転生ウジ虫野郎の毒使い

キムチ

白色の教会

あれから何日、何ヶ月たっただろうか、いや年も遠に過ぎているかもしれない。あれ以来カレンダーを見る事もやめた。

「ん…今、何時だ?ってそんな事どうでもいいか…。」

カーテンの閉じた日の光の入らない部屋でPCとにらめっこをしている。彼の名前は世根暗 ヒロ現在絶賛引き篭もり中である。



ヒロへのイジメが始まったのは、高校一年の夏新生活が始まってすぐヒロの高校生活は地獄に変わった。ぽっちゃり体型のヒロはすぐにクラスの不良の的になった。クラスに一人はいる、犠牲役に見事選ばれたのだ。周りの者は関わるまいと無視をし、いつしか学校へ足を運ぶ事を辞めた。

❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖

「ニー活最ッ高ォ!!!」

ヒロは意外にも現在の生活に満足していた。

母さんは九つの時にこの世を去り大企業のお偉方である父(ジジィ)は笑えるほど帰って来ない。どうせあいつの事だ、他のとこで女でも作っているのだろう。

つまり俺はこの4LDKの一戸建てを自由に行き来出来る。
何一つ不自由のない生活、冷房の効いた部屋の中で汗水垂らして学校に通学している学生を鼻で笑う生活……
「ハハ……クソダセェ」

それはどうしようもない自分に向けた言葉なのだろう。

……腹……減ったな……。

外に出たくないが為暫く何も口にしない生活を続けた。一年ほど前の贅肉たっぷりのプータローだった頃のヒロとは思えない程に痩せこけていた。
振り返るとディスクに山積みされたコンビニ弁当にカップ麺の屑……俺……早死するだろうなぁ…。

まだ20時外を出歩くには人が多過ぎる。ヒロはゲームチェアーに腰を置き二度寝を始めた。

❖ ❖ ❖ ❖  
視界の定まらない状態で寝転げる。
日の光だけが瞼の裏を赤く染めた。飛行機が着陸する時のような、もどかしい倦怠感が体中を巡った。その後暫くすると心地の良いそよ風が体を包んだ。

「なん…だ……何……が…」と不思議な感覚に襲われた。先程まで自室のゲーミングチェアで仮眠を取っていたはず、それが何故か今天を見上げて大理石?の上に寝転がっている。目の前には立派な支柱にステンドグラスで彩色された白色の空間、中央に置かれた十字架を見ると教会の様などこかと言う事が伺える。

「・・・・あれ?死んだ?」

と思わされる様な程真っ白な教会。
ぼやける視界が鮮明になると共に一時眠っていた聴覚を徐々に取り戻した。

「何処だよ!!ここ!!」

左脇の一端で誰かが喚いた。どこかで聞いたような声、それはいわゆるデジャヴと言う奴だ。

声の主を振り向くとそこにはヒロよりも一回りくらい大きな学生がいた。
よく見ると彼の着ている服はヒロの通っていた✕✕高校の制服と瓜二つであった。

周りを見渡すと同じ制服を着た同年代位の少年少女が倒れている。
しかし、誰一人として目を覚まさない。

状況が呑み込めず周りをキョロキョロしてると先程の男と目があった。

「えーと、これ…どうなってんすかね?」

『シーン』と言う音声が具現化したかのように静かな時が暫く流れる。
長年の人とのコミュニティを断った事により何と答えれば良いかが分からない。

大変だ、何か答えなければ

「う、う、う、うん……そうだね…。」

いぃや、ファック!!そうだねって何がぁ!?

この時初めてニー活を恨んだ気がする、人と話す時なんてコンビニの店員の『暖めますか?』に対しての『はい』くらいで散歩のお婆ちゃんに挨拶を返しただけでドヤ顔していた過去の自分の顔を殴りたい。
だがその少年はヒロのリピートに対して『あっ』と口を大きく広げた。

「その、キョドり方まさかヒロ君!?」

彼はどうやらヒロの事を知っている様だった。元同高の友人なんて片手で数える程しかいない筈だがあんな健康的な青年の友人基知り合い何かいなかったと思うのだが。

「痩せてて気付かなかった……俺だよ俺、安藤 コウ!」

「え!?コウちゃん!?」

安藤 コウそれは見知った名前だった。中学生時代ガリガリのノッポでいつも休み時間になると机の前に来て深夜アニメについて語り合う仲だった。

「ひ、久しぶり、何か筋肉質になった…ね。」

「はは……何だよそれ、ヒロ君もすっかりスリムに成っちゃって。」

俺達はすぐに打ち解けた。これまでの与太話や笑い話等を語り合いながら久し振りに笑った気がする。今、置かれた現状には目もくれず。

暫くすると、続々と周りの彼等も目覚めていった。起きては叫び起きては助けを求めたりとそれを繰り返し一通りの人物達が目を冷ました。

彼等はどれも見た事のある顔をしていて集められた集団が3組である事に気付く事にそう時間を要さなかった。3組と言う事はこの中にヒロをイジメた彼等がいる。油汗が一滴頬を伝った。

一通りの人物が目を冷ましざわざわと教会の中がざわめくと礼拝堂の上から

「彼方はるばるご苦労様!!」

教会に響き渡る幼いな声振り向くと十字架の上に黒色のハットを被った少年が足をプラプラとさせていた。
その、異様な光景にクラスの彼等は息を呑んだ。

「君達にはこの世界を守る為に戦ってもらう。」
意味の分からない事を呟いた少年は延々と語りだした。

❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖

その少年はが言った事をまとめるとこうだ。
この世界は魔女と呼ばれる化物が生み出した魔獣と人類の戦いが混戦していた所、他世界から呼び出した俺達に協力を求めたいとの事。

そして彼は自らを神と名乗った。

話がぶっ飛び過ぎて理解が追い付かないがつまりはそういう事なのだろう。これはいわゆる異世界召喚だ。

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