《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第56話~フォルモル編完結~
都市サファリア。宿屋。
《キングプロテア級》の冒険者となったセイたちは、無料で宿に泊まらせてもらっていた。《キングプロテア級》の冒険者に与えられる権利なので、遠慮することはないということだった。
ピュラ・ピュラがいたときは5人部屋だったが、今は4人部屋に移っている。ピュラはアカジャックの森に帰ったのだ。
「しかし、まさかあの首のない死体がエルフ族長の死体だったとはね」
フォルモルがセイに抱きついてそう言った。
誰もいないのを良いことに、セイはいま男の姿に戻っている。当たり前と言えば当たり前だが、男の姿のほうが落ちつく。
「あんまりくっ付かないでくださいよ。背中に当たってますって」
「何が?」
「む、胸が」
フォルモルの巨大な乳房が、背中でやわらかく潰れている感触があった。タギールと対峙してからというものの、フォルモルはセイによくくっ付いて来るようになった。キリアとシラティウスはなかば呆れるような目で見てきた。そんな目で見ないで欲しい。フォルモルが離れてくれそうにないので、このままセイは話を続けた。
「エルフ族長のひたいに〝封印〟があったそうですよ。首ごと奪われたということなんでしょうね」
タギールは、その死体をずっと持ち歩いていたことになる。カンオケに入れられていたとはいえ、近くにいたのに気づかなかったことが悔やまれた。
「エグイことするわね」
それでも、エルフたちがセイに感謝してくれた。アカジャックの森を救ってくれたことと、族長の遺体を取り戻してくれたこと。「この雨がやんだとき、ぜひアカジャックの森に来てください」と言われた。「殿方の子種をエルフたちも待っていますので」ということだ。
喜怒哀楽のどの感情を抱けば良いのかわからず、アカジャックの森を後にしたのだった。そして宿に戻ってきた。
「でも、私たちのやるべきことが、エルフたちのおかげでわかったわ」
「ですね」
エルフ族。
蜥蜴族。
獣人族。
3種族の族長が〝封印〟を持っていたのだという。そして、族長の〝封印〟が奪われたから、この雨が降り出した。もうすでに族長の命はないかもしれない。それでも蜥蜴族、獣人族のもとに足を運んでみるべきだろう。
「この災厄を引き起こしたのは、はシルベ教ってことなんでしょうか?」
フォルモルに厭なことを思い出させるかもしれない。そう気を使って割れ物の触れるように慎重に問いかけてみた。
「まだ、なんとも言えないけれど、シルベ教が何か関わってる可能性は大きいわね」
「……」
両親が殺されたことは、誰だって堪えるものだ。あんなに取り乱したフォルモルははじめて見た。
フォルモルの心は大丈夫だろうか……ムリしてないだろうか……心配になってセイは振り返った。
すぐ目の前にフォルモルの笑顔があった。
「私のこと心配してくれてるのね。でも、大丈夫よ」
「そうですか」
「それより、セイのほうこそ傷ついてるんじゃないの?」
「オレが?」
「ゆいいつセイと同じ男だったレドさんが、殺されちゃったでしょう」
「……ですね」
悲しいことだ。
今日はレドの葬式がクト村で行われている。アカジャックの森からの帰りに、セイも立ち寄ってきた。
セイのことを追いかけまわしていたアンヌも、その葬式に出ていた。次にクト村をまとめるのはアンヌかもしれないと聞いている。その調子でセイと結婚するという謎の願望を捨ててくれていれば良い。
タギールという女にたいしては、憎悪すら抱く。でも、タギールとの決着をつけるのはオレではなくて、フォルモルなのかもしれないとセイは思うのだった。
「お姉さんが、慰めてあげるわ」
セイの耳に、甘噛みしてきた。
「あ、ちょ――ッ」
まだ20歳だと聞いているが、ずいぶんと大人びている。精神のほうは実年齢よりも、もっと老獪で、もっと妖艶なのかもしれない。常に大人ぶってセイのことをカラカい、あふれんばかりの色気を放つ。
これがフォルモルという女性なのだ。
《キングプロテア級》の冒険者となったセイたちは、無料で宿に泊まらせてもらっていた。《キングプロテア級》の冒険者に与えられる権利なので、遠慮することはないということだった。
ピュラ・ピュラがいたときは5人部屋だったが、今は4人部屋に移っている。ピュラはアカジャックの森に帰ったのだ。
「しかし、まさかあの首のない死体がエルフ族長の死体だったとはね」
フォルモルがセイに抱きついてそう言った。
誰もいないのを良いことに、セイはいま男の姿に戻っている。当たり前と言えば当たり前だが、男の姿のほうが落ちつく。
「あんまりくっ付かないでくださいよ。背中に当たってますって」
「何が?」
「む、胸が」
フォルモルの巨大な乳房が、背中でやわらかく潰れている感触があった。タギールと対峙してからというものの、フォルモルはセイによくくっ付いて来るようになった。キリアとシラティウスはなかば呆れるような目で見てきた。そんな目で見ないで欲しい。フォルモルが離れてくれそうにないので、このままセイは話を続けた。
「エルフ族長のひたいに〝封印〟があったそうですよ。首ごと奪われたということなんでしょうね」
タギールは、その死体をずっと持ち歩いていたことになる。カンオケに入れられていたとはいえ、近くにいたのに気づかなかったことが悔やまれた。
「エグイことするわね」
それでも、エルフたちがセイに感謝してくれた。アカジャックの森を救ってくれたことと、族長の遺体を取り戻してくれたこと。「この雨がやんだとき、ぜひアカジャックの森に来てください」と言われた。「殿方の子種をエルフたちも待っていますので」ということだ。
喜怒哀楽のどの感情を抱けば良いのかわからず、アカジャックの森を後にしたのだった。そして宿に戻ってきた。
「でも、私たちのやるべきことが、エルフたちのおかげでわかったわ」
「ですね」
エルフ族。
蜥蜴族。
獣人族。
3種族の族長が〝封印〟を持っていたのだという。そして、族長の〝封印〟が奪われたから、この雨が降り出した。もうすでに族長の命はないかもしれない。それでも蜥蜴族、獣人族のもとに足を運んでみるべきだろう。
「この災厄を引き起こしたのは、はシルベ教ってことなんでしょうか?」
フォルモルに厭なことを思い出させるかもしれない。そう気を使って割れ物の触れるように慎重に問いかけてみた。
「まだ、なんとも言えないけれど、シルベ教が何か関わってる可能性は大きいわね」
「……」
両親が殺されたことは、誰だって堪えるものだ。あんなに取り乱したフォルモルははじめて見た。
フォルモルの心は大丈夫だろうか……ムリしてないだろうか……心配になってセイは振り返った。
すぐ目の前にフォルモルの笑顔があった。
「私のこと心配してくれてるのね。でも、大丈夫よ」
「そうですか」
「それより、セイのほうこそ傷ついてるんじゃないの?」
「オレが?」
「ゆいいつセイと同じ男だったレドさんが、殺されちゃったでしょう」
「……ですね」
悲しいことだ。
今日はレドの葬式がクト村で行われている。アカジャックの森からの帰りに、セイも立ち寄ってきた。
セイのことを追いかけまわしていたアンヌも、その葬式に出ていた。次にクト村をまとめるのはアンヌかもしれないと聞いている。その調子でセイと結婚するという謎の願望を捨ててくれていれば良い。
タギールという女にたいしては、憎悪すら抱く。でも、タギールとの決着をつけるのはオレではなくて、フォルモルなのかもしれないとセイは思うのだった。
「お姉さんが、慰めてあげるわ」
セイの耳に、甘噛みしてきた。
「あ、ちょ――ッ」
まだ20歳だと聞いているが、ずいぶんと大人びている。精神のほうは実年齢よりも、もっと老獪で、もっと妖艶なのかもしれない。常に大人ぶってセイのことをカラカい、あふれんばかりの色気を放つ。
これがフォルモルという女性なのだ。
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