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夏月太陽

81.クエスト:『料理教室を卒業せよ』


 次の日、早速ログインしてクエスト受注場所にやって来た。

 ハヤトがさっとクエストの場所を目指して駆けていったので後を追う。

「これですこれ!」

 クエストを指差してそう言うので、そのクエストを見る。

 そこには、『料理教室を卒業せよ』という題名が書かれたクエストがあった。

「まぁ、リュウさんは料理の手順は極めすぎてますけど、僕達の敵討ちをすると思って頑張ってくださいね!」
「あぁ、うん、頑張るよ」

 期待の眼差しでそう言ってくるハヤトに生返事を返す僕。

 完全に他力本願だ。

 よくそんな期待の眼差しで僕を見れるなと思う。

 人にやってもらう態度じゃないと思うけど、料理人を見返せるのが僕だけだから仕方ないかと妥協する。

 その後、クエストを受注した僕達は、そのクエストの説明に書いてある“料理教室・ハタカ”というところへ向かうことにした。


 ◆◇◆◇◆


 “料理教室・ハタカ”に着くと、僕達の他にビーストマンの二人が居た。

 ここへ来るってことは、この料理教室の実情を知らない人達かな?

 楽しそうに話をしている。

「私、この料理教室が終わったら、現実で彼氏に料理を振る舞うんだ!」
「私、この料理教室が終わったら、おばあちゃんに料理を振る舞うんだ!」

 それダメなときのフラグ……。

 前者の人はともかく、後者の人はぜひともフラグをへし折ってほしい。

 “料理教室・ハタカ”の建物はレストラン風の建物だった。

 僕達が集まったのを見計らってか、一人のシェフ姿の男の人がやって来た。

「やあ諸君、私はシェフのハタカだ。今日は料理の基礎を学んでもらい、最後にテストをし合格ならば卒業、不合格ならばもう一度最初から料理の基礎を学んでもらうことになる。では、早速始めようか」

 付いてこいと建物に向かって歩き出すシェフ。

 あまり説明になってないような気がしなくもない。

 そう思いながら、シェフに付いていった。

 中に入ると、キッチンだけがずらりと並ぶ、如何にも料理教室な内装だった。

 僕達は、シェフに渡されたエプロンを装備してそれぞれのキッチンへスタンバイした。

 すると、シェフが前に立ち、説明を始めた。

「えぇでは、まず包丁の持ち方から教えよう。包丁はこう持つ」

 そう言いながら見本を見せるシェフ。

 しかし、持ち方が変だ。

 普通、親指と人差し指で刃元の中央をしっかりと握り、残りの3本の指で柄を握る。

 しかし、シェフの持ち方は柄を全部の指で握っている。

 気になった僕は、シェフの持ち方を指摘した。

「シェフ」
「なにかな?」
「持ち方が違います。親指と人差し指で刃元の中央をしっかりと握り、残りの3本の指で柄を握るのが、包丁の一般的な正しい持ち方です」

 僕がそう言った瞬間、速人達が吹き出した。

 シェフは、指摘されたことに驚いた様子だ。

「そもそも、料理をする前に手を洗ってませんよね? 衛生的に良くないですよ?」

 その辺は、ばあちゃんから耳にタコができるくらいに言われていたので、さっきも、始まる前に体が勝手に水道に向かって手を洗っていた。

 シェフはというと、プライドを傷つけられたとばかりに青筋を作りながら顔をを真っ赤にしていた。

「なかなか料理に詳しいようだね。ならば、君が教えてあげてくれないかな? 私が間違っていないか審査してあげようじゃないか」
「わかりました。やります」

 なぜか、僕が先生をやることになった。

 任されたからにはきちんと教えないと。

 そう思った僕は、まずは挨拶から入った。

「初めまして、リュウと言います。料理は祖母に習ったものですが、シェフよりは身になると思うので、よろしくお願いします」

 主にビーストマンの二人に向かって挨拶をする。

 二人は、戸惑いつつもお辞儀をしてくれた。

「では始めていきたいと思います」

 そう言って始まった僕の料理教室は、手を洗うところから始まり、正しい包丁の持ち方、切り方、その時の左手の添え方などを教える。

 その後、今日作る予定だった野菜炒めを僕が実際に作りながら教えると、ビーストマンの二人も速人達も美味しそうな野菜炒めを作ることができた。

 ただし、たった一人を除いて……。

「モモ、これ本当に僕の見本を見ながら作った?」
「見ながら作りました! 手順もなにも間違ってません!」

 ムスッとしながらそう言ってくる桃香。

 じゃあ、なんでこんなに漫画に出てきそうな紫色をしたものが出来上がるんだ?

「あっ、でも、美味しくなるかなと思って色々な調味料を混ぜ込みましたね」

 それだー! 絶対それだよ!

「ち、ちなみに、何を入れたの?」
「ケチャップとマヨネーズとソイソースと……」
「うん、ちょっと待とうか。野菜炒めだからね? ケチャップとマヨネーズはまだ良いとしよう。でもさ、野菜炒めにソイソースはちょっと……ここ、科学の実験するところじゃないからさ」
「うぅ……すみません……」

 シュンと落ち込むモモ。

「現実に戻ったら料理の練習しようか」
「リュウさんが付きっきりならやります!」
「うん、そうするからやろうね?」
「はい!」

 目に見えて機嫌を直したモモに僕は苦笑した。

 その後、出来上がった野菜炒めを、シェフに差し出した。

 順々に僕達の野菜炒めを一口ずつ食べるシェフ。

 僕の野菜炒め以外は合格をもらい、あとは僕を残すのみとなった。

「最後は君のか……。教えるのは上手くても、味は……美味ぁぁぁぁ!? な、なんだこれは!? 同じ野菜炒めなのか!? それぞれの野菜の味はしっかりとしつつも、バランスは崩れていない! 美味すぎる!」

 僕が作った野菜炒めを一口食べた後そんなことを叫ぶシェフ。

 そして、物凄い勢いで僕が作った野菜炒めをたいらげた。

 それを見る速人達はしてやったりといった感じだ。

 完全に他力本願だったけど、それでいいのか。

 そう思いながら、僕は皆が作った野菜炒めを一口ずつ食べる。

 うん、美味しい。

 我ながらよくやったなと思った。

 ぶっつけ本番で教えるのはちょっと緊張してたけど、なんとか教えたいことは全部教えられたのでよかった。

 無事“料理教室・ハタカ”を卒業し、クエストクリアとなった。


 ◆◇◆◇◆


「いやぁ、リュウさんのお陰でスカッとしました。ありがとうございました」
「最初からリュウさんに習っとけばよかったな」
「「あっ……」」

 今気づいたんだ……。

 僕も今気づいたけど。


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