《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第44話~3種族の封印~

 エルフ族。
 蜥蜴族。
 獣人族。



 その3種族には、悪魔の雨の〝封印〟が授けられていた。しかし、エルフ族が守り続けていた〝封印〟は何者かの手によって奪われてしまった。その際に、ケルベロスに襲われてエルフたちは、食い尽くされたのだと言う。



「私は辛うじて逃げてきたのですが、仲間たちはケルベロスに食いつくされてしまいました」



「じゃあ、この悪魔の雨はエルフから〝封印〟が奪われたから――ということなのか?」



「はい」
 と、エルフは一度はうなずいたが、「いいえ」とすぐに否定した。



「エルフ族の〝封印〟だけではありません。おそらく蜥蜴族と獣人族の〝封印〟にも何かがあったのだと思います」



〝封印〟というものが、どういうものか判然ハッキリとしない。おそらくは、人の持つ「印」のようなものだろう。



 ウソを吐いている様子もないし、ウソを吐く理由もない。言っていることは信じて良いはずだ。



 偶然にも、この雨の降る理由を見つけてしまったことになる。



「もうひとつ気になるんだけど」
「なんでしょう?」



「エルフ族を襲ったケルベロスは、雨が降る前からいた――ということなのか?」



「はい」
 と、エルフはうなずいた。



 それは奇妙な話だ。モンスターが現われたのは、この雨が降りはじめてからのはずだ。



「モンスターを召喚する印があってもオカシクはないけどね」
 と、フォルモルがつぶやいた。



 と、いうことは――。



「何者かがケルベロスを召喚し、エルフを襲って〝封印〟を奪った。そして、この雨が降りはじめた――ってことか」



「はい」
 この災厄は人為的に引き起こされたということだ。



「いったい、誰がそんなことを……」
「わかりません」



 私からも質問して良いかしら――とフォルモルがベッドに腰かけて問いかけた。



「なんでしょうか?」



「その〝封印〟っていうのは、つまり印なのよね?」



「はい。エルフ族長、蜥蜴族長、獣人族長の3人が持っているものです」



 やはり印なのだ。



「じゃあ、族長が誘拐されたってことかしら?」


「はい」
 と、エルフは首をタテに振った。
 緑の髪が揺れる。



「どうして3種族なのかしら。人族も混ぜてもらっても良いと思うのだけれど」



 フォルモルはそう言って、首をかしげた。



「太古の昔に、人族の英雄王から授かった印なのです」



「英雄王。それってもしかして……」
 フォルモルはそうつぶやいて、セイのほうを見てきた。



 エルフが応じる。



「はい。英雄王ハーレムです。大昔に悪魔の雨が降ったときに、その雨の〝封印〟を3種族の長に授けたのです。そしてその〝封印〟は代々引き継がれてきました」



 一呼吸おいて、エルフは続けた。



「人族には〝封印〟を持つ者はいません。ですが、この世界のどこかに英雄王の印を持つ者がいるはずです。彼を見つけ出さなくてはなりません」



「それはオレだ」
 セイは言った。



「〝英雄印〟を持ってるのは、オレだ」
 セイはもう一度そう言った。



 エルフは怪訝そうにセイのことを見つめていたが、不意にかぶりを振った。



「いいえ。違います」
「ち、違う?」



「〝英雄印〟を持っているのは、男性のはずです。この世には同じ印を持った人も多く存在します。ですが、〝英雄印〟はたった1人だけに与えられる印です」



 類まれなる精力絶倫の男にだけ与えられるとも聞きます――とエルフは付け加えた。



「まぁ」
 と、フォルモルは声をあげる。



「なんて破廉恥な」
 と、キリアが顔を赤らめる。



「やっぱりスケベなんだ」
 と、シラティウスが呆れたような声を発する。



 誤解だ。
 セイは自分のことを絶倫だなんて思ったことは、一度もない。



「オレは今、女性の姿をしている。だけど、ホントウは男なんだ」



 変身をといた。



 男のカラダに輪郭がもどってゆく。胸がへっこんで、カラダの丸みもなくなる。髪もみじかくなった。やはり男の姿のほうが落ちつく。女性の姿をしていると――慣れていないからだろうが――思わぬところに肉がついていて動きにくい。



 エルフは目を大きく見開いた。



「ま、まさか、ホントウに英雄王の印を?」



「これだろ」
 舌を突き出した。



 セイからは見えないが、そこに六芒星が刻まれているはずだ。



 エルフはベッドから跳び出すと、セイの口の中をのぞきこんできた。そんなにマジマジと口内を見られると恥ずかしい。歯を清潔にしておいて良かったと、最近そう思うことが多い。



「間違いありません。英雄王の印です」
「だからウソは言ってないって」



「絶倫王さま」
「それはやめろ」



「失礼しました。英雄王ハーレムの印を持つ者よ。どうか我がエルフたちの森を、ケルベロスから救ってください」



 エルフはそう言うと、床にひざまずいた。



「エルフ族長が誘拐されて、この悪魔の雨が降ってるって言うんなら、もちろん協力させてもらうよ」



「ありがとうございます」
 エルフは、名をピュラ・ピュラと名乗った。

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