俺と親父の異世界物語【転生そして性転】

むらもんた

告白

 それは突然の告白だった。


「拓也。父さんな……イなんだ」


 高速道路を走る騒音のせいか、はたまた俺の脳が感覚的に拒絶したせいなのか、いずれにせよ親父の言葉は上手く俺には届かなかった。


「ん? ごめん。聞き取れなかった」


 嫌な予感はしていたが、胸のもやもやを取り払う為、俺はもう一度聞き直した。


 今度はしっかり伝わるよう、さっきより大きな声で親父が言う。


「えっとな……父さんゲイなんだ」


 嫌な予感は的中した。
 胸のもやもやは取れたものの、物凄い衝撃と共に、すぐさま新たなもやもやが生まれた。


「ゲ、ゲイって、あの?」


「あぁ。いわゆる男が好きっていう、あのゲイだ」


 動揺する自分の心を必死に落ち着かせ、よーく考えてみる。


 ちょっと待てよ。いきなりゲイって言われても……。
 今までそんな雰囲気一度もだしてなかっただろ。趣味はジムで体を鍛える事だし[その割には線が細い]、男の象徴である銭湯だって週5で通うほどだ!
 それに年末には紅白やお笑い番組ではなく、格闘技の番組を見ていつも盛り上がったじゃないか…………!? ん? んん!? 待てよ。これmaybeゲイじゃなくて、must beゲイじゃねぇか!


 必死に考えて一つの疑問に至った。


「男が好きなのになんで母さんと結婚出来たんだよ」


 その疑問は人間が呼吸をするように、鳥が空を飛ぶように、ち○こが勃起するように、極々自然なものだった。


「それはな、母さんメチャクチャ美人だっただろ。基本は男が好きなんだけど、美しいものは女でも性的対象になるんだよ。その点を挙げればバイセクシュアルと言えるのかな。ハハハッ! まぁ後は世間体だな」


 親父は、かけていた眼鏡を人差し指でクイっと上げ、少し笑っていた。
 助手席から見たその笑顔は完全に常軌を逸した顔つきだった。
 そして、バーコードヘアーの禿げた頭が、その不気味さを一層際立たせていた。




 ともあれ親父のいう通り母さんはとびきりの美人で、身長は170センチもあり、スタイルも抜群だった。
 それに比べ親父は目こそパッチリとした二重だったが、身長は152センチしかなく、本当に本当に冴えない禿げ男だった。
 参観日なんか特に酷かった。クラスメイトが親父を見て、


「おい!スターウォースのマスターヨー○がいるぞ!」
「いやいやロード・オブザ・リンクのゴラ○だろ!」
「いんや、あれ完全にE・○だから!」


 生き地獄とはこの事を言うのだろう。
 何故母さんは親父と結婚したのだろうか? 小さい頃からそれが最大の謎だった。


 まぁ運がいい事に俺は完全に母親似だ。自分で言うのもなんだが、相当なイケメンで運動だって出来る。普通なら彼女もバンバン出来て、やりまくっていてもおかしくはない……が、俺はまだ童貞だった。
 それどころか付き合ったことすらない……。
 まぁその話はこのくらいでやめておこう。長くなるし悲しくなる。
 そして話を戻そう。


「ちょっと待てよ。笑えねぇよ! じゃあ母さんが家を出て行ったのも親父のゲイが原因なのか?」


 湧き上がる色々な疑問の中で最も気になる質問を投げつけた。


「そうだよ。あれはお前が8歳の頃だったかな。部屋に隠しておいたゲイのAVが母さんにバレてな。バレた瞬間に無理して一緒にいるのがバカらしくなってな……そこから離婚まではあっという間だったよ」と素っ気なく親父は言った。


 いつもいつも俺に何か起きる時は、親父の一言からだ。
 10年前のあの日だって……。




 ーー10年前ーー


「拓也。今日から父さんと暮らすぞ。拓也には悪いんだが、母さんとは離婚する事になってな……」


 前日、親父に泣きすがりながら「別れたくない」と叫ぶ母の姿を俺はリビングの外から見ていた。
 どんなに母が訴えても、親父の意思は固く、実にあっさりと母が出て行くことに決まった。
 幼いながらにも、美人でモデルをやっていた母が浮気でもして、それが原因なんだと思っていた。


「ごめんね拓ちゃん。お母さん拓ちゃんの事愛してるから。ずっとずっと愛してるから……」


 それが母の最後の言葉だった。




 ーー現在ーー


 昔の事を思い出したら、急に腹が立ってきた。
 この際ゲイはどうでもいい! いや、よくはないが。
 それよりもその事をあたかも『ゲイがバレたら一緒に居れないのは当然でしょ。離婚なんてよくある話』みたいに話す態度が許せなかった。


「ふざけんなよ! ずっとずっと男手一つでここまで育ててくれて感謝してたのに。母さんがいなくなったのは親父のせいだったのかよ……」


 少しの沈黙を挟み、再び俺は口を開いた。


「今すぐ引き返せよ。こんな状態で熱海になんて行けるかよ! 大体こんな話して俺にどうしろっていうんだよ」


「お前も四月からは東京で一人暮らしだろ。自立する1人の大人として、父さんを受け止めて欲しかったんだ。これ以上お前に嘘はつきたくなかったから……。
 そして出来たら一緒に風呂でも入って、背中を流してもらおうかな♪ ってな」


「アホか! こんな状態で一緒に風呂なんて入るわけねぇだろ」


 ニヤッとふざけた最後の親父の発言に、間髪入れずそう言い返し、怒りを込めた渾身のツッコミを親父のバーコード頭めがけて叩き込んだ。




 ーー次の瞬間ーー


 バーンと凄い音と共に衝撃が体に伝わった。
 正常に作動したエアバッグの隙間からメチャクチャに割れたフロントガラスと血塗れになった親父の姿が見えた。


 俺が思いっきり、どついたせいかなぁ……でも親父が悪いんだぞ……。
 そんな事を思いながら少しずつ意識が遠のいていく。


「大丈夫ですか? 大丈夫ですか? 今病院に向かってますからね」と救急隊員が話しかけてきたのを最後に、俺は完全に意識を失った……。








 ーー2週間前ーー


 事の始まりはこの日にあった。


 高校を卒業して、東京に上京するまでの束の間の春休み。 
 暖かな太陽の光とチュンチュンチュンチ○コチュンチュンチュンチュンチュンチュンという小鳥のさえずりを聞いて、気持ちよく目を覚ました……いや、チュンが多いんじゃ!! こんなにさえずかれたら、気持ちよくは起きれーん!! しかもあかん鳴き声あったやろ!!!


 外見や内面でツッコミどころ満載の親父と2人で生活していたせいか、何かとツッコミを入れるのが後天的に養われた俺の性格だった。
 そして朝勃ちフルバーストは先天的に備わっていた俺の特徴だった。




 股間に大きなテントを設営しながら、リビングに向かうとテーブルには目玉焼きと1通の手紙が置いてあった。
 どうやら出社した親父が置いていったものだろう。 
 10年前母さんが出て行ってから、この家に俺と親父しか住んでいないのだから当然親父が書いたとしか考えられない。


【心のキャッチボール】
 と題された封筒を開け、本文を読んだ。


 拓也へ
 高校卒業、そして大学合格おめでとう。母さんと離婚してからお前には辛い思いを沢山させてしまった。本当にすまなかった。
 俺なりに色々やれる事はやってきたつもりだが、やはり母親の存在は大きいよな……。
 拓也が高校に入学したあたりから中々話す機会も少なくなってしまったので、今回は手紙を書いてみた。
 父さんどうしてもお前に伝えたい事があってな。1人の大人として話がしたい。そう思って2週間後に家族水入らずの熱海旅行に行こう。温かい温泉に浸かって、美味い料理を食べて、色々な話をしよう。というわけで2週間後、予定を空けておきなさい。     
 父より




 親父……。
 ほんと馬鹿だなぁ。親父が男手一つで一生懸命育ててくれた事、分かってるっつーの! まぁたまには親父と旅行も悪くないかな。背中でも流してやるか! なんて事を思い、何も知らないこの時の俺はフッと笑った。








 そして熱海に向かう途中、あの事故は起きた……。



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