織の体が縮まる。それでも香織は止めなかった。
「死ぬのが怖い、その気持ちは分かります。でも、だからといって、それで誰かを傷つけるなんて、そんなの間違っています。どんなに辛くても正しく生きませんか?」
「てめええ!」
男が銃を構えた。
「香織ぃいいい!」
叫ぶと同時、俺は男に飛びついていた。考える前に体が動いていて、銃身を両手で掴むと一緒に倒れる。男の上に乗る形で必死に銃を掴んだ。
「このガキぃ!」
「うおおおお!」
絶対に放さない! 放してたまるか! 死んでも放すか!
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