剣と魔法の輪廻譚

にぃずな

愚者の神聖

ミフユside
「お姉ちゃんとテルトがいない…」
その代わりに、さっきから嫌な気配がずっと付近である。
(気味悪い……)
現在廊下に出ているが、他の人がこの気配に気付いている様子はない。
「あっ、教室に課題置いてきちゃった…」
自分の教室の前を通るときに、ふと思いだし、誰もいない教室に入る。
「とっとと部屋に戻ろう…」
気配探知に何故か引っ掛からないお姉ちゃんとテルト。
普段なら引っ掛かるのだが。
「……………」
(魔力発生探知………魔力集束……属性火炎……形状歪形…予測魔法…《ファイアボール》…)
背後で急に行われていることが、こちらへ放たれることなど予想外つくが、いちいち避けても面倒である。
《対魔法耐性=全属性オール
(殺気が消せても、魔力流まで消せはしないか)
しかし。
(どうしてだろう、魔力源がわからない……っ)
普通なら、一般の人には【魔力源庫】があり、魔力流に流れを辿ればすぐに《スペルブレイク》が出来るのだが、何故か辿ることが出来ない。
そんなことを考えていたら、火球が飛んできて、爆風と衝撃を放ちながら直撃した。
煙たくなった教室に、女性の声が響く。
「あらら、避けていたら死ななかったのにねぇ」
(暗殺者か……?)
自身、狙われるようなことはしていないので、どうしてこんなことをされるのか、心当たりがないのである。
(今は、考えてる暇はない、か)
追撃が迫ってきている。
ならば。
あえて、驚愕させてやろう。
(片手に魔力を集中させて………当たる直前で……)
本当なら火傷しそうな温度の炎が指先に触れる。
(今…!)
魔力放出オーラバースト
「……ちっ」
相手の舌打ちが聞こえるが、どうでもいいことだ。
どんなときでも、冷静に。
「誰?」
「死んでないのね、貴女。私が考えてたほど楽じゃなかったわ」
「私の質問に応えて」
「はぁ、これだから面倒なのよねぇ、暗殺って」
「だから」
「もっと、準備を整えてからにしたかったわぁ……ホント最悪」
(こいつ……)
わざとなのかは知らないが、凄くムカつく。
こんなんで苛々してては、剣なんて握ってられないが。
「あの」
「さっきから何よ!?うるさいわねぇ!」
「あんたの方がうるさかったよねっ!?」
思わず怒鳴る。
さっきまで殺そうとしてた奴と、暗殺されそうになった奴とは思えない会話である。
「で、何よ?」
「貴女は誰って聞いたの」
「はいはい、名前ね、私の名前はスピカ=ペル=リネットよ」
思いの外すんなり名前を名乗られた為、少し戸惑う。
(聞いたのは私なんだけどさ)
ため息をつき、言葉を続ける。
「何のために私を殺そうとしてるの?」
するとスピカはニタァっと不気味な笑みを浮かべ。
「勿論、依頼と自己快楽の為よ、何かおかしいかしら?」
「……………何とも、暗殺者らしい返答だね」
「だから、とっとと続きをしましょう、私は貴女を殺したくて、仕方がないの、よっ!!」
スピカの手から無詠唱で火球が発射される。
それをバク転して難なく避け、体勢を即座に直す。
「そっちが容赦しないのなら、こっちも殺す気で行くから」
煽るように口角をつり上げ、にやりと笑う。
それを見てなのか、スピカの顔がさらに凶悪に歪む。
そして、少しドスの聞いた声で、吼えた。




「望むところよ、ミフユ=シャルティアァ!!!」

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