Regulus

嘉禄(かろく)

The blue emperor



「ねー、慶ってさ。
一線越えてから雰囲気変わったよね」
「…は?」


ある日の夜、新曲の収録後に入ったバーでふと由真が俺に言ってきた。
俺には唐突過ぎてよく分からなかったけど、遥が頷く。


「確かに、前は曲やってる時しかそんなんじゃなかったのにな。
今やいつでも食ってやるオーラ出てる」
「なんだよ食ってやるオーラって」


俺が問いかけると、遥はニヤニヤしながらこっちを見てくる。
由真の言葉を借りるなら、気色悪い。


「まあ、なんだ?
あっちの意味で吹っ切れたからか、王者の風格っつーの?が増したよな」
「まともな方の意味で言うならそうだね。
より強くなった、ライオンの王様みたいな」
「なんだよそれ…」


ライオンの王様はあまり嬉しくない。
もっと良い言い方があるだろう、と言うか論点がズレている。
二人にまんまと引っ張られた。


「もう夜はガンガンやってんでしょ?」
「…お前らの予測はなんなんだ、当たり過ぎてエスパーか?」
「わかりやすいからな?
ライオンの王様が気に入らないなら、青の皇帝とかどうよ?
青は慶のカラーだし」
「あ、それカッコイイ。
それでいこう、慶の二つ名はこれから青の皇帝ね」
「…意味がわからなすぎる」


とてつもなくこの場に志輝がいて欲しいような、いて欲しくないような複雑な気持ちになった。
いてくれたら少しは解説してくれるだろうし…でもいたら確実に話の内容的に赤面してる。
あの顔はあまり他のやつには見せたくない…まあ、こいつらには今更か…。

結局その後も振り回されて、解散する頃には俺はヘトヘトになったのだった─


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