見ていてね、生きていてね

黄崎うい

コイツムカツク

「あ、皇さん! 」

 炒飯は美味しかった。勉強もまあまあ終わった。特に嫌なこともなく、仕方なく学校に来て最初に会ったのがこいつだった。

 こいつはなんだ? これしか言えないのか? 

「なんだ。早くテストを返せ。帰るから」

 朝からあって不機嫌だったし、そもそも来る気もなかったんだ。帰ったって問題ない。

「嫌だよ」

「は? 」

 錦戸恵太から返ってきた言葉があまりに予想外だったからか、僕はとりあえず夢だと思うことにした。少なくとも、昨日までの僕が知ってるこいつはこんなことを言うやつじゃなかったはずだ。いや、こいつのことは何も知らないが。

「今日は一緒に帰ってもらうよ、鈴ちゃん」

 寒くないのに鳥肌がたった。気持ちが悪すぎてこの場にいたくなかった。

 よし、帰ろう。テストなんてどうにでもなる。成績表さえ持って帰れば、どうにかなる。うん。後日成績表だけ持って帰ろう。それがいい。

「…………帰る」

「流石に間が長すぎたかな、鈴ちゃん」

 まるで僕の動きを予想してたかのように錦戸恵太が僕の前に出てきた。腹が立つ。

「そんなテストやる。僕は今度成績表もらうから」

「それなら先生から既に預かってるよ」

 そう言う錦戸恵太が持っていたものは紛れもなくこの学校の成績表だった。しかも、名前の欄には『一年四組皇鈴』って僕の文字で書いてある。間違いなく僕のものだった。

「よくわかんないんだけど、何故先生あいつらはお前にそれを渡したんだ」

「仲良さそうだから渡しといてくれって」

 仲良くないのになんだ? バカしかいないのか? あぁ、そうだ。馬鹿だったな。あんな教師共に期待する方が馬鹿馬鹿しい。

「……」

 仕方なく。仕方なく。本当に仕方なく上履きをはいて教室の方に向かった。流石に成績表もなしじゃあの親も怒りかねない。今、ギリギリ怒らないで堪えられてるだけなら、確実に家から追い出されるか、ゲームの取上くらいはありそうだ。それだけは嫌だ。

「じゃあ、俺は二組だから、すめら……鈴ちゃん、また放課後にね」

 バカみたいな大声ですぐ近くにいる僕に錦戸恵太が呼び掛けた。それに従わなければ、卜のゲーム危ない。僕は、自立するまではゲームをしてダラダラと最低限以上のことはしないで生きるんだ。絶対。留学なんてしない。

「あっ」

 これは漫画か何かか? 何で僕が扉を休み時間に開くと皆こっちを見てあって言うんだ。そんな決まり事なんて必要ない。迷惑だ。

 何て思いつつ、僕は、いつもみたいに委員長らしい人をチラッと見てから席に座る。座るまで静かな教室が僕は一番嫌いなんだけどね。

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