オオカミと七匹の魔法使い

ノベルバユーザー251712

オオカミと七匹の魔法使い

 むかしあるところに、お母さんヤギと七匹の子ヤギがすんでいました。


 ある日、お母さんヤギが買い物に出かけるので、子ヤギたちはお留守番をすることになりました。
「お母さんが帰ってくるまで絶対ドアを開けたらだめよ。なにしろ外には怖いオオカミがいるからね。」 
 お母さんヤギがそう心配すると、子ヤギたちは、
「大丈夫だよ。オオカミなんて、僕たちの魔法でぼこぼこにできるからね」
 と言いました。


 子ヤギたちは、みんな立派な魔法使いだったのです。




 お母さんヤギが出ていくのを見たオオカミは、今の内に子ヤギを食べてやろうと思い、家に向かいました。
 子ヤギたちが魔法を使えるなんて知らないのです。可哀想なオオカミ。




  子ヤギたちが留守番をしていると、誰かが家のドアをとんとんとたたいています。そして、 
「さあ、ごは、じゃなくて子ヤギたち。ママでちゅよ。帰ってきたから、ドアを開けておくんなまし」
 と、呼びました。 


 末っ子の子ヤギは、鑑定魔法を使って、
「おかあさんじゃない、オオカミだよ」
 と泣きそうな声でつぶやきました。
 ほかの子ヤギたちはこう思いました。
(これでバレないと思っているのか………)
 オオカミは、地声で話していたのです。お母さんヤギとは似てもつかないガラガラ声でした。


 一匹だけ、一番上の子ヤギは、思ったことをうっかり口に出してしまっていました。
「これでバレないと思っているのか。本当に、オオカミは救いようのない低知能生物だったんだな」
 わざとですね。


 オオカミのガラスのハートに、子ヤギの言葉が突き刺さります。
 それでもめげず、ヨーチューブで声真似講座を見てお母さんヤギの声真似をマスターしました。


 そして、再びドアをたたいて
「さあ、子ヤギたち。お母さんですよ。帰ってきたから、ドアを開けておくれ」
 と、呼びました。


 末っ子の子ヤギは、探索魔法を使って、
「おかあさんはまだまちにいるよ。オオカミだ」
 と不安そうにつぶやきました。
 ほかの子ヤギたちはこう思いました。
(窓からまる見えだ………)
 マヌケなことにオオカミは、ちょうど窓から見えるところに立って声真似をしているのです。


 一匹だけ、わざと思ったことをざっくりいう子ヤギがいました。
「アレェ、お母さんの声がするのに、窓から見えるのはオオカミだぁ。どうしてかなぁ。まさか、まる見えなのにそんな声真似で騙せると思ってたのかなぁ」
 もちろん、一番上の子ヤギでした。とぼけた口調でニヤニヤしています。


 オオカミは真っ赤になりました。
 それでも諦めず、アモゾンで透明マントを買って再挑戦です。


 ドアをたたいて、
「さあ、子ヤギたち。お母さんですよ。帰ってきたから、ドアを開けておくれ」
 と呼びました。
 末っ子の子ヤギは、透視魔法を使って、
「オオカミがいる!」
 と叫んでしまいました。
 ずっとこらえていた六匹の子ヤギたちは、とうとう吹きだしました。みんな爆笑しています。


 オオカミのライフはもうゼロです。耐えきれなくなって逃げ出そうとしました。
 しかし、この家に目をつけたときに命運は決まっていたのです。
 どんまい。


「おりやーっ! くらえ、ひっさーつ!」
 まず、二匹目の子ヤギがはなった火の玉が、オオカミのそこそこ自慢の毛に命中しました。
「あっつううううううううううう!」
 悲鳴が響きわたります。


 続いて、三匹目の子ヤギが地面を凍らせていきます。氷はオオカミの手前で止まって周りを囲みました。
「ふっ、オマエごときを凍らせるために使うほど、この秘術は安くない」
 キメ顔をしているあいだに逃げられてしまいそうです。二匹目の子ヤギに頭を叩かれました。


 四匹目の子ヤギが、木の根を伸ばしてオオカミを締め上げました。
 機転のきいた行動ですが、末っ子しか感心していません。でもなぜか満足そうに笑っています。


 五匹目の子ヤギは石を浮きあげました。そして、目をハートにしながら
「死んでネ。美味しく食べてあげるカラ」
 と言いました。オオカミのまわりに石が集まってきて、ボールのように丸く固まりました。


 一番上の子ヤギが出てきました。
「最近遊び足りなくてさ。サッカーでもしようかな」
 前足を地面に打ちつけ、やる気満々です。
 しかし、助走をつけて蹴ろうとしたとたんボールが崩れてしまいました。


 六匹目の子ヤギがあせって言いました。
「ごめんなさい、間違えました。グッて固めようとしただけなんです」
 それから魔法をまたかけていますが、石がちらかっていくばかりです。


 ぼこぼこになったオオカミが出てきて、うめき声をあげます。
「どうしてこんなに酷いことをするんだ」


 一番上の子ヤギは答えました。
「ダメじゃないか。せっかく森の向こうまでとばそうと思ったのに」
 五匹目の子ヤギも答えました。
「え、それじゃあ食べられナイヨ?」
 二匹目の子ヤギはツッコミました。
「オーカミはたべものじゃないよ!」
 四匹目の子ヤギはうなずいています。
「できません………」
 六匹目の子ヤギは一生懸命ボールを戻そうとしています。
「おにいちゃん、だいじょうぶ?」
 末っ子の子ヤギは、叩かれたせいで気絶した三匹目の方を心配していました。


 オオカミはもう一度言いました。
「どうしてこんな酷いことをするんだ」
 七匹はみんな聞いていません。オオカミのライフはもうマイナス七です。


 口論を続ける子ヤギたちに、泣きだしたオオカミ。大変な騒ぎです。


 そこへ、やっとお母さんヤギが帰ってきました。
「子ヤギたち! 何があったのか説明してくれないかしら」
 家の惨状を見て、お母さんヤギは大声をだしました。


 火の玉で焦げたドア、凍ってしまった花壇の花、ちらばった石とでこぼこになった地面。我に返ってあせる六匹と、笑っている一匹。宣言どおりにぼこぼこになったオオカミ。


「…………今日はおやつぬきよ。ちゃんと庭をきれいに戻しておいてちょうだい」






 おしおきはきつかったけれど、七匹の魔法使いはとても楽しい一日をすごしました。みんな、またお留守番をするのを楽しみにしていました。
 でも、子ヤギたちがこんなお留守番をすることはもうないでしょう。


 なぜなら、うわさを聞いたオオカミたちが、絶対にこの家に近寄らなかったからです。




 おわり


(追記 ぼこぼこになったオオカミは、作者が美味しくいただきました)

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