適当に強そうなスキルを選んで転生したけれど、8000年も生きる間にすっかり忘れてしまったので無自覚チートでスローライフを送ります

御丹斬リ丸

第14話 総書記の切り札を超えたい



顔面偏差値20レベルの変顔になりながら飛ぶんでいる。
テポドンより速いスピードで空へ飛び出した影響で鼻が風圧で潰れた。
ほかに見ている人がいたならば、きっと"世界で最初で最後、生身で空を飛んだ人"と面白おかしく歴史の教科書に書かれるだろう。
バライティ番組でお笑い芸人を絶叫アトラクションに無理矢理乗せ、風圧で歪む顔を楽しむという悪趣味な番組を見るがそんなの比ではないレベルだ。
あ、これで多分耐性ついたから機会があれば芸人にでもなろうかなぁ。
紐がついた程度のスカイダイビングでは怖くないだろうけど、


「う、うわあああああぁぁあた、助けてぇ!死ぬぅ死ぬぅ!ぁぁあぁぁあああ。ひ、ひいあぁぁぁぁ…」


うん…満点や。
これならリアクション芸人トップの座を狙えるぞ!
ああ、それこそ機会があればリアクション芸人にこれやらせたいな。
爆速で上空に飛び上がって紐なして地面に落ちるっていうアトラクションね。
名付けるとしたら……


発狂アトラクション ドド○パ。
あれ、いい名前なのに伏せ字が……?
みるみるうちに地面から離れていく。
肌が風圧と気圧変化で真っ赤っかだ。
これ、自己修復能力がなければ『汚ねぇ花火だ』の花火になっているところだったな。


踏み込んで飛んだ瞬間から耳が聞こえてない。
多分気圧の急激な変化で破けたんだと思う。一体俺はどうなってしまったのか。
こんな身体能力は最初はなかった筈だ。
こんなのあったらナイーブな気持ちになりながら岩石砂漠を歩かなくても良かった筈だ。
詰まる所は俺の能力ではないということだ。
俺が死なないことをいいことに思いっきり空へ投げたとかそんな所だろう。
ひどい。
酷すぎる……。
なんなんだこの仕打ちは。
こんなにも神が介入してくる異世界転生はあるのだろうか?
もはや自分の状況は転生なのか転移なのかわからないけど。
だって生前の姿とか名前とか何にも覚えていないんだから。


ああ、ラーメン美味しかった。


とかは思い出せるのに!
このくだりは走馬灯。
ああ、楽しかったな。
いや、全然楽しくなかったわ。
くそ、こんなところで死ねねぇ。
今までで一番大きな声を出してるかも。


ああああああああああああああああああああ


うああぁぁあ


こんなに怖くて声が出てるのに俺の頭はひどく冷静だった。


「声が出ているうちは余裕があるらしいぜ?」
と自分に冗談を吐ける程に。
でもさ、これはいくらなんでも飛びすぎだって!
人間やめただけじゃ済まなかった!


弾丸のように高速で打ち出された俺はこの世界に来て落下した地点よりはるかに高い。
あの時も恐怖だったがこれは落下する時のことを考えると地獄だ。
生き地獄。
最強になるためにテポドンになるとか言ってた男の話を聞いたかとがあったがありとあらゆるミサイルより高速で飛んでいる俺は果たして最強になれたであろうか。
最強、なれた。
誰もいない。1位しかなれない。そんな最強の座。
なんて虚しいものだろうか。


いつのまにか雲の上まで突き抜けていた。
飛行機でもないのに飛行機雲を出しながら宇宙へ向けて飛んでいく。
あ、そういえば、踏み込みが強すぎて足が爆発したみたいだったがすぐに再生していた。
早すぎて体が引きちぎれそうになったがすぐに再生し治っていく。
赤い霧を身体から噴出して線を作っていく姿はシュールを通り越してホラー。
今日の天気は晴れ時々、血の雨。
殺人犯に間違われたくなければ外出は控えましょう。
空軍の戦闘機パレードで色のついた煙を出しながら飛ぶ姿を見たがまさにそれ。
赤い飛行機雲を出しながら飛ぶ俺。赤の材料が問題なのだが。
すごいな。
体の20倍くらいの血が流れ出しているはずなのにまだ出るよ。すっげー。
輸血しに行ったらトマトジュース沢山貰えそうだな。
でもよくよく考えると誰もいなくてよかったかも。
もし人のいる世界に来ていたら永久輸血装置がわりにされて永久に血を絞り取られていたかもしれないし。






あ、幻想的…


雲を円形に吹き飛ばしながら飛び上がった俺の目の前には雲海が広がっていた。
日の光に照らされてこの世界独特の色に雲が染まっている。
ああ、美し……


といいかけて身体から噴き出していたはずの赤い霧が消えている
あれ?
凄まじいスピードで空へと飛んでいた俺の身体は急に重力を取り戻したかのように落下を始めていた。
再生した鼓膜が再び破れて何も聞こえなくなった。


「……かひゅ…っ!?」
おおおおおお!
喉もやられたようだ。
血が詰まって呼吸もできない…
心のなかでは絶叫。
口からは息と血が出るばかり。



ああああ絶景ポイントさようーなーらー!


落ちる落ちる落ちるぅー


まだ余裕です。
ちょっとふざけられるくらいに。
今の心境をどうぞとインタビューされたらこう答えてやる


『ひゃっほぉー!
2回目は恐怖より楽しさが勝ったぞ!


生身でスカイダイビングだぜ!
空気抵抗を受けているのかと思うほど高速で落下中だぜ!
まるで戦闘機!
ビューン。
もう目がみえねぇぇ!
はっはぁー!風圧がぱねぇ!最高のアトラクションだぜぇ!』


ってな。
まぁこんなところにインタビューに来ている奴は一緒に落下する運命になるが。
ヘリで来ようものなら俺はプロペラで微塵切りにされているかもしれないな。


何も見えねぇ。
何も聞こえねぇ。
何も言えねぇ。
何も気持ちよくねぇのによ!!
ははっ、再生してるはずなのに失明しまくってんぜ。
しかも身体が凍ってるーー。
カッチカチやで。
あ、もしかしてやばいかな。


早すぎて流石に再生しないとかないよね。
凍ったせいでさらに早くなってる気もしないでもない。
そして五感がやられているせいで何もわからない恐怖。
ああー。高速道路なら速度オーバーだ。
ネズミ捕りでも体に後でつけておくか。


もあもあと頭の中に人影が浮かび上がった。ああこれが走馬灯か。


『そんな速度で大丈夫か?』


なっ、くそこの文言は、選択肢がない死亡ルートっ!回避不能のリスポーン前提ルートではないか。
くそ、なんてことだ!
しかも落下まで時間がない。
なるたることだ……。



「大丈夫だ!問題ないっ!」







ーーーーーーーボォヴオォォォオン!!!






○○





がらがらがら。
石が崩れていく。
ーードンっ!
物凄い音を立てて石が爆弾のように吹き飛んだ。
空中で粉々になり小石が降り注いだ。


そこから黒い影が這い出してきた。


「ふう、酷い目にあったぜ」
未来からやってきたサイボーグ顔負けに身体から煙を出して現れたのは男。
空飛ぶ石も持たず空から降ってきたクレイジーボーイだ。
まぁ俺のことだ。


戦闘機みたいな速度は出たけど飛べなかったし、鳥人間コンテストでもこれは飛んだに入れてくれないだろう。
だってこれ、跳んだだもん。飛ぶじゃなくて跳ぶぅ!ジャンプ!ジャンピングー!ぐぐぐぐー!かーぁ!!



破滅の呪文とか言って無いのに破壊された洞窟にただの石像だった癖に古代兵器のように硬い岩に馬鹿でかい風穴を開けた人型兵器。
一番おかしいのは俺かもしれないけど。


着地点のピラミッドを粉々に粉砕した俺は唖然とした。余波であたり一帯の遺跡群が更地になっていたからだ。
いやさ、たしかに少しボロくなってた方が雰囲気が出るなとか思ったけどこれは酷い。
目の再生が間に合って着地する瞬間に身体から白い光がぶぁぁーって出てたけどなんか凄まじいエネルギー波だったとか。
そんな機能聞いてません。
消し炭だよ。何もかも。
リスポーンした時のエフェクトかな?
酷いな。


そんな機能つけて貰って……。いやつけたな。あいつ、あの黒い笑みはこれだったか。
もしや、他にもつけていたりしないよな?
目からビームとか。


「目ん玉ビーム!!」



出ないな。
ないのか?


「えー、手からなんか出ろっ……


ーーびちゃびちゃ


うわっうわ、なんかでた」



マジで出たよ。
何これ?
人差し指からびちゃびちゃとむせ返るような黒い物体が出ている。
舌でペロリと舐める。



うん、これ醤油だわ。



え?なんで醤油なんだよ!
今さらかよ!
おい!
こんな便利なのあったら醤油味に出来たじゃん!
醤油味の苔に醤油味の石……あ、やっぱりいらないです。

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