《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第62話~イティカの旅~
「失礼」
朝食にありついていたセイに声がかかった。イティカだった。イティカは強力な印を持っている。セイはすでにその印をもらっていた。それは、フォルモルの提案だった。「ああいう女騎士に限って、コロッといくものよ。強引に頼めば印を重ねさせてくれるわよ」と。
実際、イティカはセイに印を差し出してくれた。重ねた夜のことを思い出すと、セイは赤面をおぼえた。イティカのほうはセイのことを、セーコだと思っているはずだから、1人で勝手に照れていることになる。
照れ臭さを、コホン、と咳払いで払拭した。
「なんでしょうか?」
「君たちには、いろいろと世話になった。私はこれからしばらく、都市サファリアを離れようと思う」
「それはまた、どうしてです?」
「モンスターに苦しめられているのは、この辺りだけではないはずだ。各都市に治安をもたらして、冒険者ギルドの支部を広げていこうと思っている」
「それは、スバラシイですね」
白紙のうえにインクを滲ませていくように、治安を広げていかなければならない。この都市サファリアを中心に、1点――ま1点――とモンスターの脅威にさらされない地点を築く必要がある。イティカほどの実力者であるなら、たとえ険しくとも事は円滑に進むだろう。
「それに私は、修行の旅に出るべきのようだ」
「修行――ですか?」
充分に強い。
わざわざ修行などしなくとも、この人はすでに剣士としての極致にある。
他の者には内密にしてあるが――とイティカは声をひそめて続けた。
「先日の夜更けにクロカミ・セイが私のもとに訪れた。それが私の脳裏から離れんのだ。また会いたい。そう思ってしまう。ここにいると雑念に殺されてしまいそうだ」
イティカは青い瞳を茫然と潤ませていた。
あの夜のことを思い出しているのだろう。
「そうですか」
その青く潤んだ瞳を直視できなかった。
「もう一度、会いたい。その気持ちは消えないと思う。だから今度、彼に会ったときに恥ずかしくない女として、また女騎士として私は一から鍛え直そうと思う」
イティカだけに、一からというわけだ。
「この都市を去る前に、セーコくんには挨拶しておこうと思ってね。ケルベロスの件では世話になった」
「いえ。こちらこそ」
「私はまた彼に会うことができるだろうか?」
その質問をしてきたイティカは女騎士ではなかった。ひとりの女として、哀しげな目をセイに向けていた。もしかしてこの人は、オレがセイだと気づいているのではないか。そう思わせられるものがあった。
「どうして私に訊くのですか?」
セイはそう問い返した。
「君は彼の姉だ。そうだろう?」
「ええ」
「どうだろうか? 彼はまた私に会いに来てくれるだろうか?」
イティカの声が震えていた。
懇願とさえ受け取れる。
「ええ。セイはきっと会いに行くと思いますよ
そう答えるしかなかった。
イティカはあからさまに感動をあらわにしていた。目じりに涙がたまっている。
「そうか――。これで安心して旅に出られる。私はきっとサファリアに戻ってくる。そのときまでサラバだ」
イティカは未練を断ち切るように、颯爽と身をひるがえした。
罪な男だな貴殿は――とキリアがつぶやいた。
朝食にありついていたセイに声がかかった。イティカだった。イティカは強力な印を持っている。セイはすでにその印をもらっていた。それは、フォルモルの提案だった。「ああいう女騎士に限って、コロッといくものよ。強引に頼めば印を重ねさせてくれるわよ」と。
実際、イティカはセイに印を差し出してくれた。重ねた夜のことを思い出すと、セイは赤面をおぼえた。イティカのほうはセイのことを、セーコだと思っているはずだから、1人で勝手に照れていることになる。
照れ臭さを、コホン、と咳払いで払拭した。
「なんでしょうか?」
「君たちには、いろいろと世話になった。私はこれからしばらく、都市サファリアを離れようと思う」
「それはまた、どうしてです?」
「モンスターに苦しめられているのは、この辺りだけではないはずだ。各都市に治安をもたらして、冒険者ギルドの支部を広げていこうと思っている」
「それは、スバラシイですね」
白紙のうえにインクを滲ませていくように、治安を広げていかなければならない。この都市サファリアを中心に、1点――ま1点――とモンスターの脅威にさらされない地点を築く必要がある。イティカほどの実力者であるなら、たとえ険しくとも事は円滑に進むだろう。
「それに私は、修行の旅に出るべきのようだ」
「修行――ですか?」
充分に強い。
わざわざ修行などしなくとも、この人はすでに剣士としての極致にある。
他の者には内密にしてあるが――とイティカは声をひそめて続けた。
「先日の夜更けにクロカミ・セイが私のもとに訪れた。それが私の脳裏から離れんのだ。また会いたい。そう思ってしまう。ここにいると雑念に殺されてしまいそうだ」
イティカは青い瞳を茫然と潤ませていた。
あの夜のことを思い出しているのだろう。
「そうですか」
その青く潤んだ瞳を直視できなかった。
「もう一度、会いたい。その気持ちは消えないと思う。だから今度、彼に会ったときに恥ずかしくない女として、また女騎士として私は一から鍛え直そうと思う」
イティカだけに、一からというわけだ。
「この都市を去る前に、セーコくんには挨拶しておこうと思ってね。ケルベロスの件では世話になった」
「いえ。こちらこそ」
「私はまた彼に会うことができるだろうか?」
その質問をしてきたイティカは女騎士ではなかった。ひとりの女として、哀しげな目をセイに向けていた。もしかしてこの人は、オレがセイだと気づいているのではないか。そう思わせられるものがあった。
「どうして私に訊くのですか?」
セイはそう問い返した。
「君は彼の姉だ。そうだろう?」
「ええ」
「どうだろうか? 彼はまた私に会いに来てくれるだろうか?」
イティカの声が震えていた。
懇願とさえ受け取れる。
「ええ。セイはきっと会いに行くと思いますよ
そう答えるしかなかった。
イティカはあからさまに感動をあらわにしていた。目じりに涙がたまっている。
「そうか――。これで安心して旅に出られる。私はきっとサファリアに戻ってくる。そのときまでサラバだ」
イティカは未練を断ち切るように、颯爽と身をひるがえした。
罪な男だな貴殿は――とキリアがつぶやいた。
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