《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第96話~シラティウスの義妹~
上半身はワニ。下半身はライオンのモンスター。
アムマイト。
ヤツらが一斉に駆けてきた。数十匹はいると思われる。その疾走は地面を揺らすほどの迫力があった。
槍一本では不足だ。〝無限剣印〟のチカラに頼るか。それとも〝竜印〟を使うべきか……。迷ってるあいだに、アムマイトが距離を詰めてきた。ひとまず先頭にいる1匹は槍で応戦しようと決めた。
刹那。
セイをかばうようにして、シラティウスが立ちはだかった。アムマイトの突進を、シラティウスはカラダで受け止めた。
その白銀のウロコには傷ひとつつかない。1匹、2匹と踏みつぶされていき、尻尾の一振りで半数がなぎはらわれていった。ドラゴンを相手にするのは愚行だと思い知ったか、アムマイトたちは尻尾を巻いて、退散していった。
ふたたび静けさが戻ってきた。
「女性に守れると、カッコウがつかないなぁ」
シラティウスがドラゴンのその長い首を、クルリとセイのほうに向けた。そうかと思うと、すぐに人の姿に戻った。
無味無臭というか、目を離すと海風にさらわれて消えてしまうような、はかないシラティウスの存在があらわれた。
白い髪の毛がなびいていた。
「なにしに来たの?」
「なにしにって、勝手にいなくなるから探しに来たんじゃないか」
「別に来なくても良かったのに」
シラティウスはそう言うと、顔を伏せた。
何かあったのだろう。いじけている感情が、容易に透けて見えた。
「勝手にいなくなるから、そりゃ探しに来るだろう」
「……」
「何か辛いことがあったのなら、教えてくれよ。もしオレに何かあればシラティウスが助ける。シラティウスに何かあったときはオレが助ける。それが、〝竜印〟をもらったときの約束だったはずだ」
「それはドラゴンになってしまったときの話であって……」
「別に、そのときに限った話じゃないだろう」
「うん」
説得されてうなずいたというよりかは、シラティウスは論議がメンドウになってうなずいたといった様子だった。
「まずイチバン悪いのは、あなた」
シラティウスはそう言うと、セイの乳房をわしづかみにしてきた。女の姿をしているあいだは、胸もふくらんでいる。
服の上からとはいえ、誰かに乳房をわしづかみにされるのは、はじめてのことだった。自分ですら見ないように努めてきたのだから、急に乳房をつかまれたのだから、生半可な刺激ではなかった。
「あうッ」
と、乳房からカラダに送り込まれる刺激に、セイは思わず声をあげてしまった。これが女性の快感というものだろうか。そのセイの声が、どうやらシラティウスの胸の奥に眠るサディズム魂に火をつけてしまったらしかった。
シラティウスは小さく笑うと、セイのもう一方の乳房にも手を伸ばしてきた。
「フォルモルやキリアにばっかり構ってばっかりで、私の相手をぜんぜんしてくれなかった。それが、まず問題」
「だって、それは……あうっ」
セイの乳房に与えられる刺激が、より強くなった。強引につかんで、もみしだいて、ひねりあげてくる。
「これ、面白い」
シラティウスの笑みが深くなった。
ブラジャーも胸当てもしていないので、余計に刺激が強い。本来が男なのだから、下着まで女装するというのは、プライドが邪魔してできなかった。
ブリオーなどではなく、せめてレザーアーマーぐらいは着てくるべきだったのかもしれない。モンスターが跋扈しているのだから、それがトウゼンだ。
だが、セイはブリオーでしのいでいた。レザーアーマーとはいえ、常時着ているとカラダに負担がかかる。
軽いものでも1キロはあるのだ。男になったり、女になったり――そのつど骨格がかわるセイにとって、レザーアーマーでも常備するのは不便なものがあった。
「悪かったよ。でも、だからって、勝手に出て行くことはないじゃないか」
「妹が来たの」
そうつぶやくと、シラティウスの手がセイの胸から離れた。ようやく強烈な刺激から解放されて、セイは呼吸をととのえた。
「い、妹? そんなのいたのか?」
「私も知らなかった」
「どういうことだ?」
シラティウスにはドラゴンの母親がいた。そして、父親とは会ったことがない。しかし、その父親は人間だったらしい。
「ドラゴンは本来、人間と接触しないようにドラゴンだけで暮らしている。私のママはパパと駆け落ちしたらしい」
「へぇー。恋物語みたいだな」
セイの呟きを黙殺して、シラティウスは続けた。
「パパは私のママと出会う前に、人間の女の人と結婚していて、子供もいたんだって」
「じゃあ、ドラゴンと不倫したわけか」
ロイラング王国では、一夫多妻制だ。他国もだいたいそうだと思う。もっとも、こんな状況下ではあまり意味のない制度だが。
「パパには人間とのあいだに娘がいたらしいの」
ちょっと話がややこしい。
「つまりその娘っていうのが、シラティウスの義妹ってわけか。なんて言うんだっけ、腹違いの妹?」
「そう」
シラティウスには申し訳ないが、シラティウスの父親というのは、ずいぶんと奔放な人だったようだ。
人間の奥さんと娘がいるのに、ドラゴンと駆け落ちなんて、ふつうはしないだろうと思う。
「で、その腹違いの妹っていうのは?」
「手紙をもらった。私を殺すためにドラゴンハンターをやってるって書いてた。ここで決着をつけよう――って」
「それで、1人でこんなところに来てたのか」
「うん」
不倫した父親を憎むのはわかるが、シラティウスを憎むというのは筋が違うように思う。逆恨みですらない。
「義妹がドラゴンハンターってことは、姉と妹で敵同士か」
「うん」
シラティウスがうなずく。
ザザー、と潮騒が響く。
アムマイト。
ヤツらが一斉に駆けてきた。数十匹はいると思われる。その疾走は地面を揺らすほどの迫力があった。
槍一本では不足だ。〝無限剣印〟のチカラに頼るか。それとも〝竜印〟を使うべきか……。迷ってるあいだに、アムマイトが距離を詰めてきた。ひとまず先頭にいる1匹は槍で応戦しようと決めた。
刹那。
セイをかばうようにして、シラティウスが立ちはだかった。アムマイトの突進を、シラティウスはカラダで受け止めた。
その白銀のウロコには傷ひとつつかない。1匹、2匹と踏みつぶされていき、尻尾の一振りで半数がなぎはらわれていった。ドラゴンを相手にするのは愚行だと思い知ったか、アムマイトたちは尻尾を巻いて、退散していった。
ふたたび静けさが戻ってきた。
「女性に守れると、カッコウがつかないなぁ」
シラティウスがドラゴンのその長い首を、クルリとセイのほうに向けた。そうかと思うと、すぐに人の姿に戻った。
無味無臭というか、目を離すと海風にさらわれて消えてしまうような、はかないシラティウスの存在があらわれた。
白い髪の毛がなびいていた。
「なにしに来たの?」
「なにしにって、勝手にいなくなるから探しに来たんじゃないか」
「別に来なくても良かったのに」
シラティウスはそう言うと、顔を伏せた。
何かあったのだろう。いじけている感情が、容易に透けて見えた。
「勝手にいなくなるから、そりゃ探しに来るだろう」
「……」
「何か辛いことがあったのなら、教えてくれよ。もしオレに何かあればシラティウスが助ける。シラティウスに何かあったときはオレが助ける。それが、〝竜印〟をもらったときの約束だったはずだ」
「それはドラゴンになってしまったときの話であって……」
「別に、そのときに限った話じゃないだろう」
「うん」
説得されてうなずいたというよりかは、シラティウスは論議がメンドウになってうなずいたといった様子だった。
「まずイチバン悪いのは、あなた」
シラティウスはそう言うと、セイの乳房をわしづかみにしてきた。女の姿をしているあいだは、胸もふくらんでいる。
服の上からとはいえ、誰かに乳房をわしづかみにされるのは、はじめてのことだった。自分ですら見ないように努めてきたのだから、急に乳房をつかまれたのだから、生半可な刺激ではなかった。
「あうッ」
と、乳房からカラダに送り込まれる刺激に、セイは思わず声をあげてしまった。これが女性の快感というものだろうか。そのセイの声が、どうやらシラティウスの胸の奥に眠るサディズム魂に火をつけてしまったらしかった。
シラティウスは小さく笑うと、セイのもう一方の乳房にも手を伸ばしてきた。
「フォルモルやキリアにばっかり構ってばっかりで、私の相手をぜんぜんしてくれなかった。それが、まず問題」
「だって、それは……あうっ」
セイの乳房に与えられる刺激が、より強くなった。強引につかんで、もみしだいて、ひねりあげてくる。
「これ、面白い」
シラティウスの笑みが深くなった。
ブラジャーも胸当てもしていないので、余計に刺激が強い。本来が男なのだから、下着まで女装するというのは、プライドが邪魔してできなかった。
ブリオーなどではなく、せめてレザーアーマーぐらいは着てくるべきだったのかもしれない。モンスターが跋扈しているのだから、それがトウゼンだ。
だが、セイはブリオーでしのいでいた。レザーアーマーとはいえ、常時着ているとカラダに負担がかかる。
軽いものでも1キロはあるのだ。男になったり、女になったり――そのつど骨格がかわるセイにとって、レザーアーマーでも常備するのは不便なものがあった。
「悪かったよ。でも、だからって、勝手に出て行くことはないじゃないか」
「妹が来たの」
そうつぶやくと、シラティウスの手がセイの胸から離れた。ようやく強烈な刺激から解放されて、セイは呼吸をととのえた。
「い、妹? そんなのいたのか?」
「私も知らなかった」
「どういうことだ?」
シラティウスにはドラゴンの母親がいた。そして、父親とは会ったことがない。しかし、その父親は人間だったらしい。
「ドラゴンは本来、人間と接触しないようにドラゴンだけで暮らしている。私のママはパパと駆け落ちしたらしい」
「へぇー。恋物語みたいだな」
セイの呟きを黙殺して、シラティウスは続けた。
「パパは私のママと出会う前に、人間の女の人と結婚していて、子供もいたんだって」
「じゃあ、ドラゴンと不倫したわけか」
ロイラング王国では、一夫多妻制だ。他国もだいたいそうだと思う。もっとも、こんな状況下ではあまり意味のない制度だが。
「パパには人間とのあいだに娘がいたらしいの」
ちょっと話がややこしい。
「つまりその娘っていうのが、シラティウスの義妹ってわけか。なんて言うんだっけ、腹違いの妹?」
「そう」
シラティウスには申し訳ないが、シラティウスの父親というのは、ずいぶんと奔放な人だったようだ。
人間の奥さんと娘がいるのに、ドラゴンと駆け落ちなんて、ふつうはしないだろうと思う。
「で、その腹違いの妹っていうのは?」
「手紙をもらった。私を殺すためにドラゴンハンターをやってるって書いてた。ここで決着をつけよう――って」
「それで、1人でこんなところに来てたのか」
「うん」
不倫した父親を憎むのはわかるが、シラティウスを憎むというのは筋が違うように思う。逆恨みですらない。
「義妹がドラゴンハンターってことは、姉と妹で敵同士か」
「うん」
シラティウスがうなずく。
ザザー、と潮騒が響く。
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