見ていてね、生きていてね

未硝詩 うい

早姫姉の言葉のせいだ

「……ただいま」

 誰もいないってわかってるとこうやって挨拶だってできるよな。鬱陶しい返事を返されることもないし、ウザいため息を疲れることもない。何度も思うけど、本当に早姫姉がいなくなってから僕の性格も生活も変わったよな。

 早姫姉が起きたら怒られるのか、呆れられるのか。わかったもんじゃないな。怒られないように勉強するか。


 カバンをおいて、制服は後で学校に行くから脱がないで、折り畳み式の机に置いてあるコップをキッチンまで洗いに行った。洗い終わって、なんだか喉が乾いた気がして冷蔵庫を少し漁った。

「むーぎちゃっ麦茶っ麦茶はいるか? あ」

 無駄にテンションが上がった。全部あいつのせいか。僕が疲れてるのも、変なテンションになるのも全部錦戸恵太のせいってことにしておこう。

 実際、最近イライラしてるのはあいつのせいだし、今さらあいつのせいのことが増えたところであんまり変わらないだろ。どうせあいつには伝わらないんだし。

「英語……。やりたくないな」

 僕は、英語の参考書を前にしてそう呟いた。しかし、やらなければならない。今回英語だけ点数が下がってたからな。あんな点数、英語が得意の早姫姉が起きたら怒られるに決まってる。そんなの嫌だ。

「中一の英語からつまずいてちゃ、早姫姉は怒るどころか笑うか」

 点数は下がったとはいえ九十六点。早姫姉なら満点をとれる問題だ。そんな問題でこんな点数なんて恥ずかしい。早姫姉に会いに行けない。そんなの、嫌だ。

 僕は、十一時半にアラームがなるようにセットして、勉強を始めた。集中するときにはそうしなくちゃいけない。早姫姉が教えてくれたことだ。だから、アラームがなるまでは麦茶以外口にしないし、ゲームもしない。

 そうだ、アラームがなったらお昼をつくって食べて、炒飯でいいか。少しゲームをしてから学校に行こう。一時半くらいに学校に付けば良いだろ。問題は、あの錦戸恵太だ。できれば会いたくない。

「……。余計なことばっかり考えてないで、ちゃんと集中しよう。僕はバカなんだから覚えられないだろ」


ピピピピッピピピピッ

 アラームがようやくなった。本当にようやくだ。今の気持ちを二言で表すならば、眠い、学校にいきたくないだ。非常に眠い。

「ぅうぁぁぁぁあああ! テストォォォォォォ! なんで僕はテストなんて渡したんだろう。というか、なんで今日取りに行くって言った? あー! 面倒くさい。寝る! 」

 親がいないからできることその二、大声で不満を叫ぶ。僕は、叫ぶだけ叫んでその場に横になって眠ろうとした。本当に眠るつもりだった。炒飯作るのも面倒くさい、学校に行くのも面倒くさい。でも、その時に早姫姉の声が聞こえた気がした。

「約束は守ってね」

 昔、何が原因かは忘れたけど、早姫姉に言われたことのある言葉だ。

 僕は約束なんてしたつもりはない。

 ……いくらそう思ってもダメだ。早姫姉に言われた気がすると、学校に行かないわけにはいかない。

「っああぁぁぁ! 面倒くさい! 」

 そう言いながらも、炒飯を作りにキッチンまで行った。

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コメント

  • 文香

    ええのう(*´˘`*)

    1
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