見ていてね、生きていてね

未硝詩 うい

病院にて

「あら? 鈴ちゃんじゃない大きくなったわね~」

早姫姉に会うために病院に行った。たまに来るけれどこの病院は遠くて来るのが面倒であまり来ない。

「あ、入谷さん。あれから身長も体重も変わりませんよ」

「あら~そうかしら? 昔よりは大きくなったわよね」

「はあ、早姫姉に会いに行くのでそろそろ」

僕はこの人が嫌いだ。しつこいし構ってくるから嫌いだ。前にこと病院に来たのは三ヶ月くらい前だったか、始めてきたのは小学四年生の時だったな。

早姫姉と最後に話したのは早姫姉が一時帰国した小学二年生の時か。あの頃は神童って呼ばれてたな。早姫姉とは十歳は離れてて敵うわけないのに勝とうと頑張ってたからな。

「早姫姉、僕だよ」

早姫姉の病室の前に来てそう言いながら扉を開けた。

「あ、おばさん」

「鈴ちゃん。遠いのにまた来てくれたの?」

おばさんは早姫姉の母親だ。僕も小さいときから世話になってる。単純にいい人だと思う。

「別に、早姫姉のためだし、三ヶ月ぶりだし」

「だってこの時間学校休んできてるんでしょう? だめよ、ちゃんと授業もでないと」

「わかってるよ…」

はっきり言って、僕の母親よりも母親らしい気がする。早姫姉の妹になれるならそれでもいいと思えるけど。

「あ、ごめんなさいね。おばさんはこれから用事があるから帰らないと…。まだいてもいいからね」

「うん」

相変わらずだな。前来たときと花以外何も変わってないや。ずっと眠っているし奇跡的に症状も悪化しないでいる。だから死にもしないし目覚めもしない。

年齢で言うともう二十歳をこえているはずなのに僕の中ではもう少しで追い付けるお姉さんだ。

容姿端麗、英語堪能、性格良好、才色兼備の大天使

そんな風にも呼ばれていた早姫姉。こんなことになってショックだった人はたくさんいた。その中でも一番ショックだったのは早姫姉を留学に誘った本人だった。まあ仕方がないと僕も思ってる。名前も覚えていないし何もできない。

「早姫姉…。僕、勉強だけはやってるよ」

教師だってこんな問題児をほっとくわけがない。でも僕は違う。学年トップの成績をとっているし教室には行ってるから口を出させない。

「天使か…。真っ白な肌、綺麗な寝顔…大天使は死んでしまったら本当の天使になるのか? 」

幼い頃、そう呼ばれている早姫姉に対し、そんなことを思ったこともあった。天使の早姫姉、会いたいと思った。

「大天使、神使かみつか 早姫。神の使いが天の使いになるのか?早姫姉、神の使いだからそんなに綺麗なの? 」

いつのまにか燈色な光が窓からこぼれてきた。ここに来るまでは時間がかかる。学校を途中で抜けてここに来ると一時間もここにいると夕方になってしまう。僕は夕暮れの景色を見て言った。

「早姫姉、僕に好きがわかったら紹介するよ。わかるといいって言ってくれたから早く見つけるよ。追いかける」

その時、一瞬だけ、早姫姉の笑い声が聞こえた気がした。

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