VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

69.合同でクエスト 2


 【英雄の台地】に着いた僕達が最初に戦ったのは、『ジャイアントパンダ』だった。

「リュウにいちゃん、パンダだよ! おおきなパンダ!」

 『ジャイアントパンダ』を見てとても上機嫌なリュウジくん。

「でも凶暴だから気をつけ……」

 注意している間に、リュウジくんは『ジャイアントパンダ』に向かってタァーッと走っていって抱きついていた。

 それに気づかずリュウジくんが隣に居ると思って話していると、そう思っていたリュウジくんの声が前から聞こえてきた。

「わあっ! おおきいねぇ! モフモフだぁ!」

 そちらを向くと、『ジャイアントパンダ』に抱きついて顔を擦り寄せているリュウジくんの姿があった。

 『ジャイアントパンダ』は攻撃もせず、擦り寄せられていることにただただ唖然として突っ立っているだけだ。

 予想外の事すぎて反応できていないみたいだ。

 すぐ隣に居ると思っていたのに、いつの間にか『ジャイアントパンダ』に抱きついていたリュウジくんに驚く。

「えぇっ!? リュウジくん!? 僕の話聞いてた!?」

 そして、訊ねたことに対して返ってきた言葉はこうだった。

「うんっ! やさしいかわいいパンダってことだよね!」
「ぜんっぜん違うよ! むしろ逆だよ! ブサイク凶暴パンダなんだよ!」

 マジかリュウジくん、人の話はきちんと最初から最後まで聞こうよ……。

「えー? どこがー? かわいいとおもうのになー」

 いやいや、あんな牙剥き出しのパンダのどこが可愛いのか、ご教授願いたいぐらいだよ。

 あっ、あれか? 毛色が黒くて背が大きくて額にカタカナの『メ』みたいな傷があって目付きの鋭い『キングベア』のことを可愛いと思えるモモと同じ感覚か?

 そう思った矢先にモモがリュウジくんの言葉に反応した。

「そうですよね! 可愛いですよね! リュウジくんはわかる子ですね!」
『えっ?』

 リュウジくん以外の全員が、モモの言葉に驚いた。

 『ジャイアントパンダ』も、モモの中では可愛いの分類に入るらしい。

 モモの美的センスはどうなっているのか……謎は深まるばかりだ。

 なんてことを思っていると、モモが僕に同意を求めてきた。

「リュウさんも可愛いと思いますよね? ね?」
「あ、あぁ、いや、うん、まぁまぁかな?」
「ダメです、可愛いか可愛くないかハッキリしてください!」
「えっ、あぁ、う~ん……」

 そう言いながらモモの後ろに居る人達を見ると、グッドラックと言わんばかりに全員が満面の笑みで親指を立ててくる。

 言えってこと? 『ジャイアントパンダ』のことを可愛いって言えってことなの?

 言うか言わないか考えていると、モモに急かされた。

「どうなんですか? 可愛いですか? 可愛くないんですか?」
「か、可愛い?」
「ですよね! リュウさんならそう言ってくれると思ってました!」
「あ、うん」

 ご期待に沿えれたなら本望です……。

 はぁ、とため息をつくと、マクロが僕の肩に手を置いて満面の笑みで親指を立ててきた。

 なにそれ? ムカつくんだけど。

「PvPをご所望ですか?」

 ニコッとしながら聞くと、マクロはその状態のまま静止して顔色だけだんだんと青くなっていった。

 そして、次の瞬間、物凄い速さで土下座した。

「すみませんでした! それだけは勘弁してください!」

 思ったより反応がよくておもしろかったので、今ので許すことにした。

 しゃがんでマクロの肩をポンポンと叩いて「冗談だよ」と言うと、顔を上げてしばらく僕の顔を見た後、ため息をついてから安堵の表情になった。

「ったく、やめてくれよな。リュウとPvPなんてやりたくないんだよ、一方的に殺られるだけだからさ……」
「トッププレイヤーのマクロさんには及ばないと思うんだけど」
「皮肉にしか聞こえねぇよ! っていうか、こんなことしてる場合じゃないだろ!」

 そうだった。『ジャイアントパンダ』を倒さないと。

 そう思って『ジャイアントパンダ』の方を見ると、リュウジくんが倒し終えていた。

 あれ? どういう状況? 可愛いって言ってたよね?

「リュウジくん、なんで倒したの?」
「だって、こうげきしてきたもん。テイムできなかったし」

 それが理由!? しかもテイムしようとしたの!?

 すると、ハヤトがリュウジくんの言葉を聞いてこう言った。

「あぁ、『ジャイアントパンダ』はテイム対象外なのでテイムできませんよ。この【英雄の台地】でテイムできるモンスターは1体もいませんから」
「えぇ~、つまんないのぉ~」

 そう言ってムスッとするリュウジくん。

 そんなリュウジくんを「まぁまぁ」と言って宥めながら次のモンスターを探す。

 リュウジくん、その内周りがモンスターだらけになってそうな予感がする。

 まぁ、あくまで予感だけど。


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