剣と魔法の輪廻譚

にぃずな

姉なのだから。

シュナside

遡ること、一時間。
部屋に戻ってから、私はベッドの上で身体を休めていた。
久々に強者と戦ったり、色々思い出したりと、少々疲れたからだ。
冥界門扉ハデスゲード】にルチットを閉じ込めたが、安心はしきれない。
それに。
(何だろう、この気持ち悪い感じ)
全身に不快感が渦巻く。
ミフユ達も、全然帰ってこない。
(どうしたんだろう……)
『主、大丈夫か、眉間に皺が寄ってるぞ』
「あぁ、うん。大丈夫だよ」
心配そうなクロトの声に、私は静かに返答する。
原因のわからない不快感をなくすには、それっぽいものを片っ端から潰していくしかない。
私は【冥界門扉】を召喚し、扉の中に入る。


中には、怪我の完治したルチットが座っていた。

ルチットは、にこにことしている。
「おねぇさんは、あたしをどうしたいのぉ?」
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、上目遣いでそう聞いてくる。
しかし、私だってわからない。
質問を無視して問いかける。
「君、暗殺者なんだよね?」
「うん、そうだけど~?」
「他の人と一緒に来たの?」
「うん、アレクとぉ、スピカと一緒に来たよ~」
(あっさり吐いてくれたな、よし)
私は振り替えって、早々に校内に行こうと出口へ向かう。
すると、ルチットが先程の質問をもう一度問い掛けてきた。
「でさぁ、あたしのこと、どうしたいの~?殺そうとした相手を生かすなんて、随分物好きなんだねぇ~」
私はため息をついて、乱暴にこう答えた。
これで良いのか、わからないけど。
「私は人殺ししたくないだけ、私の力は殺すためにあるわけなじゃない。この力は守るために、救うために使うって決めてるの」
「ふ~ん、だから助けたのぉ?」
「そう、それが君の問いへの答え。それ以外にまだ理由が必要なの?」
「べっつにぃ?とっとと行きなよ~?おねぇさん、内心焦ってるんじゃないの?」
「君が止めたんでしょ、はぁ」
「ごめんごめ~ん、じゃ、行ってらっしゃ~い、うちのお姉ちゃん達は強いからねぇ?」
「はいはい、わかった。ありがとね」
雑に返し、扉から出て、【冥界門扉】を閉める。
(意外、出てこようとはしないんだ)
そうは思うものの、特に何とかは無いので、先を急ぐ。
ルチットの言う、強い姉がどれ程のものなのか、検討もつかない。
だけど。
(ミフユとテルトが危ない、それだけはわかる)
焦燥感に襲われながらも、自分の出せる全速力で校内に向かった。


嫌な予感は、見事と言って良いほど的中していた。
全然良くはないが。
(ミフユは鳥と竜の羽生えてるし……辺りは血だらけだし……悲惨すぎる)
見てて心がいたくなる程の惨状である。
でも、目を瞑り、逸らす訳にはいかない。
ミフユの為にテルトが死を覚悟していることは見た瞬間にわかった。
(全く、危なっかしい二人だよ…)
だからこそ、私が剣を握らなきゃ、戦わなきゃ。

騎士として、同級生として、何よりも、家族として。

同じ過ちを繰り返さない為に、自分の為に。
私は、騎士だから。
いつも誰かの、前にいなければいけなかった。
でも、今は違う。
私は姉で、家族だ。
ミフユに劣っているなんて情けない限りだけど、それでもせめて。


_____貴女ミフユの隣に立ちたくて。


「ミフユ、私が隣でも大丈夫?」
そんな私の問い掛けに、ミフユは笑顔で。

「勿論だよ、お姉ちゃん」

そう言って笑ってくれた。
_______その笑顔に、私は応えなきゃ。

私は。



シュナなのだから。

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