逆転した世界で楽しんでやる!
懐かしの林間学校
四月の終わり。あと少しで五月になりそろそろ暖かいから暑くなると感じる頃合いだ。
僕はいまだに冬服で登校することを義務づけられていることに不満を感じ、やたら通気性の悪い制服に心中で悪態をつく。と言うかなんでこんなに分厚い生地なんだ。いくら冬服とはいえ中学の冬服より大分厚い。そして暑い。こんなに防御高めたって日本には男を襲う魔物はいないぞ。
ややしまつた、ここは貞操が逆なんでござった。
そんなくだらないことを考えながら校内掲示板からはぎ取ってきたポスターをもはや何時ものメンバーと化している琉斗、柊さんに見せていた。
「「比嘉谷小林間学校サポーター募集?」」
「うん、送り迎えもしてくれるらしいし、三食自由時間つき。それに、先生に聞くところによると少し報酬が出るらしい」
「報酬? 給料でももらえるのか?」
「うんにゃ、向こうの先生がアイスくらいなら奢ってくれるって。学校の資金で」
「それいろいろとまずいんじゃないかな……」
「へー、いつ行くんだ? さすがに平日は無理だぞ。
「ゴールデンウィークの終わりごろの二泊三日だよ。準備ならウィーク始まりを使えばいいし。詳細はこれ見てよ」
「お、そうだな」
ポスターにはこう書かれていた。
比嘉谷小学校林間学校高校生サポーター募集。
・日時 五月三日から五日までの二泊三日。
・場所 森林保全森の会少年少女の家。
・集合場所 西山高校校門前 午前七時集合 ※なお、そこからは小学校教員が送迎します。
・持ち物 二日分の着替え(動きやすい服) 生活用品 汚れてもいい靴。なお、肝試しのイベントがあり、用意はしますが数に限りがあるので可能であれば使えるような衣装、小道具を持ってきてください。
比嘉谷小と僕たちの通う西山高校(通称;西高)はこの小学校とそこそこ近く、学園祭の演劇に招待したり、運動会に招待されたり、これまた体育祭の女子の集団行動、男子のダンスを見学したりとそこそこ仲の良い関係が続いているらしい。
ゆえに、この高校に毎年募集をしているらしい。ボランティア活動をすると内申点つくし。リア充生活を求めて三千里、いや高校に通っている僕だがここは一端の高校生。やはり内申点はほしい。まぁ、純粋にこういうのも楽しみたいという思いもあるが。
「ほんで、どうする? 僕は面白そうだから行くけど」
「命が行くなら俺も行くか。確かに面白そうだ」
「ほうほう、柊さんは?」
「私? 私も行こうかな。七峰君もいくし」
「そっか。申請用の紙ももってるから書いといて。帰り際に出しとくから」
「お、準備いいな」
そう言う琉斗を横目に帰宅の準備を始め、帰り際に昇降口の近くにある職員室によろうと思い机の引き出しの中身を鞄に移し替えていく。
「こらー! 掲示板のポスター剥がしたのだれですかー!」
そう言いながら入ってきたのは担任である須々木先生だ。うげ、ばれた。この先生妙に感が良くて、ポスターを引きはがす僕を見ていないであろうにもこのクラスに犯人がいることが分かったらしい。
「命君ですね!! 何でこんなことしたんですか!?」
結局、須々木担任によるありがたいお言葉を四半刻ほど頂くことになった。
XXX
僕は今、例のショッピングモールに来ていた。靴は革靴のため、サンダルしか他に靴のない今、新しい靴を買うしかない。
出張中の両親に林間学校に行くことを許可してもらい、特別に資金も出してくれるらしい。服はもう買い終わったので残りは靴とリュックだけである。
靴の売り場につき、どんな靴がいいのだろうかと思い物色し始めた。やはり、登山靴みたいな物がいいだろうか。とりあえず、普段でも使えるようなスニーカーを一足購入することに決める。少年少女の家はそこそこ深い森と隣接しているので、もしかしたら必要かもしれない。ブーツのような靴に何故か少しだけ憧れもあるのでこの際買ってみるのもいいだろう。
すると、夢中になって気付かなかったのか、誰かにぶつかった。
「――あ、すいま……あれ、七峰君?」
「えっ、柊さん? 来てたんだ」
「うん、準備にね」
「僕もなんだ。靴がなくてさ」そう言いながら柊さんに持っていたブーツを見せ、「あ、そうだ。これからリュックも買いに行くんだけど一緒にどう?」
「え、いいの? じゃあご一緒しようかな」
「よし、じゃあ会計してこようか」
そう言いながらレジに向かう。どうやら柊さんも買う靴はもう決めていたらしい。
「柊さんはあと何が必要なんだ? 僕はリュックだけだけど」
「うーん、私はリュックと生活必需品かな。歯磨き粉とか」
「ほー」
どうやら柊さんもあと少しらしい。そこでふと思いつく。――これってデートなんじゃね?
デート。男女が日にちを決めて会うこと。また、男女が一緒に遊ぶこと。
デートじゃん! これ買い物デートじゃん!
やはりデートと言えば手をつなぐのが定番である。隣を歩いている柊さんの手をそっと握る。
すると柊さんが顔を真っ赤にしながら、
「え、七峰君!?」
「デートだねぇ」
顔の赤い柊さんにドヤ顔とにやけ顔半々で言い放つと赤かった顔がさらに赤みをまし耳まで真っ赤になった。貞操の逆転しているこの世界だが意外と押しに弱いらしい。うつむき加減になって小さく「でーと……、でーと……」とつぶやいている柊さんを見て少しほんわかする。
この世界、男も女も僕から見て美男美女しかいないのだ。その上男性が少ないこの世の中、女性ばかりなのでとても目の保養になります。はい。柊さんも例にもれず美少女なので、その美少女が顔を赤くしている様は本当に目の保養です。この後、リュックを買い求めに行き、食事と二人でとったのだが、終始柊さんは上の空だった。うーん、あーんでもしてあげればよかったかな。
翌日。
集合場所に行くと、琉斗と柊さんの二人が僕を待っていた。どうやらほかの高校にも募集していたらしくこの高校から行くメンバーは僕達だけらしい。しばらく待っていると、白のワンボックスカーがやってきた。
「すまないね。遅れてしまっようだ。自己紹介は時間が押しているので車で移動しながらでいいだろうか」
そう言いながら降りてきたのは黒い髪を腰まで下ろした女性だった。キリッとした少しつりあがった目つきでパンツスーツの上に白衣を着ていた。どう見ても山向きではない格好だ。どことなく仕事のできる一匹狼のような人だ。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
そう言いながら車体後部の扉を開けてくれたので荷物を積み込んだ。三日分の荷物が比嘉谷小教師の分も含めて四人分もあるのだからそこそこ嵩張った。
どうやら僕が助手席に乗り込むらしい。二人はもうすでに後部座席に乗っかっていた。全員が乗り込むと車が発進する。
「私は東条 響だ。まぁ、東条先生とでも呼んでくれ」
東条先生の自己紹介を受け全員が自己紹介を終える。柊さんの下の名前が楓だったのは知らなかった。こんど下の名前で呼んでみることにしよう。
「ふむ。君が七峰で後ろが右から柊に前後だな。ああ、生徒たちには君たちのことをニックネームで呼ぶことに毎年なっているから、考えておいてくれ。なに、簡単なものでも構わんさ。あとは冊子を渡しておく。日程はこれで確認してくれ」
そう言いながら運転を続ける東条先生。なかなかの腕前だ。
う~む。ニックネームか。まあ、これは簡単なモノでいいだろう。それこそ百合姉の呼び方のようにみー君でもいいし。
ところで百合姉なんだが僕が林間学校のサポーターになると聞いて参加しようとしていたのだが期限切れで出来なかったらしい。哀れ、百合姉。おみあげに今貰った冊子をプレゼントしてやることにしよう。
そんなことを思い出しつつ冊子を開く。どうやら一日目はカレーの食材集めオリエンテーリングをした後にカレー作りをして、午後からは基地づくりをするらしい。夕飯のあとは斑別で自由時間だ。
ふむ、カレーか。小学校のころはご飯を焦がして大変な目にあったきがする。まあ、気を付けていればいいだろう。どうやらすでに高校生がどの斑につくかは決まっているらしい。僕は三班のようだ。
どうやら今年は高校生の人数が少ないらしく、大学生のボランティアグループも参加しているらしい。時間がないと言っていたので、おそらく夜のミーティングで自己紹介でもすることになるだろう。
「そういえばお前ら、なんでこれに参加しようと思ったんだ?」
「それはですね、命が誘ってくれたんですよ。おもしろそうだからって」
「ほう、楽しそう、か。そろそろ着くぞ」
ほほう、とニヒルにニヤリと笑う東条先生。なんか格好いい。
僕はいまだに冬服で登校することを義務づけられていることに不満を感じ、やたら通気性の悪い制服に心中で悪態をつく。と言うかなんでこんなに分厚い生地なんだ。いくら冬服とはいえ中学の冬服より大分厚い。そして暑い。こんなに防御高めたって日本には男を襲う魔物はいないぞ。
ややしまつた、ここは貞操が逆なんでござった。
そんなくだらないことを考えながら校内掲示板からはぎ取ってきたポスターをもはや何時ものメンバーと化している琉斗、柊さんに見せていた。
「「比嘉谷小林間学校サポーター募集?」」
「うん、送り迎えもしてくれるらしいし、三食自由時間つき。それに、先生に聞くところによると少し報酬が出るらしい」
「報酬? 給料でももらえるのか?」
「うんにゃ、向こうの先生がアイスくらいなら奢ってくれるって。学校の資金で」
「それいろいろとまずいんじゃないかな……」
「へー、いつ行くんだ? さすがに平日は無理だぞ。
「ゴールデンウィークの終わりごろの二泊三日だよ。準備ならウィーク始まりを使えばいいし。詳細はこれ見てよ」
「お、そうだな」
ポスターにはこう書かれていた。
比嘉谷小学校林間学校高校生サポーター募集。
・日時 五月三日から五日までの二泊三日。
・場所 森林保全森の会少年少女の家。
・集合場所 西山高校校門前 午前七時集合 ※なお、そこからは小学校教員が送迎します。
・持ち物 二日分の着替え(動きやすい服) 生活用品 汚れてもいい靴。なお、肝試しのイベントがあり、用意はしますが数に限りがあるので可能であれば使えるような衣装、小道具を持ってきてください。
比嘉谷小と僕たちの通う西山高校(通称;西高)はこの小学校とそこそこ近く、学園祭の演劇に招待したり、運動会に招待されたり、これまた体育祭の女子の集団行動、男子のダンスを見学したりとそこそこ仲の良い関係が続いているらしい。
ゆえに、この高校に毎年募集をしているらしい。ボランティア活動をすると内申点つくし。リア充生活を求めて三千里、いや高校に通っている僕だがここは一端の高校生。やはり内申点はほしい。まぁ、純粋にこういうのも楽しみたいという思いもあるが。
「ほんで、どうする? 僕は面白そうだから行くけど」
「命が行くなら俺も行くか。確かに面白そうだ」
「ほうほう、柊さんは?」
「私? 私も行こうかな。七峰君もいくし」
「そっか。申請用の紙ももってるから書いといて。帰り際に出しとくから」
「お、準備いいな」
そう言う琉斗を横目に帰宅の準備を始め、帰り際に昇降口の近くにある職員室によろうと思い机の引き出しの中身を鞄に移し替えていく。
「こらー! 掲示板のポスター剥がしたのだれですかー!」
そう言いながら入ってきたのは担任である須々木先生だ。うげ、ばれた。この先生妙に感が良くて、ポスターを引きはがす僕を見ていないであろうにもこのクラスに犯人がいることが分かったらしい。
「命君ですね!! 何でこんなことしたんですか!?」
結局、須々木担任によるありがたいお言葉を四半刻ほど頂くことになった。
XXX
僕は今、例のショッピングモールに来ていた。靴は革靴のため、サンダルしか他に靴のない今、新しい靴を買うしかない。
出張中の両親に林間学校に行くことを許可してもらい、特別に資金も出してくれるらしい。服はもう買い終わったので残りは靴とリュックだけである。
靴の売り場につき、どんな靴がいいのだろうかと思い物色し始めた。やはり、登山靴みたいな物がいいだろうか。とりあえず、普段でも使えるようなスニーカーを一足購入することに決める。少年少女の家はそこそこ深い森と隣接しているので、もしかしたら必要かもしれない。ブーツのような靴に何故か少しだけ憧れもあるのでこの際買ってみるのもいいだろう。
すると、夢中になって気付かなかったのか、誰かにぶつかった。
「――あ、すいま……あれ、七峰君?」
「えっ、柊さん? 来てたんだ」
「うん、準備にね」
「僕もなんだ。靴がなくてさ」そう言いながら柊さんに持っていたブーツを見せ、「あ、そうだ。これからリュックも買いに行くんだけど一緒にどう?」
「え、いいの? じゃあご一緒しようかな」
「よし、じゃあ会計してこようか」
そう言いながらレジに向かう。どうやら柊さんも買う靴はもう決めていたらしい。
「柊さんはあと何が必要なんだ? 僕はリュックだけだけど」
「うーん、私はリュックと生活必需品かな。歯磨き粉とか」
「ほー」
どうやら柊さんもあと少しらしい。そこでふと思いつく。――これってデートなんじゃね?
デート。男女が日にちを決めて会うこと。また、男女が一緒に遊ぶこと。
デートじゃん! これ買い物デートじゃん!
やはりデートと言えば手をつなぐのが定番である。隣を歩いている柊さんの手をそっと握る。
すると柊さんが顔を真っ赤にしながら、
「え、七峰君!?」
「デートだねぇ」
顔の赤い柊さんにドヤ顔とにやけ顔半々で言い放つと赤かった顔がさらに赤みをまし耳まで真っ赤になった。貞操の逆転しているこの世界だが意外と押しに弱いらしい。うつむき加減になって小さく「でーと……、でーと……」とつぶやいている柊さんを見て少しほんわかする。
この世界、男も女も僕から見て美男美女しかいないのだ。その上男性が少ないこの世の中、女性ばかりなのでとても目の保養になります。はい。柊さんも例にもれず美少女なので、その美少女が顔を赤くしている様は本当に目の保養です。この後、リュックを買い求めに行き、食事と二人でとったのだが、終始柊さんは上の空だった。うーん、あーんでもしてあげればよかったかな。
翌日。
集合場所に行くと、琉斗と柊さんの二人が僕を待っていた。どうやらほかの高校にも募集していたらしくこの高校から行くメンバーは僕達だけらしい。しばらく待っていると、白のワンボックスカーがやってきた。
「すまないね。遅れてしまっようだ。自己紹介は時間が押しているので車で移動しながらでいいだろうか」
そう言いながら降りてきたのは黒い髪を腰まで下ろした女性だった。キリッとした少しつりあがった目つきでパンツスーツの上に白衣を着ていた。どう見ても山向きではない格好だ。どことなく仕事のできる一匹狼のような人だ。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
そう言いながら車体後部の扉を開けてくれたので荷物を積み込んだ。三日分の荷物が比嘉谷小教師の分も含めて四人分もあるのだからそこそこ嵩張った。
どうやら僕が助手席に乗り込むらしい。二人はもうすでに後部座席に乗っかっていた。全員が乗り込むと車が発進する。
「私は東条 響だ。まぁ、東条先生とでも呼んでくれ」
東条先生の自己紹介を受け全員が自己紹介を終える。柊さんの下の名前が楓だったのは知らなかった。こんど下の名前で呼んでみることにしよう。
「ふむ。君が七峰で後ろが右から柊に前後だな。ああ、生徒たちには君たちのことをニックネームで呼ぶことに毎年なっているから、考えておいてくれ。なに、簡単なものでも構わんさ。あとは冊子を渡しておく。日程はこれで確認してくれ」
そう言いながら運転を続ける東条先生。なかなかの腕前だ。
う~む。ニックネームか。まあ、これは簡単なモノでいいだろう。それこそ百合姉の呼び方のようにみー君でもいいし。
ところで百合姉なんだが僕が林間学校のサポーターになると聞いて参加しようとしていたのだが期限切れで出来なかったらしい。哀れ、百合姉。おみあげに今貰った冊子をプレゼントしてやることにしよう。
そんなことを思い出しつつ冊子を開く。どうやら一日目はカレーの食材集めオリエンテーリングをした後にカレー作りをして、午後からは基地づくりをするらしい。夕飯のあとは斑別で自由時間だ。
ふむ、カレーか。小学校のころはご飯を焦がして大変な目にあったきがする。まあ、気を付けていればいいだろう。どうやらすでに高校生がどの斑につくかは決まっているらしい。僕は三班のようだ。
どうやら今年は高校生の人数が少ないらしく、大学生のボランティアグループも参加しているらしい。時間がないと言っていたので、おそらく夜のミーティングで自己紹介でもすることになるだろう。
「そういえばお前ら、なんでこれに参加しようと思ったんだ?」
「それはですね、命が誘ってくれたんですよ。おもしろそうだからって」
「ほう、楽しそう、か。そろそろ着くぞ」
ほほう、とニヒルにニヤリと笑う東条先生。なんか格好いい。
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