見ていてね、生きていてね

黄崎うい

あれから三年

あの事件から三年が経った。僕は相変わらず早姫姉がいなくなってから泣いていない。だが、笑って過ごすことを覚えた。

ふと窓を見ると、外にはこんな僕を馬鹿にするように烏が飛んでいた。ずっと早姫姉は眠ったまま。死にもしなかったし目が覚めるなんてあり得ない。

すめらぎさん、皇鈴さん」

「はい? 」

授業の担任が僕を呼んだ。ずっと考え事をしていたから授業なんて聞いているわけがない。

「何ですか? 」

半分欠伸をしかけた反抗的な態度で答えた。

「皇さん、授業はちゃんと聞いてください。教科書の三十七ぺーじから呼んでください」

「…これなんの教科ですか? 」

普通の学校ならここで笑いが起きるはず。でも僕の中学では僕を笑ったらなにかが起きるというオカルトチックな噂があるから笑わない。

「国語です! 読んでください」

「持ってないです。そもそも鞄持ってきてないです」

まあ世に言う問題時とか不良って奴だ。早姫姉があんな風になってからずっとこんな感じで中一にして先生から要注意人物とされている。


ガタッ


「帰ります」

僕は席から立ち上がって教室から出ていった。この学校で僕に話しかける物好きはいない。平和だ。

「あのっ」

学校の玄関を出たあたりだった。身長はやや低め、顔なんてまるで女子のような本当に女子かと思うほどの男子に話しかけられた。

「チッ…何? 」

小さく舌打ちをして僕は答えた。

「俺、この学校に転入するんですけど職員室ってどこにあります? 」

「自分で探せば? 二階のどっかだし。あと僕は一年だから敬語を使うな気持ち悪い」

めんどくさいし職員室なんてほとんど使わないからそう答えた。

「ありがとう! 君、女の子なのに僕って言うんだね」

「あ? 悪いか? それに僕は今から帰るんだ。とっとと失せろ」

「早退? 体調気を付けてね」

その言葉を無視して大きく舌打ちをして家に向かった。まあどうせ次の日から僕に話しかけることはないだろう。そう確信した。

「あの俺、錦戸にしきど 恵太けいた。君は? 」

答える決まりはなかった。それでも錦戸の名字に何故か聞き覚えがあって答えた。

「皇鈴」

そう答えてもう帰った。どうせ家には誰もいない。親もこんな風になったのは仕方ないと思っているし、僕に興味がない。だからもう何をしてもいいんだ。

「ただいま」

「………」

やっぱり誰もいない。早姫姉に会いに行くか。どうせ話もできないし、目も覚めないけどやっぱり会いたい。


早姫姉は僕のすべてだ。

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