《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第55話~カンオケの中身~
雨に降られる中、フォルモルはセイの胸元に顔をうずめていた。女になっているセイの乳房が、フォルモルの頭をつつみこんでいた。お互いに泥だらけになっている。フォルモルの髪についていた泥を払った。
「大丈夫ですか?」
「ええ。もう大丈夫よ。ありがとう。君がこんなに頼りになるなんて思ってなかったわ」
フォルモルの目は真っ赤になっていたが、笑顔を取り戻していた。ただその笑顔はいつもの妖艶な笑顔ではなく、か弱い女性の笑顔だった。
「そりゃみんなから、印をもらいましたから」
「そうじゃないわよ。耳、ふさいでくれたでしょ。セイに耳をふせがれると、厭なことが何にも聞こえなくなって、すごく安心できたから」
「そういうもんですか」
そう言ってセイは苦笑した。
ただ耳を塞いだだけで、こんなにも感謝されるとは思ってもいなかった。
「逃がしちゃったわね」
フォルモルはさして残念そうでもなく、そうつぶやいた。
「まあ。そのほうが良かったかもしれませんよ。これ以上、被害を増やされたらたまりませんし。それにほら――」
セイは指差した。
多くの冒険者たちが駆けつけてきた。きっとケルベロスが出たと聞いて、都市サファリアからあわててやって来たのだろう。百人近く武装した女性が駆けてくる。なんと美しくも物々しい繚乱だろうか。
拍手の音がひびいた。
イティカが手を叩いているのだった。
「私は今日、2度助けられた。1度は英雄王の印を持つ青年の圧倒的なチカラを見せつけられた。そして今度は、青年ほどのチカラはないが、君たちに助けられた。スバラシイ実力だった」
男であるセイと、女であるセーコが同一人物だということに、イティカはまだ気づいていないのだ。完全に別人だと考えているようだ。
「ケガのほうは?」
「もう大丈夫だ。そこのフォルモルくんだったかな? 彼女の治癒魔法で傷は癒えた。スバラシイ魔法だ。元凶を仕留められなかったことは残念だが、ケルベロスはもう出ないだろう。ひとまずメデタイことだ」
「ええ」
イティカは一歩一歩踏みしめるようにして、セイのもとに歩み寄ってきた。
「君たちはもう冒険者として登録はしているのかな?」
「いえ。まだ」
「なら、ぜひ都市サファリアの冒険者にチカラを貸してもらいたい。君たちの実力は《キングプロテア級》だ。私のほうから推薦状を冒険者ギルドに渡しておこう」
都市サファリアを、活動拠点にするのも良いかもしれない。
「わかりました。ありがとうございます」
イティカが握手を求めてきた。
あらためてイティカを見る。整いすぎた顔にプラチナブロンドの髪が張り付いていた。なにより異様にスタイルが良い。もしかして男に戻ったときのセイよりも、背が高いかもしれない。
「ところであの女は、いったい何を残して行ったのだろうか?」
イティカが不審そうに目を向けた。
目線の先には、カンオケが置かれていた。
「さあ。なんでしょうか」
もしかすると何か危険なものかもしれない。容易に触れて良いのかもわからない。警戒していたのだが、カンオケのほうから勝手にフタが開いた。また何かバケモノでも出てくるのではないかと身構えた。
違った。
カンオケの中に入っていたのは――。
首の――
首のない人間の死体だった。
「大丈夫ですか?」
「ええ。もう大丈夫よ。ありがとう。君がこんなに頼りになるなんて思ってなかったわ」
フォルモルの目は真っ赤になっていたが、笑顔を取り戻していた。ただその笑顔はいつもの妖艶な笑顔ではなく、か弱い女性の笑顔だった。
「そりゃみんなから、印をもらいましたから」
「そうじゃないわよ。耳、ふさいでくれたでしょ。セイに耳をふせがれると、厭なことが何にも聞こえなくなって、すごく安心できたから」
「そういうもんですか」
そう言ってセイは苦笑した。
ただ耳を塞いだだけで、こんなにも感謝されるとは思ってもいなかった。
「逃がしちゃったわね」
フォルモルはさして残念そうでもなく、そうつぶやいた。
「まあ。そのほうが良かったかもしれませんよ。これ以上、被害を増やされたらたまりませんし。それにほら――」
セイは指差した。
多くの冒険者たちが駆けつけてきた。きっとケルベロスが出たと聞いて、都市サファリアからあわててやって来たのだろう。百人近く武装した女性が駆けてくる。なんと美しくも物々しい繚乱だろうか。
拍手の音がひびいた。
イティカが手を叩いているのだった。
「私は今日、2度助けられた。1度は英雄王の印を持つ青年の圧倒的なチカラを見せつけられた。そして今度は、青年ほどのチカラはないが、君たちに助けられた。スバラシイ実力だった」
男であるセイと、女であるセーコが同一人物だということに、イティカはまだ気づいていないのだ。完全に別人だと考えているようだ。
「ケガのほうは?」
「もう大丈夫だ。そこのフォルモルくんだったかな? 彼女の治癒魔法で傷は癒えた。スバラシイ魔法だ。元凶を仕留められなかったことは残念だが、ケルベロスはもう出ないだろう。ひとまずメデタイことだ」
「ええ」
イティカは一歩一歩踏みしめるようにして、セイのもとに歩み寄ってきた。
「君たちはもう冒険者として登録はしているのかな?」
「いえ。まだ」
「なら、ぜひ都市サファリアの冒険者にチカラを貸してもらいたい。君たちの実力は《キングプロテア級》だ。私のほうから推薦状を冒険者ギルドに渡しておこう」
都市サファリアを、活動拠点にするのも良いかもしれない。
「わかりました。ありがとうございます」
イティカが握手を求めてきた。
あらためてイティカを見る。整いすぎた顔にプラチナブロンドの髪が張り付いていた。なにより異様にスタイルが良い。もしかして男に戻ったときのセイよりも、背が高いかもしれない。
「ところであの女は、いったい何を残して行ったのだろうか?」
イティカが不審そうに目を向けた。
目線の先には、カンオケが置かれていた。
「さあ。なんでしょうか」
もしかすると何か危険なものかもしれない。容易に触れて良いのかもわからない。警戒していたのだが、カンオケのほうから勝手にフタが開いた。また何かバケモノでも出てくるのではないかと身構えた。
違った。
カンオケの中に入っていたのは――。
首の――
首のない人間の死体だった。
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