回復術師は剣士になりたい!!
回復術師は剣を手に入れた。
僕は今、眼前にある二振りの白銀のレイピア見て、歓喜に打ち震えている。
高純度マナタイトの芯に軽い、頑丈、魔力変換効率よしと三拍子そろったミスリルを合金にし、鍛え上げた業物のレイピアをだきしめてほおずりをしたい気持ちを何とかギリギリで持ちこたえる。
「ユーリット様、鞘です。どうでしょう、この剣は。今までの中での最高傑作ですよ。胸を張って言えます」
「ええ、とても素晴らしい剣です。羽のように軽く、しかし一撃は重く、剃刀のように鋭い」
そう自慢げに胸を張って、美しい銀の装飾が施された鞘を手渡しながら答えるひげ面のドワーフ、ガルム。ここ、王都では名の知れた名工だ。
「しかし、ユーリット様は名の知れた聖魔法の使い手。さらにはほかの属性に精通しておられると耳にします。剣など必要ないのでは?」
「ええ、そうでしょうともそうでしょうとも。ですが僕は、子供のころから剣士になりたかったのです。本来他のブロードソードなどとたいして重さの変わらないレイピアを、軽くしていただいた上にここまで威力を上げて下さるとは。感謝してもしきれません」
「頭をお上げください、アルマト様。久しぶりに血がたぎる仕事でした。この依頼を受けてよかった」
「こちらこそ、貴方に依頼して良かった。朝早く押しかけてしまい申し訳ない。たまに整備をお願いしてもよいでしょうか?」
「もちろんです、ユーリット様」
「ありがとう。では、さっそくギルドの方へ向かうとします」
「ええ、いってらっしゃいませ」
取り付けられた窓から朝日が照らしている扉を開けると、ちりんちりんとベルの音が鳴る。その音を聞きながら、僕は外へと飛び出した。
まずは外で待たせていたメイドに声を掛ける。父が冒険者になりたいといった僕に対して付けた条件の一つ、必ず従者を一人連れていること、だ。
「またせたね、リタ」
「いえ、メイドの務めですので」
恭しく頭を下げる僕の専属メイド、リタ。歳は僕の二つ上の十六歳で、なんやかんやでうちにいる元開拓地所属の騎士だ。その証拠としてメイド服と鎧をたして2で割ったようないでたちに、腰には長剣をぶら下げている。これでも槍の方が得意なのですけれどね、とBランクモンスターを安物の剣で軽々細切れにしながら苦笑していた彼女の顔は、今でも忘れられない。Bランクモンスターなど、一人前の冒険者が束になって命がけの死闘を繰り広げ何とかけが人を出しながら勝てるというレベルなのに。まあそれも、僕の家が特殊なおかげゆえに僕の護衛に彼女が選ばれたわけなのだが。
僕の家、シャニアテ家は代々聖人、聖女を生み出してきた家系だ。それゆえ、というか、聖人、聖女は聖属性、とりわけ回復魔法に関しては生まれながらにして高い適性を持つものが多く、王族貴族の病気を治癒させたり、負傷者だらけの軍隊を一晩で完全に治癒して見せたなど、逸話には事欠かない。ゆえにシャニアテ家は貴族社会の中でも公爵家に位置し、発言力も高い。事実、ギルドへの道の最中、何度も祈るような体制を取られたり、この前行った格安での治療院のお礼に食べ物やら自作した工芸品やらを渡してくる。僕が魔法の収納袋を持っていなかったらどうするつもりなんだ。そんな家計のシャニアテ家次男が僕こと、ユーリット・ウルステンブルク・シャニアテなのだ。と言っても僕には貴族の自覚なんてものはないのだが。
それもそうだ、僕、転生者というか、異世界の国日本、そこで暮らしていた田中と言う人物の一生の記憶がある。なんというか物語を読んでいるような感じで。
「ユーリット様、ギルドにつきましたよ」
自身のこれまでを思い起こしていると、どうやらギルドについてしまったらしい。確かにこれからの冒険に胸躍っているのは確かだが、一つだけ懸念事項がある。
高純度マナタイトの芯に軽い、頑丈、魔力変換効率よしと三拍子そろったミスリルを合金にし、鍛え上げた業物のレイピアをだきしめてほおずりをしたい気持ちを何とかギリギリで持ちこたえる。
「ユーリット様、鞘です。どうでしょう、この剣は。今までの中での最高傑作ですよ。胸を張って言えます」
「ええ、とても素晴らしい剣です。羽のように軽く、しかし一撃は重く、剃刀のように鋭い」
そう自慢げに胸を張って、美しい銀の装飾が施された鞘を手渡しながら答えるひげ面のドワーフ、ガルム。ここ、王都では名の知れた名工だ。
「しかし、ユーリット様は名の知れた聖魔法の使い手。さらにはほかの属性に精通しておられると耳にします。剣など必要ないのでは?」
「ええ、そうでしょうともそうでしょうとも。ですが僕は、子供のころから剣士になりたかったのです。本来他のブロードソードなどとたいして重さの変わらないレイピアを、軽くしていただいた上にここまで威力を上げて下さるとは。感謝してもしきれません」
「頭をお上げください、アルマト様。久しぶりに血がたぎる仕事でした。この依頼を受けてよかった」
「こちらこそ、貴方に依頼して良かった。朝早く押しかけてしまい申し訳ない。たまに整備をお願いしてもよいでしょうか?」
「もちろんです、ユーリット様」
「ありがとう。では、さっそくギルドの方へ向かうとします」
「ええ、いってらっしゃいませ」
取り付けられた窓から朝日が照らしている扉を開けると、ちりんちりんとベルの音が鳴る。その音を聞きながら、僕は外へと飛び出した。
まずは外で待たせていたメイドに声を掛ける。父が冒険者になりたいといった僕に対して付けた条件の一つ、必ず従者を一人連れていること、だ。
「またせたね、リタ」
「いえ、メイドの務めですので」
恭しく頭を下げる僕の専属メイド、リタ。歳は僕の二つ上の十六歳で、なんやかんやでうちにいる元開拓地所属の騎士だ。その証拠としてメイド服と鎧をたして2で割ったようないでたちに、腰には長剣をぶら下げている。これでも槍の方が得意なのですけれどね、とBランクモンスターを安物の剣で軽々細切れにしながら苦笑していた彼女の顔は、今でも忘れられない。Bランクモンスターなど、一人前の冒険者が束になって命がけの死闘を繰り広げ何とかけが人を出しながら勝てるというレベルなのに。まあそれも、僕の家が特殊なおかげゆえに僕の護衛に彼女が選ばれたわけなのだが。
僕の家、シャニアテ家は代々聖人、聖女を生み出してきた家系だ。それゆえ、というか、聖人、聖女は聖属性、とりわけ回復魔法に関しては生まれながらにして高い適性を持つものが多く、王族貴族の病気を治癒させたり、負傷者だらけの軍隊を一晩で完全に治癒して見せたなど、逸話には事欠かない。ゆえにシャニアテ家は貴族社会の中でも公爵家に位置し、発言力も高い。事実、ギルドへの道の最中、何度も祈るような体制を取られたり、この前行った格安での治療院のお礼に食べ物やら自作した工芸品やらを渡してくる。僕が魔法の収納袋を持っていなかったらどうするつもりなんだ。そんな家計のシャニアテ家次男が僕こと、ユーリット・ウルステンブルク・シャニアテなのだ。と言っても僕には貴族の自覚なんてものはないのだが。
それもそうだ、僕、転生者というか、異世界の国日本、そこで暮らしていた田中と言う人物の一生の記憶がある。なんというか物語を読んでいるような感じで。
「ユーリット様、ギルドにつきましたよ」
自身のこれまでを思い起こしていると、どうやらギルドについてしまったらしい。確かにこれからの冒険に胸躍っているのは確かだが、一つだけ懸念事項がある。
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