剣と魔法の輪廻譚 《Drake-route》

にぃずな

過去との決別

(どうすれば、どうすれば…どうすれば…。)
頭の中で同じ思考を繰り返す。
そんなもので答えが見つかるわけ無いのに。
「どうした?来ないのか?」
裂けんばかりの凶悪な笑みを浮かべている。
手のなかで剣を回しながら。
「ならば、此方から行こうか!」
急接近されて、反応が遅れるも辛うじて防ぐ。
(さっきとは比べものにならないっ…!)
私の方が圧倒的に弱い。絶望的に…弱い。
私は剣を下から上に振り上げながらスキルを行使する。
《ヴェノムスラッシュ》
毒を纏わせ、ミフユに剣を振り下ろす。
「そんなものか?」
その言葉と共に敵は素手で剣を受け止めた。
私は驚愕に目を見開く。
「う…そ…」
「残念ながら現実だ」
この年齢でミフユはどのぐらい鍛えたのだろうか。
強化していても難しいだろう。
転生前ならまだしも、ミフユの今の年齢は7歳だ。
(かなり、手加減されてたんだ…)
こんなんであれば、私なんて即倒せてしまうだろう。
私は、サブマリアをしまった。
《ストレージ》
私は、二本目の愛剣を出した。
黒き破壊の剣。
全てを壊し、奪う。
【破剣 ヘウリウル】
数々の《次元移動ワールドトリップ》を経て多くのを吸った、暗黒魔術騎士の象徴だ。
そして、私の回りに黒い気が起こり、漆黒の鎧を纏う。
(失わないために…)
剣を抜き、疾走する
「ほう、暗黒騎士とはな」
そんな感想を言っているが、気にしている暇なんて無い。
《ツインブースト》
《リードアクセル》
《オールストレンジ》
《ダークスパーダ》
(アイツを倒して…、ミフユを…救う…!)
強化スキルを最大限に、限界まで魔力を使って引き上げる。
一際深い闇が覆う。
「絶対に…助ける」
決意を固め、強く踏み込んだ。
地を砕き、剣が黒い軌道を描く。
鋭い金属音が繰り返し響く。
《フォースブレイド》
《アークフレイン》
《フレアスパーダ》
《ブレイクスパーダ》
《アイスアーチェリー》
《フロススパーダ》
《ゲイルアクセル》
《カースフロスト》
あらゆる魔法もスキルも、何一つ通じない。
「そんなものかっ!暗黒騎士よ!」
「ぐっ、ま、だだぁっ!」
鎧の隙間を狙われ、負傷しても、関係ない。
(私が…!)
血が吹き出そうが、別に構わない。
(絶対にっ…!)
攻撃回数は、百を超え、千をも超えた。
相手に、傷一つつけられない。
私ばかり傷が増え、不利になっていく。
(それでも…、姉として…。家族として…)
「助けるんだぁぁぁ!」
歯を食い縛り、魔法を行使する。
《グラスプ=ソードチェイン》
剣を地面に突き刺し、周辺から鎖が伸びる。
敵を捕らえ、敵の剣を握る手が緩んだ。
「今っ」
『了解した』
ミフユの剣、ラルグレルフが剣の姿から竜の姿へ、巨大化していく。
今、敵の手には武器が無い。
「ほう、古の竜を仲間に、それも剣にしていたとはな」
『主から出ていけ!邪神…フェリオル!』
地響きの起こる程の怒りを含む声で吠えるラルグレルフ。
それを聞いても悪びれる様子の無い敵…フェリオルは嘲笑うように。
「はっ、それはできんな。乗っ取ってしまっているのだから、この娘の体から我を切り離さなければな」
「それなら…《スペルブレイク》」
きっと、封印されてたのだろう。
紫の煙がミフユから出てきて、次第に人の姿になっていく。
「その様な魔法があるとは、我もまだまだのようだ」
と感心している。疲れていないのか…。
そして、フェリオルが出てきたことにより、ミフユが崩れ落ちる。
「ミフユっ…」
ギリギリ、体が動き、ミフユを支える。気を失っているようだ。
『どうする?主の姉は』
「倒す」
『即答か。ならば良いか』
ミフユをラルグレルフに預け、立ち上がる。
(うっ…)
体がふらつくが、踏みとどまる。
でも…。
(怖い…?)
体が、フェリオルを拒絶してる…?
「暗黒騎士ですも、恐怖を感じるのだな」
『本当に、どうする?主』
私の中から、クロトが問いかけてくる。
(怖い…でも……それ、でも…)


黒い何もない空間。
言葉が、響く。
『怖がっても良い。怯えても良い。でも、武器がその手にあるのなら、逃げないで。だって、シュナは私の、騎士でしょう?』
姫の声だ。
『う~ん、戦う気持ちがあるんなら、逃げないよ。負ける確率が高い戦いでも、僅かな確率にかけるよ。私なら』
ミフユの声が聞こえる。
(私って、未熟だな…)
ここまでも、救いの手を差し伸べられてるなんて。
そうだ。私は…。
「弱いよ。でも」
ここには、私以外いない。
ここにはいなくとも、誰かは気付くぐらいの声で。
いつかの誰かに聞こえる声で。喉が裂けるぐらいに。
痛いぐらいに。血が溢れるぐらいに、高らかに。
「戦う!私が…正しいと思うから…。戦うのが、今出来ることだから!」


「戦う」
『そうか、心得た』
黒い気と共にクロトが出てきた。
『我も加勢しよう』
「へぇ…、本当に戦うのだな」
呆れた顔で言ってくる。
「そうだよ、無謀なんだろうけど」
『主の姉よ、我は主を守っているぞ。傷一つつけさせぬ』
「うん、お願い」
私は剣を再び構え、息を吸い、腹に力を入れる。
クロトが先行して走り出す。
『食らえ、《キリング=シャドウ》』
闇が敵を呑み込む。
そこに私が突進する。
《フル=グレイル》
炎の槍を無数に生成し、その槍と共に刺突を開始。
「《スタンスパーダ》」
対象をスタンさせ、動きを僅かながら鈍らせる。
「甘いぞ?《アースハンマー》」
地がせり上がり、私へ迫る。
《ブレイクチェイン》
周辺から鎖を出し、壊す。
(せめて、ミフユが起きるまでは…)
魔力は良いとして、体力と精神力がきつい。
剣は、いくら振っても当たらないけど、全力でずっと振ってる。
振り下ろし、弾き、流し、突き刺す。
この動作をずっと繰り返してる。
その時だった。
「……っ!?」
足元が、ぐらついているのに、気付くのが遅れた。
「やっ…」
倒れかかっている背後から《アースハンマー》が迫る。
(防げない…っ!)
背中に鈍い衝撃が走る。
「この魔法は、鎧通しの特性を持っていてな、鎧は無意味なのだよ」
骨が折れた音がして、口から血を吐き出す。
「がっ…はっ…」
『主っ!?』
ふらつきながらも、立ち上がり、剣を強く握る。
大きく息を吸い、力を入れる。
激痛が走るも、強く踏み込み、走る。
《フォースブレイド》
剣を突きだし、敵の目の前へ。
「ふん」
そう鼻で笑われたかと思えば、下から槍が伸びてくる。
「っ…《アーマーバースト》」
自分の鎧を壊し、周囲へ飛ばす。
その衝撃で槍を壊す。
(軽装になるけど、まだ…平気)
剣で切り裂き、受け流し、弾き、防ぐ。
クロトもずっと果敢に攻めているが、傷一つ与えられない。
(まだ…)
段々、体が、動かなくなる。
視界が霞む。
『……じ!…主!』
クロトに呼ばれた。すると目の前に炎の矢が迫っていた。
(も……、む…り…)
目を瞑る。
最初だったら防げたかもしれない。
でも、もう、体力が尽きた。
……………でも、炎の矢が刺さることも、焼かれることも無かった。
「……え…?」
目を開ける。
最初は炎の赤が広がっていて、真ん中に黒い影が見える。
ぼやけた視界が影をしっかり捉えた。
「ごめんね、お姉ちゃん。遅くなって」
「ちっ、娘か…」
ミフユが目の前に立っていた。
白銅色の剣ラルグレルフが、炎で光る。
フェリオルに剣を向けている。
「また、邪魔をするか!娘!…まぁ、倒せないだろうが」
「……そうだね、倒せないかもね。あの時のままなら、ね」
そう言い、こちらへ振り返るミフユ。
「お姉ちゃん、休んでて。これは、私の問題だから、終止符は私が打つ」
そう言って、不敵に笑った。

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