メンタリスト

むらもんた

プロローグ・メンタリスト松岡拓海

 読者の皆様こんにちは。この小説の主人公の松岡拓海まつおかたくみです。
 まず始めに、皆様に簡単な心理テストをしてもらおうと思います。
 次の文章を頭に想像してみてください。




 辺りには真っ白な雪景色が広がっています。ビルなどの建物もなくひらけている場所です。
 そこに白いコートを着た女性が、1人立っています。
 髪の長さは肩より少し長いくらいで、肌も白い可愛い女性です。
 その女性は色の付いていないマフラーを巻いていました。


 では、そのマフラーに色を塗ってみてください。
 *直感で最初に浮かんだ色をお塗りください。












































【赤】
 赤色のマフラーにしてしまったあなたは、私、松岡拓海に既にマインドコントロールをされていました。多分8割くらいの方は、赤色のマフラーにしてしまったのではないでしょうか。
 ちなみに赤以外の色を想像したあなた。あなたが想像した色は【白色】ではありませんでしたか? 【白色】のマフラーにした方も実はあと一歩のところまで誘導されています。


 この様に人間の思考や行動は、少ない文章だけでも誘導する事が出来ます。
 この小説では些細な相手の言動や仕草、または個人情報から瞬時に色々な事を判断し、言葉巧みに相手の感情をコントロールしながら主人公である私、松岡拓海が物語を進めていきます。


 赤と想像した人もそうでなかった人も、是非人の感情が変わっていく瞬間をお楽しみください。
 物語の後半に今回どうやって赤色に誘導したのかを解説します。そちらもお楽しみに、最後まで私の世界に付き合ってください。
 それでは物語が幕を開けます。










 ーーカランカランーー
 都内の路地裏にあるバー【luce】の扉を開いた。luceというのはイタリア語で『光』という意味らしい。
 以前この店のマスターに聞いたところ、そう説明してくれたのを記憶している。


 店内は少し薄暗く、カウンター席が4つ、奥に薄いカーテンで仕切られているテーブル席が2つある。店内には昭和60年代に流行ったであろう洋楽が微かに流れている。
 昔ながらのレトロな雰囲気が漂うこの店が、俺はお気に入りだ。


「うーっす。マスターいつものやつ頂戴」


 そう俺が言うと、サングラスをかけた長身の男が「はいよ」と低い声で返事をした。


 でてきたのはカクテル風のオレンジジュース。酔っ払うと自分をコントロールする事が難しいので、俺はお酒を飲まないようにしている。
 バーなのになぜ? と思うかもしれないが、仕事柄自分をコントロール出来ないと困るからだ。
 俺の名前は松岡拓海。身長は176センチで体重は62キロ。少し痩せ気味の体型で、顔はイケメンという程ではないが薄めの塩顔だ。
 そんな一見どこにでもいそうな俺だが、1つだけ人とは違うところがある。それは俺が【メンタリスト】だという事だ。


 先程説明した、この薄めの顔だがメンタリストをする上では非常に都合が良かった。顔の特徴が少ない分、様々な表情や感情が表現しやすいからである。また色々な人格に擬態する、カメレオン効果を発揮しやすいのも都合が良い理由の一つだ。


 さてメンタリストとは? と疑問を感じる人もいると思うので簡単に説明をしよう。
 メンタリストとは人々の容姿や行動、発言などを注意深く観察しながら、そこで得られる様々な情報を瞬時に分析し、その情報に基づいて自らの言動などで相手を意のままに操る人達のことを言う。
 例えば、巧妙な嘘で人を騙す『詐欺師』や人の心の隙間に漬け込む『宗教家』、『占い師』などもメンタリストと呼ぶことができるし、精神治療をする『セラピスト 』や企業における『敏腕営業マン』などもメンタリストとしての条件を十分満たしていると言える。
 身につけるスキルは3つ
 1.人の心を読む「リーディングスキル」
 2.人を思い通りに動かす「コントロールスキル」
 3.自分の状態を整える「マネジメントスキル」
 これらが必要になる。となると必然的にお酒はあまり飲めないのだ。

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