VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

70.合同でクエスト 3


 次に遭遇したモンスターは、初めて見るモンスターだった。

 ハヤト曰く、『ラッシュドボア』という猪のモンスターで、突進攻撃しかないが体格が大きいため反撃が難しいとのことだ。

 『ラッシュドボア』は、こちらに気づくとこちらを向き、鼻を鳴らしながら牛のように後ろ足を蹴り上げて走る準備を始めた。

 猪ってあんな動きしたっけ?

 そう思っている間に『ラッシュドボア』が突進してきた。

 こういうとき真っ先に動くリュウジくんがなぜか動かないので、リュウジくんの様子を見てみた。

 まださっきのことで落ち込んでいるようで、落ち込みすぎて周りが見えていない様子だ。

 その為、リュウジくんが動かないのを心配してか、プルルンがリュウジくんの頭の上に乗った状態で『ラッシュドボア』に向けて氷のつぶてを放った。

 プルルンが放った氷のつぶては、真っ直ぐに『ラッシュドボア』に飛んでいき、『ラッシュドボア』の鼻に直撃した。

 すると、『ラッシュドボア』は『プギャァァァァ!?』と悲鳴のような鳴き声を発しながら立ち止まり顔をブンブンと振った。

 こっちの心境も「プギャ――m9(^Д^)――!!」だよ。ナイス氷のつぶてだったよ、プルルン。

 けど、リュウジくんがこんな状態だから代わりに誰かが『ラッシュドボア』を倒さないといけないな……あっ、そうだ!

「トッププレイヤー(仮)とその超優秀な仲間達、出番だよ」
「だーかーらー! お前さぁ、その俺だけからかうのやめろよっ! 大体……」

 マクロがそこまで言ったところで他の三人が割って入った。

「よっしゃ、任せろ!」
「リュウに頼まれたんじゃ断れないからな!」
「ほらトッププレイヤー(仮)君、行くよ!」

 マサトがそう言ってマクロを引っ張っていった。
 マクロは、引っ張られながらこう叫んだ。

「こ、この、裏切り者ー!! 仲間だと思ってたのにー!!」

 マクロ、グッドラック。そう思いながら内心で親指を立てる。

 骨は拾ってあげるよ。ゲーム内で死体は残らないから拾えないけどね。

 マクロ達の戦いは、ヒューマンでマジシャンのカナデが遠距離からの援護攻撃、ビーストマンでソードマンのクリアとビーストマンでウォリアーのマサト,そしてヒューマンでソードマンのマクロが前衛で連携して攻撃をするという戦い方で、なんか結構ゲームならではの戦い方っぽくて憧れる。

 僕達の戦い方なんて、リュウジくんが入ってくるまではほとんど僕だけで倒してたし、リュウジくんが入ったら入ったでリュウジくんが一人で倒しちゃうから戦い方とは言えないものだし。

 だからこの時だけ、マクロがトッププレイヤーになったのは、成るべくして成ったんだなと思った。

 でもそれだけなので、からかうのはやめない。

 なんせ、からかい易いのがマクロの唯一の長所と言っても過言ではないんだから。

 非常に連携のとれたマクロ達の戦いを羨ましいなと思いながら見ていると、戦い始めてから2分くらいで『ラッシュドボア』が倒された。

 倒し終えた後、マクロが僕のところへ来て自慢気にこう言った。

「どうだ、凄いだろう! 俺のところはリュウのところと違って仲間も一緒に戦ってくれるからな、羨ましいだろ!」

 煽られているけど、そのことより核心を突かれたのがムカついたので、マクロの肩を掴みニコッとしながらこう言った。

「あぁ、やっぱり、PvPをご所望なんですね! わかります!」
「えっ……?」

 素頓狂(すっとんきょう)な声を上げるマクロを無視して、僕はメニューを開いてマクロに向けてPvPを申し込む。

 そして、マクロの目の前に申し出の画面が浮かび上がると、顔を真っ青にしながら「あっ……」と呟くマクロ。

「どうぞ【YES】を選択してください」

 またまたニコッとしながら僕がそう言うと、マクロは真っ青な顔のまま慌て出した。

「え、いや、あの、えっと……」

 そうして出した答えは、再び土下座をすることだった。

「すみませんでしたぁ!! それだけは、それだけは、勘弁してくださぁいっ!!」

 土下座をしながらそう叫ぶマクロ。

 これはこれでおもしろいから許してもいいけど……。と思っていたところに『コバルトスパイダー』がやって来た。

 そこで僕は閃いた。

「じゃあ、あの『コバルトスパイダー』を一人で倒してくれたら許してあげるよ」
「へっ?」

 心底驚いたのか、再び素頓狂な声を発しながら僕のことを見上げるマクロ。

「だってトッププレイヤー(株)なんでしょ? 一人で倒せないなら他の三人のうちの一人がトッププレイヤーになれるってことだよね?」
「(株)って、株式会社の株かよ!? 野菜のカブかと思ったじゃねぇか!」
「それだと力合わせないといけない方だから。今はマクロがトッププレイヤーに足(た)るかどうかだから。というか、早く倒してきてよ」
「辛辣だな!? わかったよ、やればいいんだろ? やれば……!」

 マクロはそう言ってため息をつくと、『コバルトスパイダー』に向かって歩いていった。

 グッドラック、骨は拾ってあげるよ。ゲーム内だから死体は残らないけど……あれ? さっきもこんなことを思った気がするな……。

 まぁ、どうでもいいか。


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