《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第47話~イティカ・ルブミラル~

(まさか私たち以外にも、ケルベロスの居所を探り当てるとは)



 イティカは素直に感心していた。


 クロカミ・セーコとフォルモル・ラレンチェ。2人の女はそう名乗った。もう一人の女性タギール・ジリアルには見覚えがあった。最近、ギルドに加入した新入りの冒険者だ。それからピュラ・ピュラと名乗るエルフもいた。



 自己紹介しあったところで、「さて――」とイティカは切り出した。



「仲良くお茶会というわけにもいかん。私はあのケルベロスを退治しに来たのだ。悪いがここは私たちに任せてもらおう。ケルベロスを見つけたことは賞賛に値するが、あれは新米冒険者に敵うような相手ではないからね」



「わかりました。でも、危険だと判断した場合は援護させていただきます」



 黒髪のセーコと名乗る女性がそう言った。



「ムリな援護は必要ない。足手まといになるだけだからね」
 イティカはあえて強い言い方をした。



 名声を欲するあまり、強敵に挑んで命をムダにする冒険者もすくなくはない。そういった冒険者を不用意に出したくはなかった。



 それに――。
(うつくしい女だ)
 と、イティカはセーコと名乗る少女を見定めた。



 穢れを知らぬ無垢むくさと、大人びた輪郭の両方をかねそなえている。前に濡れそぼった黒髪や、濡れたマツゲには艶然えんぜんとした光まであった。



 このような女性が、無惨に命を散らせるところは見たくなかった。



「まぁ、こう見えて私は《キングプロテア級》の冒険者だ。私の戦いをしかと見ておいてくれ」



 連れてきた2人の《シャクナゲ級》冒険者とともに、イティカは茂みを出た。カラダを丸めているケルベロスの前に出る。ケルベロスは敵意を感じ取ったかして、獰猛な6つの瞳をイティカに向けてきた。



「さて、私の魔法を堪能するが良い」 



 イティカはおのれのカラダから、無数の剣を生やした。手のひら、腕、肩、背中……さながらイガグリだ。この魔法をもってして、イティカは《キングプロテア級》の冒険者となり、そしてギルド長として君臨しているのだった。



「行くぞ……ッ」
 雨でぬかるんだ地を蹴る。



 ケルベロスは3つある顔面のうちの1つを、イティカに向けてきた。ペッ、とくわえていたエルフの死体を吐きだした。



 イティカは手の平から生えている刀剣を振るった。ケルベロスは口を大きく開けて、キバでそれを受け流してきた。刀剣とキバの結び合いとなった。



 余っていた2つの頭が、イティカに襲いかかってくる。



「ザンザッ。テルデルンッ!」
 と、イティカは2人の名を呼んだ。



 アンヌの護衛のために連れてきた2人の《シャクナゲ級》の冒険者だ。



「承知ッ!」



 2人の冒険者がおのおのの顔面を相手にすることになった。胴体は1つしかないのに、巨大なバケモノを3匹相手にしているような感覚だった。



 イティカはケルベロスの腹に潜り込んだ。



 腹であれば無抵抗だろうと思ったのだ。黒々とした毛深い腹に剣を突き入れた。しかし、その皮膚はプレートメイルのような硬さがあった。剣がはじかれた。



 ケルベロスは大きく跳躍して、飛びずさった。



 大きな振動とともに着地する。そのさいに森の木々にたくわえられていた水玉が、豪雨のように降り注いだ。



「やはり強い」



 ケルベロスの腹を突き刺した際に、折れてしまった剣先を見つめた。その剣はトカゲの尻尾のようにその場に抜け落ちた。



 また新たに剣が生えてくる。3頭の魔犬もバケモノだが、イティカも自分が人間の域をこえた実力を持っている自負があった。

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