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クインテット:『100年後の君へ』

ジャンル:ヒストリー 現代 ヒューマンドラマ

お題:いつ、1917年、10月24日
どこで、ペトログラード
誰が、ハーメルン
何を、片栗粉を
何故、ウザイから
どのように、情熱的に

初クインテットになります。




「コレが、かのお方からの遺品になります。」

 『ペトログラード』の貸金庫にある、もっとも古い引き出しの中から、それは銀行員に大事そうに両手に抱えられて出てきた。

 私の曽祖父にあたるという、『ハーメルン』を名乗る人物からの「100年後の君へ」と書かれた手紙を受けて早10日が過ぎていた。最初はその古めかしい手紙をただの手の込んだイタズラだと思っていたが、どうやら祖母の話だと本物らしい。

 その先祖にあたるハーメルンという男は、まだ見ぬ子孫に何かを託していて、その時にいる末代に遺品というか財産を残して居たという話を、かつて母から聞いたと祖母だけが覚えていた。


「いや、いい思い出でもなんでもないですよこんなの、ハッキリいって『ウザいから』!!ホント困るんすよねぇ。100年以上前から残しとくなんてさぁ。俺ここの銀行来るのにパスポートも更新して、仕事まで休んで来てるんすよ?」

 ペトログラード支局の銀行員に文句を垂れた所で何かが変わる訳無いのに、思わず愚痴をこぼしてしまう。

 銀行員はただ微笑んでいた。


「で、コレがそーなの?」

「はい、ただし、この箱の中身については当局は関知致しません事をご了承ください。」


「はぁ…そっすか。」


『1917年、10月24日』

 その日付のみが書かれた、古ぼけた缶箱をゆっくりと開ける。

 途端に中から白い粉が吹き出してきた。

「うわぁ!!ゲッホゴッホ!!なんだこれ!?吸い込んじまった!!」

 銀行員も思わず口に手を当てている。

中には大量の粉と、一通の手紙が入っていた。


「はぁ…何なんだ??麻薬か!?」

「お客様、それは有り得ません。当貸金庫に預け入れる際は麻薬犬のチェックを入れておりますので。」

「あー、はい、そっすか…へぇ。」



 とりあえず、特に危険な物ではないらしい。恐る恐るその粉まみれの手紙を開いてみる。




















やっほー!孫!!おれおれ!ハーメルン!って顔も見てないしわっかんねーかぁー!!なんちゃてー!!あはは!つか!今現在おれ彼女とかいねぇーしぃぃ!!孫とか言っといて息子娘ですら持てるかどうか不安なんですけどーー!!うけるーー!!で、物は相談なんだけど、俺ねぇ。この前めっちゃ凄い発見したのよ。すげぇ。コレはロシアの未来変えるわ。マジで。で、何かっつーとだなぁ…いやいやいや!がっつき過ぎ!孫がっつき過ぎて困る。ツンドラも溶けるっつーの!!『情熱的に』絡んでくるのは嬉しいけどさぁ…ハーメルン、困っちゃうよ。ってどーでもいいかぐははひゃ〜〜!!いやぁ100年後にこの手紙届くようにって、銀行員に昨日賭けでウォッカ一気飲み対決したんだけと俺ノリと勢いの男じゃん?マジで神がかってたんだけど、オレたまたまその時シラフでさあ。そいつに勝ったんだよ!!で、コレを書いてるっつーわけ。…何々?聞きたい?俺の遺言…あ、まだ死んでねーから遺言じゃねーのか?なんて言うのこういうの、伝言…?おい!昨日飲み比べした時はそんな態度取ってなかっただろ!ちゃんと教え…あー今その銀行員とこの手紙書いてんだわ。うん。そいつ?いや名前とか知らんし。誰?誰なん君?ソボロフ?いや知らねーわこの国に何人ソボロフ居ると思ってんだよ!?あったまわりー!こんな奴雇ってるぐらいだからこの銀行潰れるわ。間違いねぇ。100年後じゃなくて101年後とかに届くかもなこりゃ。まぁいいよ。で、そのソボロフから聞いたんだけど、コレまだ世に出回ってない話なんだけど…キセリってあんじゃん?あのドロっとした奴。あまーい果物と粥煮込んで作る料理。アレな…実はな…どーやら、デンプンってので作るとうめぇらしいんだわ。ソボロフのばーちゃんから聞いたから間違いねぇってそこ疑うなよ孫!なんだよ話続かねーじゃねーか孫が信じて来れねーと。で、今日それ飲んだ訳よ。ソボロフのばーちゃんと。そしたら、マジ…世界がグワァーっと…ドバァーってなった訳。マジ、俺の中の何かが弾けたね。アレやべぇ。俺の中のキセリが変わった。つか、キセリ今から始まったわ。コレから始まるキセリに情熱俺は天下の飲んだくれィェーィ!!って感じなんだわ!!これ!!だから!!!!この!!デンプンって奴!!!買った!!でも、入れ物ねぇ!!まじで入れ物ねぇ!!ビンとか高ぇ!!かえねぇ!!!だから!!ここに!!入れるってんだよ俺あったまいー!!ハーメルン頭良すぎてマジビビるわ。俺もたまに使うけど、このデンプ…何?片栗粉?そーいう名前なの?でもお前のばーちゃんジャガイモから作ったとか…うわ!出たでた知ったかぶり!!じゃがいもにデンプン入ってるわけねーし!!そんな事したら畑の土全部ネバネバに成るっつーの!!なんでそんな事も知らねーのソバロフは。え?ソボロフ?知らねーよお前のなまえなんて!うける!!!で、コレを入れておくから、孫、『片栗粉を』使ってもいいよー!!じゃ!俺もう字書くの疲れたし!!!
















「…………」
「…………」
















一度手紙をしまい、目のあたりを抑える。隣にいた銀行員も何度もその手紙を見返す。


「あの、捨てといて下さい。もう帰ります。」



 そう、溢れる怒りを抑え込むのに必死な私は、それだけ穏便に伝えると貸金庫質から出ようとする。


「あ、あの!待って下さい!!」




 銀行員に呼び止められる。




「なんすか?もう維持費も払い終えたからいいでしょ?こことの契約はこれで終わりでいいですから。」


「待ってください。まだあなたに伝えなければならない事があります。」


「っうるせーよ!こんなウザイもん読まされてこっちは腹たってんだよ!!いい加減にしろ!!」



「どうかお願いです。心を落ち着かせて聞いてください。」



 何故か銀行員はプルプル震えている。




「なんなんだよ!?一体…??」





























「私の曽祖父の名は、ソボロフ・ソバロフです。」






END…???


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