『理外の無才者』〜不利すぎる状況でおれは強くなる〜

アルエスくん@DeusVtuber

勇者編 第十話 アナザーマイン

勇者編 第十話 アナザーマイン
 
 
 
「ここは……」
 
 俺が泊まってる部屋だ。
 
「起きたか! 心配したぞ。」
 
「なんでいるんですかね。騎士団長さん。」
 
「私の名前はヴァルキリーだ。あとその気持ち悪い敬語も使わなくていい。」
 
 き、気持ち悪いだって!ひどいこと言うなぁ。
 
「わかったよ、ヴァルキリーさん。」
 
「さん付けもいらん!」
 
「はぁ、ヴァルキリー、これでいいか?」
 
「うむ、一日起きなかったときはどうしようかと思ったぞ、バトルで本気を出しすぎてしまったからな。」
 
「容赦なさすぎだろ。倒れてる相手にスキルとか!」
 
「奥の手を隠していたら面倒だからな。早めに気絶させなければとその時は思っていたんだよ。では、帰るぞ、安静にしろよ!」
 
 そう言って、さっそうと帰ってしまった。
 
ーーーーーーーーーー
 
「さて、そこに隠れてるやつ、出てこいよ!」
 
 おれは魂を感知できるようになったんだ。なにもいないように見えても、バレバレだぜ?
 
「へえ、バレてたのかい。やるねえ?」
 
 その言葉が聞こえて、なにもいないはずのベットの前に白い、女?が出てきた。
 
「あ、ちなみに言っておくけど、私はこんな美しい大人っぽい女性みたいな外見してるけど、男だから。いわゆる男の娘ってやつだね。」
 
 外見は白い長髪に金の双眼、白い学ランにスカート、黒いパーカーを来ていた。
 
「お前は誰だ?どうして隠れていた?なぜここにいる?てか、その学ランは白いけど、日本のやつだろ。どうして、異世界人が持っている?」
 
「まあまあ、そんなに一気に聞かれても、一つずつ答えていこうじゃないか!」
 
 そう言って、備え付けの机から椅子を引き出して座り、
 
「私はブラックカーテン。変な名前だけど大切な名前さ。勝手に『理外の無才者』の眷属にされた序列一位で、情報屋をやっている記憶喪失さ。記憶を取り戻すために行動している。ほとんど暇つぶしだけどね。」
 
「ふーん。」
 
「この学ランは大切な人が来ていた服を真似しただけさ。文句を言われても答えられないね。」
 
「それで?なんでここにいた?」
 
「偶然と必然が紡ぎ出した運命さ。」
 
「はぁ?」
 
 なにを言ってるんだこいつは?
 
「今君が私を発見したことで、新たなる世界の分岐へと踏み出した。隠れていたのは、ここに私がいたが、君が運ばれてきたから、隠蔽を使っただけさ。」
 
「なんでここにいたかまったくわからなかったんだけど?」
 
「私の記憶力と君の感知力、そして、私の誓いが生み出した、偶然にして、必然なのかもしれないさ。実際見つけられるとは思わなかった。」
 
「それで、何が目的だ?」
 
「その前に君の名前を教えてくれるかい?いや、名前を思い出せないんだったな。」
 
「待て、なんで名前のことを知っている?」
 
「私が知っていたから。」
 
 何言ってんのか全然わからん。それにおれの名前かぁ、そうだなぁ。
 
「おれのことは、ラインハルトと読んでくれよ。ラインハルト・ベルツリーだ。」
 
「なるほど、昔の中二病の君が、考え出したコードネームだね?」
 
「なんで知ってんだ!記憶でものぞき見してんのか?誰にも言ったことないのに……。」
 
 そういや、ベルツリーって自分の名前を英語表記にしたんだっけ。てことは、おれの名字は『鈴木』か。ベルツリーのほうがかっこいいな。そのままにしよ。
 
「それよりも、君はこの国の騎士団長と戦って、まる一日寝ていたんだ。おなかがすいてるだろうから、食べてくればどうだい?私はもう帰るし。」
 
「最後に一つだけ聞いていいか。」
 
「なんだい?」
 
「なんで、おれとお前の『声が同じ』なんだ?」 
 
「それは……君の声を参照し、真似して喋っているからさ。」
 
「そうかい、魂を見る限り、おれに勝ち目はなさそうだ。素直に使用人たちのところで食べてくるよ。じゃあな!」
 
 あいつの魂はびっくりするほど強く、そして、多かった。ぜってえ勝てねえだろ。味方とは限らないし、考えるのを放棄しよ。
 
 そうして、ラインハルトと名前を変えたものは出ていった。
 
 
 
『君がなんど死に、なんど時間が巻き戻り、なんど忘れられても……僕が……絶対に君を救う!そう、誓ったんだ……』
 ブラックカーテンと名乗った男の娘はそう呟き、消えていった。
 
 
 

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