私が強くて何が悪い 前

Ramilen

ギルドへ行こう

 この日は忙しかった。まず街へ行って街の情報を聞いた。この街はイカルイトという街らしく地方の交易の中心となっている。そのため地球では見られなかった食べ物や多種多様な民族が行き交っていた。
「すごい街だね。しかもいっぱい人がいてクラクラするよ。」
 ところどころに馬車のようなものはあるが車のようなものは見当たらない。こんなところにキャンピングカーで入ろうとしていたのかと思うと冷や汗が出る。魔法の書を読む限りガソリンは魔法で作れるようだ。次にギルドへ行った。そこにはいかにもな風貌の男や女達が酒を飲み交わしていた。張り紙を見ようと看板の方へ行くだけでパーティを組まないかと声をかけられる。そんな誘いをゆきが断りつつ張り紙を見るとそこにはたくさんのクエストが貼ってあった。レベルも書いてあるので初心者にもやさしい。
「この討伐クエストはどうかな?」
「ゆきがいいなら私はいいよ。どんな悪路でも私は走っていくから!」
「じゃあこれにしよう。」
 それを剥がし受付に持っていくとどうやらクエストを受けるにはギルドに登録しなければならないようだ。名前と性別、 年齢だけでいいようだが、そういえばゆきは何歳なんだろうと思いのぞいて見てみると
「19…十九歳!? ゆきは私よりも年上だったの!?」
「ごめん、なぎさの年を聞いてなかったからわからないけど今年大学二年だったんだよ。」
 あまりに見た目と歳のギャップが大きくびっくりしたが、たまにある大人っぽさはそこから来ているのだろうかとも思った。
「私まだ今年大学に入ったばっかりだからゆきは先輩だね。それでもゆきは私のぬいぐるみだけどねー」
 頭をすっぽり覆いぎゅうっと抱きしめた。瞬間ゆきの髪からとてもいい匂いがしてさらに強く抱きしめる。
「苦しいよなぎさ。早く書いてしまってはじめての討伐に行こう。」
 なぎさは気合十分にカードを書いていく。このままでは私が置いていかれてしまうとばかりに私も気合を入れて書いた。
 カードも書き終わり、ギルドへの登録が終わったところで受付嬢からギルドに関しての説明を受けた。ギルドにもランクというものがあり、そのランクによって受けられるものが変わるようだ。もちろん私たちはランクが1なのでまだ受けられるクエストも少ない。さらに私たちの装備がちゃんとなっていないと見受けられたようで、装備などを扱う店にも案内された。
 そこにはたくさんの防具や武器が並んでいた。剣や盾などがあり魔法道具などもあった。
「うわぁ。いっぱいあるね。」
「これは本物の魔法石…こっちは本物の…」
 ゆきは目をこれでもかと輝かせ店のあちこちを見回っていた。
「君たち初心者の方かい?」
 突然声をかけられ、びっくりしつつハイと頷く。
「それならこっちの軽くて丈夫なのがいいよ。ランクが低いうちは各ステータスも低いから、上級者向けを使おうと思ったら話にならなかったりするんだよ。試しに持ってみるかい?」
 と言われ恐る恐る持ってみるが特に重いという感じはない。あれ、と思いつつこれは本当に上級者向けなのだろうかと聞いてみようと…
「お嬢ちゃん本当に初めてかい?こんなの持ち上げられるはずないんだけど、おじさんの間違いだったかな?えっと、次はこれを振って見てくれるかな?」
 と言われ如何にもな剣を持たされる。外に案内され、試す用の広場に案内される。
「魔力を剣に流し込みながら振ってくれればいいよ。成功すれば火の魔法が発動するはずだから。」
「えっと魔力の流し方がわからないんですけど…」
「手に力を入れると魔力は流れるよ。人っていうのは魔力で動いているんだよ。」
 またあの本には書いていなかったことがわかった。とはいえ言う通りにやってみる。手に力を入れ振りかぶる。これが魔力の流れる感触か、と思いつつ振った。瞬間剣が炎に包まれ持ち手を含め、燃え上がる。一瞬熱いと思ったが気のせいで、全く熱さを感じない。これで成功かと思い後を振り向くと店員の人は顎を限界まで下に落としていた。周りには人が集まりみんなそれぞれに歓声を上げている。
「あ、あれ?みんなどうしたの?」


 その日はあの店でいろんなテストをしてみた。どうやら全属性使えるようで魔力、初期ステータス共に最強であるようだった。その噂はイカルイト中に広がりギルドで話しかけられることもなくなった。私たちは武器や防具を揃え、クエストをこなしていく準備を進めていた。
 今日はもう暗くなってしまいクエストは明日だなと決め晩御飯の用意をした。食材は今日市場で買ってきたたくさんの見たことのない食材。自分はずっと一人で暮らしていたので料理はできる方だが全てが未知の食材なのでうまくできるかはわからない。ゆきと協力しつつ料理を作っていく。次第に香ばしい匂いが車中に立ち込めてくる。そして完成したそれらはとても美味しそうで食欲をそそる。
 いただきます、の合図と共に二人はご飯を書き込む。今日はとても働いたのですごくお腹が空いていた。
 夕食後車の上のテラスへ登り星空を見ていた。まだここへ来て2日目だがいろいろなことがわかった。とはいえまだわからないことばかりである。いつまで続くのだろうか。どうなってしまうのだろうか。そんなことを不安に思っているとゆきが私の左手をぎゅっと握って来た。
「星が…綺麗だ。」
 いきなりそんなことを言ってきてふと夜空をみる。そこにはたくさんの星が浮かびキラキラと光っている。地球では見られないほどの星たちがライトがいらないほどの光量で光っている。私はいつもネガティブな方へ思考が流れてしまう。しかしここはもう地球ではない。ならばここを楽しまなくてはどうしたものか。まだ自分が何をできるのかわからない。なのに自分が役に立っているのか、そんなことを考えても意味がないことだ。明日はクエストへ行く。そこで自分が何ができるのか確かめよう、そう決意した。
「うん、綺麗だね。」

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