《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
115話~フォルモルの戦いⅢ~
「さすが」
シラティウスが人の姿になって、話しかけてきた。
「ケルベロスを抑えてくれて助かったわ。でも、ちょっと建物を壊し過ぎだけどね」
まだ砂ボコリがおさまっていない。
倒壊したガレキに巻き込まれた人たちもいるかもしれない。
「しょうがない。着陸する場所がなかった」
と、シラティウスはスねるように言った。
「でも、感謝してるわ。おかげで助かったし、タギールを殺すこともできた。こいつは私の敵だし」
「うん」
「ところでセイは?」
「築城修道院のほうに行ってたけど、さっき運びもどされてきた。毒を盛られたとかって」
「毒ですって!」
いっこくも速く助けに行きたい思いに駆られたのだが、フォルモルの治療印は外傷にだけ効果を発揮する。毒や病には無力だ。
「だから、そこにいる薬師を探しに来たところ」
大きなガレキの影に隠れているカールのことを、シラティウスは指差した。そうだ。薬師であれば解毒薬をつくれるかもしれない。
「じゃあ、すぐに連れて行って」
「うん」
「速く!」
と、フォルモルはシラティウスを急き立てた。詳しい事情を聞きたかったが、シラティウスを足止めしたくなかった。この世界にとっても、フォルモルにとってもセイは貴重な命だ。毒なんかでポックリいかれたらたまらない。
シラティウスはカールを連れて、都市の中央のほうへ戻って行った。
「無事でいてちょうだいよ」
セイの身を案じて、フォルモルはそうつぶやいた。
クロカミ・セイ。
チョット頼りなさそうな男の子。それが最初のセイから受けた印象だった。
でも、親身になって話を聞いてくれた。自分の悲劇はふつう、人には語りにくい。「私はこんなに苦労してるのよ」なんて言ったら、ふつうは良い顔をしない。でも、セイは違った。なぜか話せてしまった。
それに――。
タギール・ジリアルとはじめて相対したとき、フォルモルの悲劇を、セイはまるで自分のことのように怒ってくれた。
フォルモルにとって、それはうれしかった。
〝治療印〟は外傷は治すことはできても、毒や病は治せない。そして、心の病も。でもセイは当たり前のように、フォルモルの心の傷を癒してくれた。
(でも、独占はできないだろうなぁ)
と、思うと切なくなった。
「ふーっ」
呼気を吐きだした。
ぼーっとしてる場合じゃない。
フォルモルが治療した冒険者たちが、態勢を立て直していた。倒壊した建物のガレキをバリケードにして、モンスターの進行を食い止めていた。ケルベロスはシラティウスが殺してくれた。
これでかなり守りやすくなったはずだ。
(副市のバービカンのほうは大丈夫かしら?)
と、フォルモルはキリアのほうを心配した。
刹那。
タギールの胴体が起きあがった。弾かれたような起き上がりかただった。
「な、なにッ」
あわててフォルモルは、ハルバードを構え直した。
タギールの首の断面から、黒い液体のようなものがあふれ出ていた。まるでイカスミの噴水だ。しかも首の断面から湧き出ているのだから、気色悪いことこのうえない。
(また……)
矢で射たときもそうだった。黒い影のようなものが、フォルモルの矢を弾いてしまったのだ。あのときの影だ。
「まるでバケモノね」
フォルモルは、タギールの死体を相対することとなった。
シラティウスが人の姿になって、話しかけてきた。
「ケルベロスを抑えてくれて助かったわ。でも、ちょっと建物を壊し過ぎだけどね」
まだ砂ボコリがおさまっていない。
倒壊したガレキに巻き込まれた人たちもいるかもしれない。
「しょうがない。着陸する場所がなかった」
と、シラティウスはスねるように言った。
「でも、感謝してるわ。おかげで助かったし、タギールを殺すこともできた。こいつは私の敵だし」
「うん」
「ところでセイは?」
「築城修道院のほうに行ってたけど、さっき運びもどされてきた。毒を盛られたとかって」
「毒ですって!」
いっこくも速く助けに行きたい思いに駆られたのだが、フォルモルの治療印は外傷にだけ効果を発揮する。毒や病には無力だ。
「だから、そこにいる薬師を探しに来たところ」
大きなガレキの影に隠れているカールのことを、シラティウスは指差した。そうだ。薬師であれば解毒薬をつくれるかもしれない。
「じゃあ、すぐに連れて行って」
「うん」
「速く!」
と、フォルモルはシラティウスを急き立てた。詳しい事情を聞きたかったが、シラティウスを足止めしたくなかった。この世界にとっても、フォルモルにとってもセイは貴重な命だ。毒なんかでポックリいかれたらたまらない。
シラティウスはカールを連れて、都市の中央のほうへ戻って行った。
「無事でいてちょうだいよ」
セイの身を案じて、フォルモルはそうつぶやいた。
クロカミ・セイ。
チョット頼りなさそうな男の子。それが最初のセイから受けた印象だった。
でも、親身になって話を聞いてくれた。自分の悲劇はふつう、人には語りにくい。「私はこんなに苦労してるのよ」なんて言ったら、ふつうは良い顔をしない。でも、セイは違った。なぜか話せてしまった。
それに――。
タギール・ジリアルとはじめて相対したとき、フォルモルの悲劇を、セイはまるで自分のことのように怒ってくれた。
フォルモルにとって、それはうれしかった。
〝治療印〟は外傷は治すことはできても、毒や病は治せない。そして、心の病も。でもセイは当たり前のように、フォルモルの心の傷を癒してくれた。
(でも、独占はできないだろうなぁ)
と、思うと切なくなった。
「ふーっ」
呼気を吐きだした。
ぼーっとしてる場合じゃない。
フォルモルが治療した冒険者たちが、態勢を立て直していた。倒壊した建物のガレキをバリケードにして、モンスターの進行を食い止めていた。ケルベロスはシラティウスが殺してくれた。
これでかなり守りやすくなったはずだ。
(副市のバービカンのほうは大丈夫かしら?)
と、フォルモルはキリアのほうを心配した。
刹那。
タギールの胴体が起きあがった。弾かれたような起き上がりかただった。
「な、なにッ」
あわててフォルモルは、ハルバードを構え直した。
タギールの首の断面から、黒い液体のようなものがあふれ出ていた。まるでイカスミの噴水だ。しかも首の断面から湧き出ているのだから、気色悪いことこのうえない。
(また……)
矢で射たときもそうだった。黒い影のようなものが、フォルモルの矢を弾いてしまったのだ。あのときの影だ。
「まるでバケモノね」
フォルモルは、タギールの死体を相対することとなった。
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