《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

115話~フォルモルの戦いⅢ~

「さすが」
 シラティウスが人の姿になって、話しかけてきた。



「ケルベロスを抑えてくれて助かったわ。でも、ちょっと建物を壊し過ぎだけどね」



 まだ砂ボコリがおさまっていない。
 倒壊したガレキに巻き込まれた人たちもいるかもしれない。



「しょうがない。着陸する場所がなかった」
 と、シラティウスはスねるように言った。



「でも、感謝してるわ。おかげで助かったし、タギールを殺すこともできた。こいつは私の敵だし」



「うん」
「ところでセイは?」



「築城修道院のほうに行ってたけど、さっき運びもどされてきた。毒を盛られたとかって」



「毒ですって!」



 いっこくも速く助けに行きたい思いに駆られたのだが、フォルモルの治療印は外傷にだけ効果を発揮する。毒や病には無力だ。



「だから、そこにいる薬師を探しに来たところ」



 大きなガレキの影に隠れているカールのことを、シラティウスは指差した。そうだ。薬師であれば解毒薬をつくれるかもしれない。



「じゃあ、すぐに連れて行って」
「うん」



「速く!」



 と、フォルモルはシラティウスを急き立てた。詳しい事情を聞きたかったが、シラティウスを足止めしたくなかった。この世界にとっても、フォルモルにとってもセイは貴重な命だ。毒なんかでポックリいかれたらたまらない。



 シラティウスはカールを連れて、都市の中央のほうへ戻って行った。



「無事でいてちょうだいよ」
 セイの身を案じて、フォルモルはそうつぶやいた。



 クロカミ・セイ。
 チョット頼りなさそうな男の子。それが最初のセイから受けた印象だった。



 でも、親身になって話を聞いてくれた。自分の悲劇はふつう、人には語りにくい。「私はこんなに苦労してるのよ」なんて言ったら、ふつうは良い顔をしない。でも、セイは違った。なぜか話せてしまった。



 それに――。



 タギール・ジリアルとはじめて相対したとき、フォルモルの悲劇を、セイはまるで自分のことのように怒ってくれた。



 フォルモルにとって、それはうれしかった。



〝治療印〟は外傷は治すことはできても、毒や病は治せない。そして、心の病も。でもセイは当たり前のように、フォルモルの心の傷を癒してくれた。



(でも、独占はできないだろうなぁ)
 と、思うと切なくなった。



「ふーっ」
 呼気を吐きだした。
 ぼーっとしてる場合じゃない。



 フォルモルが治療した冒険者たちが、態勢を立て直していた。倒壊した建物のガレキをバリケードにして、モンスターの進行を食い止めていた。ケルベロスはシラティウスが殺してくれた。



 これでかなり守りやすくなったはずだ。



(副市のバービカンのほうは大丈夫かしら?)
 と、フォルモルはキリアのほうを心配した。



 刹那。
 タギールの胴体が起きあがった。弾かれたような起き上がりかただった。



「な、なにッ」
 あわててフォルモルは、ハルバードを構え直した。



 タギールの首の断面から、黒い液体のようなものがあふれ出ていた。まるでイカスミの噴水だ。しかも首の断面から湧き出ているのだから、気色悪いことこのうえない。



(また……)
 矢で射たときもそうだった。黒い影のようなものが、フォルモルの矢を弾いてしまったのだ。あのときの影だ。



「まるでバケモノね」
 フォルモルは、タギールの死体を相対することとなった。

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