激補助のショートリリック

激しく補助席希望

短編『イグジット』PartⅡ




ジャンル:???




 薄暗かった劇場に、スポットライトが当たる。ステージが照らされた。



〈SE:拍手〉



「……う……うぅぅ……」


 病人の様な衣装の男が、ステージの端に座り込み、声を押し殺して泣いている。

「……なぁ、いい加減泣くのやめてくれねぇか?こっちまで陰鬱な気分になるよ。」



 その男と反対側に、簡素な服装の男がパイプ椅子に座ってタバコを吸っている。



〈SE:笑い声〉


「…ほら、アイツらにまで笑われてんぞ?なぁ。」

「…ううぅぅ…嫌だ…」

「…なーんで最後の最後にこんな奴と一緒なのかねぇ?そんな悪い事したか?」



〈SE:笑い声〉



「…悪い事は…まぁ、したか。」



〈SE:笑い声〉



─ガチャン



「お!誰か来た!」ガタッ


 簡素な服装の男は椅子から勢い良く立ち上がり、タバコを消すと辺りを見回すがステージには誰も居なかった。


「…は?嫌がらせ??」



〈SE:笑い声〉



 大音量の水の音と共に、ずぶ濡れの男が舞台袖から現れる。

 バイカーの様な服装で、背中にはリュック、手にはヘルメットを持っていた。

「えぇ〜!そっちか!?」



〈SE:笑い声〉



「すいません。来て早々ですが、誰か着替え持ってませんか?」



〈SE:笑い声〉



「いや、ねぇけど…てか、あんたが今の所1番良いもの着てるよ。」



「あー、そうですか。こういう所だとは聞いてましたけど、まさか濡れたままで来るとは思ってなくて…参ったなぁ。」

「とりあえず…座っとけ」

「はい、すいません…」

 バイカーの男はパイプ椅子を出して座る。

「で、何処まで話しましたっけ??」

「いや、何にも話してねぇよ。」



〈SE:笑い声〉



「…うぅぅ…うぐぅう…」

「え!?泣いてる人居るじゃ無いですか!大丈夫ですか??」

「切り替え早ぇな!なんだよにぃちゃん!」

「だって、困ってる人居たら助けたいじゃないですか!」



〈SE:口笛〉



〈SE:拍手〉



「いや、その結果がここ来てるんだろ!」

「あ、そうだった。」



〈SE:笑い声〉



「彼、いつから泣いているんですか?」

「…さぁな?俺が来た時には泣いてたよ。」

「よし!私の持ってる物で彼の涙を止めて見せます!」

「えぇ?何か出来るの?」

「任せて下さいって!!」


 バイカーの男は自分の背負ってるリュックを下ろし、膝の上に載せる。

「何入ってんだ?」

「開けてビックリですよぉ?……ジャーン!!」



 ビジャァァ



 リュックを開け、逆さまに振るも中からは水しか出てこなかった。

「…フタ空いてました……」

「えぇぇぇええぇぇええ!?」



〈SE:笑い声〉



〈SE:大喝采〉



「…うぅ…うぁぁん…」

「いや!お前も泣いてどうすんだよ!!」



〈SE:笑い声〉



「まぁでも、最後にひと笑い起こせたし、いいか。…オジサンは何処からいらしたんで?」

「…見りゃわかんだろ?」

 簡素な服をヒラヒラさせる。

「あぁ〜、そっちの人?」

「あぁ。…10年入ってた。」

「長かったですねぇ!」

「最初は7年の筈だったんだけどなぁ。最近入ってきた若いもんに聞いたら居ない間に話が変わっててよ。あと15年って言われた。」

「あちゃ〜、それで?」

「ま、そう言う事だ。そちらさんは?」

「僕は…えーっと、シンプルに借金です。」

「そうか、大変だったな。」



〈SE:笑い声〉



「いやここで笑い声入るのおかしくね!?」



〈SE:笑い声〉



「まぁでもいいか。お互いとんだ笑い話だもんな。」

「いつ行きます?」

「んー、もう一本吸ってから行く。」

「身体に悪いですよぉ?」

「…今更何言ってんだ??」



〈SE:笑い声〉



「じゃ、僕はこの辺で。」

「おいおい随分早いな?」

「…スピードだけは、誰にも負けたくないんで。」



〈SE:喝采〉



〈SE:拍手〉



〈SE:口笛〉



 簡素な服装の男が新しいタバコに火をつけるのと同じタイミングで、ステージは一瞬暗転する。




「……うぅぅあ……くぅぅ…」

「なぁ、にいちゃんよ。人が最後に気持ち良くタバコ吸ってんだ。泣くのやめろや。」





「…うぅううぅぅ…」


「…やめろっつってんだろゴラァ!!」

 簡素な服装の男は、吸っていたタバコを病人風の男に投げつけた。




「ううぅ、うぅぅ…」

「てめえだって自分で来たんだろ!!」


「…うっく…ううぅ」



「チッ!やってらんねぇ。1人で泣いてろ!!馬鹿野郎」

 簡素な服装の男はパイプ椅子を蹴飛ばすと、1人で舞台袖に消えて行った。



〈SE:嘆き声〉










































─バタン





「……………。」



 劇場の正面入り口が開き、清掃員の男性が入ってくる。清掃用具が沢山積まれたカートを押して、ステージに近づく。



 ステージに上がると、横に倒れたパイプ椅子を片付ける。ずぶ濡れになったパイプ椅子を雑巾で拭き、床にモップをかける。











「……あの」



「!!………。」



「…みんな、何処行ったんですか?」



「……………。」



「僕も、行かなきゃいけないんですか?」



「……………さぁ?」



「行きたくないんです…行きたくないんです、僕…」



「…………………はぁ。」



「どうすれば、いいですか?」



「………………。」



「助けてくれますか??」



「……………掃除しろって、言われてるだけなんで。自分。」



 パイプ椅子を片付けて清掃を終わらせると、清掃員はカートに道具を積み始める。



「あの!」



 声を掛けられるも清掃員は足を止めることはなかった。誰も居ない劇場内に忘れ物が無いか見て回る。



「せめて、出口教えて…「何言ってんの?」







































「出口はもう、通って来たんでしょ?」






























 その声と共に正面入口脇にある操作盤のスイッチが押され、誰も居ない劇場の灯りが消された。




「…………………。」





短編『イグジット』PartⅡ

END

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