《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第44話~3種族の封印~
エルフ族。
蜥蜴族。
獣人族。
その3種族には、悪魔の雨の〝封印〟が授けられていた。しかし、エルフ族が守り続けていた〝封印〟は何者かの手によって奪われてしまった。その際に、ケルベロスに襲われてエルフたちは、食い尽くされたのだと言う。
「私は辛うじて逃げてきたのですが、仲間たちはケルベロスに食いつくされてしまいました」
「じゃあ、この悪魔の雨はエルフから〝封印〟が奪われたから――ということなのか?」
「はい」
と、エルフは一度はうなずいたが、「いいえ」とすぐに否定した。
「エルフ族の〝封印〟だけではありません。おそらく蜥蜴族と獣人族の〝封印〟にも何かがあったのだと思います」
〝封印〟というものが、どういうものか判然としない。おそらくは、人の持つ「印」のようなものだろう。
ウソを吐いている様子もないし、ウソを吐く理由もない。言っていることは信じて良いはずだ。
偶然にも、この雨の降る理由を見つけてしまったことになる。
「もうひとつ気になるんだけど」
「なんでしょう?」
「エルフ族を襲ったケルベロスは、雨が降る前からいた――ということなのか?」
「はい」
と、エルフはうなずいた。
それは奇妙な話だ。モンスターが現われたのは、この雨が降りはじめてからのはずだ。
「モンスターを召喚する印があってもオカシクはないけどね」
と、フォルモルがつぶやいた。
と、いうことは――。
「何者かがケルベロスを召喚し、エルフを襲って〝封印〟を奪った。そして、この雨が降りはじめた――ってことか」
「はい」
この災厄は人為的に引き起こされたということだ。
「いったい、誰がそんなことを……」
「わかりません」
私からも質問して良いかしら――とフォルモルがベッドに腰かけて問いかけた。
「なんでしょうか?」
「その〝封印〟っていうのは、つまり印なのよね?」
「はい。エルフ族長、蜥蜴族長、獣人族長の3人が持っているものです」
やはり印なのだ。
「じゃあ、族長が誘拐されたってことかしら?」
「はい」
と、エルフは首をタテに振った。
緑の髪が揺れる。
「どうして3種族なのかしら。人族も混ぜてもらっても良いと思うのだけれど」
フォルモルはそう言って、首をかしげた。
「太古の昔に、人族の英雄王から授かった印なのです」
「英雄王。それってもしかして……」
フォルモルはそうつぶやいて、セイのほうを見てきた。
エルフが応じる。
「はい。英雄王ハーレムです。大昔に悪魔の雨が降ったときに、その雨の〝封印〟を3種族の長に授けたのです。そしてその〝封印〟は代々引き継がれてきました」
一呼吸おいて、エルフは続けた。
「人族には〝封印〟を持つ者はいません。ですが、この世界のどこかに英雄王の印を持つ者がいるはずです。彼を見つけ出さなくてはなりません」
「それはオレだ」
セイは言った。
「〝英雄印〟を持ってるのは、オレだ」
セイはもう一度そう言った。
エルフは怪訝そうにセイのことを見つめていたが、不意にかぶりを振った。
「いいえ。違います」
「ち、違う?」
「〝英雄印〟を持っているのは、男性のはずです。この世には同じ印を持った人も多く存在します。ですが、〝英雄印〟はたった1人だけに与えられる印です」
類まれなる精力絶倫の男にだけ与えられるとも聞きます――とエルフは付け加えた。
「まぁ」
と、フォルモルは声をあげる。
「なんて破廉恥な」
と、キリアが顔を赤らめる。
「やっぱりスケベなんだ」
と、シラティウスが呆れたような声を発する。
誤解だ。
セイは自分のことを絶倫だなんて思ったことは、一度もない。
「オレは今、女性の姿をしている。だけど、ホントウは男なんだ」
変身をといた。
男のカラダに輪郭がもどってゆく。胸がへっこんで、カラダの丸みもなくなる。髪もみじかくなった。やはり男の姿のほうが落ちつく。女性の姿をしていると――慣れていないからだろうが――思わぬところに肉がついていて動きにくい。
エルフは目を大きく見開いた。
「ま、まさか、ホントウに英雄王の印を?」
「これだろ」
舌を突き出した。
セイからは見えないが、そこに六芒星が刻まれているはずだ。
エルフはベッドから跳び出すと、セイの口の中をのぞきこんできた。そんなにマジマジと口内を見られると恥ずかしい。歯を清潔にしておいて良かったと、最近そう思うことが多い。
「間違いありません。英雄王の印です」
「だからウソは言ってないって」
「絶倫王さま」
「それはやめろ」
「失礼しました。英雄王ハーレムの印を持つ者よ。どうか我がエルフたちの森を、ケルベロスから救ってください」
エルフはそう言うと、床にひざまずいた。
「エルフ族長が誘拐されて、この悪魔の雨が降ってるって言うんなら、もちろん協力させてもらうよ」
「ありがとうございます」
エルフは、名をピュラ・ピュラと名乗った。
蜥蜴族。
獣人族。
その3種族には、悪魔の雨の〝封印〟が授けられていた。しかし、エルフ族が守り続けていた〝封印〟は何者かの手によって奪われてしまった。その際に、ケルベロスに襲われてエルフたちは、食い尽くされたのだと言う。
「私は辛うじて逃げてきたのですが、仲間たちはケルベロスに食いつくされてしまいました」
「じゃあ、この悪魔の雨はエルフから〝封印〟が奪われたから――ということなのか?」
「はい」
と、エルフは一度はうなずいたが、「いいえ」とすぐに否定した。
「エルフ族の〝封印〟だけではありません。おそらく蜥蜴族と獣人族の〝封印〟にも何かがあったのだと思います」
〝封印〟というものが、どういうものか判然としない。おそらくは、人の持つ「印」のようなものだろう。
ウソを吐いている様子もないし、ウソを吐く理由もない。言っていることは信じて良いはずだ。
偶然にも、この雨の降る理由を見つけてしまったことになる。
「もうひとつ気になるんだけど」
「なんでしょう?」
「エルフ族を襲ったケルベロスは、雨が降る前からいた――ということなのか?」
「はい」
と、エルフはうなずいた。
それは奇妙な話だ。モンスターが現われたのは、この雨が降りはじめてからのはずだ。
「モンスターを召喚する印があってもオカシクはないけどね」
と、フォルモルがつぶやいた。
と、いうことは――。
「何者かがケルベロスを召喚し、エルフを襲って〝封印〟を奪った。そして、この雨が降りはじめた――ってことか」
「はい」
この災厄は人為的に引き起こされたということだ。
「いったい、誰がそんなことを……」
「わかりません」
私からも質問して良いかしら――とフォルモルがベッドに腰かけて問いかけた。
「なんでしょうか?」
「その〝封印〟っていうのは、つまり印なのよね?」
「はい。エルフ族長、蜥蜴族長、獣人族長の3人が持っているものです」
やはり印なのだ。
「じゃあ、族長が誘拐されたってことかしら?」
「はい」
と、エルフは首をタテに振った。
緑の髪が揺れる。
「どうして3種族なのかしら。人族も混ぜてもらっても良いと思うのだけれど」
フォルモルはそう言って、首をかしげた。
「太古の昔に、人族の英雄王から授かった印なのです」
「英雄王。それってもしかして……」
フォルモルはそうつぶやいて、セイのほうを見てきた。
エルフが応じる。
「はい。英雄王ハーレムです。大昔に悪魔の雨が降ったときに、その雨の〝封印〟を3種族の長に授けたのです。そしてその〝封印〟は代々引き継がれてきました」
一呼吸おいて、エルフは続けた。
「人族には〝封印〟を持つ者はいません。ですが、この世界のどこかに英雄王の印を持つ者がいるはずです。彼を見つけ出さなくてはなりません」
「それはオレだ」
セイは言った。
「〝英雄印〟を持ってるのは、オレだ」
セイはもう一度そう言った。
エルフは怪訝そうにセイのことを見つめていたが、不意にかぶりを振った。
「いいえ。違います」
「ち、違う?」
「〝英雄印〟を持っているのは、男性のはずです。この世には同じ印を持った人も多く存在します。ですが、〝英雄印〟はたった1人だけに与えられる印です」
類まれなる精力絶倫の男にだけ与えられるとも聞きます――とエルフは付け加えた。
「まぁ」
と、フォルモルは声をあげる。
「なんて破廉恥な」
と、キリアが顔を赤らめる。
「やっぱりスケベなんだ」
と、シラティウスが呆れたような声を発する。
誤解だ。
セイは自分のことを絶倫だなんて思ったことは、一度もない。
「オレは今、女性の姿をしている。だけど、ホントウは男なんだ」
変身をといた。
男のカラダに輪郭がもどってゆく。胸がへっこんで、カラダの丸みもなくなる。髪もみじかくなった。やはり男の姿のほうが落ちつく。女性の姿をしていると――慣れていないからだろうが――思わぬところに肉がついていて動きにくい。
エルフは目を大きく見開いた。
「ま、まさか、ホントウに英雄王の印を?」
「これだろ」
舌を突き出した。
セイからは見えないが、そこに六芒星が刻まれているはずだ。
エルフはベッドから跳び出すと、セイの口の中をのぞきこんできた。そんなにマジマジと口内を見られると恥ずかしい。歯を清潔にしておいて良かったと、最近そう思うことが多い。
「間違いありません。英雄王の印です」
「だからウソは言ってないって」
「絶倫王さま」
「それはやめろ」
「失礼しました。英雄王ハーレムの印を持つ者よ。どうか我がエルフたちの森を、ケルベロスから救ってください」
エルフはそう言うと、床にひざまずいた。
「エルフ族長が誘拐されて、この悪魔の雨が降ってるって言うんなら、もちろん協力させてもらうよ」
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