《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第42話~アンヌ・チェルⅡ~
他の冒険者たちの談笑している中にまじって、アンヌも席についた。イティカにおごってもらったミートスパゲティが置かれている。豚のミンチ肉にトマトソースが絡み合っている。
おいしい。
「その魔力の匂いをかぎわける――というのは、どんな匂いでもかぎわけることが出来るのだろうか?」
と、イティカが上体を乗り出して尋ねてきた。
「だいたいは可能です。でも、迷子の子どもを探すときぐらいにしか、使えませんが」
「モンスターの匂いをたどったりすることは?」
「やったことないですが、できると思います」
パスタをすする。
まろやかなトマトソースが、口の中で溶けていく。
「なら、ひとつ頼みたいことがあるのだが」
「なんでしょう?」
「これに付着している魔力をたどることはできるだろうか?」
イティカはそう言うと、布袋から一本の角を取り出した。いや。よく見るとそれは角ではなくて、何かのキバのようだった。人の頭ほどの大きさのあるキバだ。
「これは?」
「実はな――」
ここ数日、各地のケルベロスが出没して困っている。だが、ケルベロスはアカジャックの森を住処としており、なかなか見つけ出すことはできない。そこで、アンヌの能力でケルベロスを見つけ出すことはできないだろうか……ということだった。
「うーん」
と、アンヌはうなった。
ミートスパゲティをおごってもらっておいて悪いが、乗り気にならなかった。セイを追いかけてきたのに、そんなバケモノを追いかけるのは厭だ。危険だろうと思う。
「交換条件だ。アンヌくんが手伝ってくれるなら、私もその男を探すのを手伝おう。どうであろうか?」
あまり乗り気にならなかったのだが、しつこく懇願された。結局、アンヌは手伝うことになった。バケモノを退治できると言うのであれば、別に悪いことをするわけではないのだ。
「わかりました」
「すまんな。しかし、アカジャックの森に隠れたケルベロスはなかなか見つけることが出来んのだ」
「では、さっそく」
キバから発せられる魔法の匂いをかいだ。ずいぶんと獣臭い。
「あら?」
と、アンヌは声をあげた。
「どうかしたか?」
「いえ。このキバと同じ魔力の匂いが、このあたりからもしますね」
冒険者ギルドにかすかに漂っている。
「はて? なぜだろうか。私が一度、ケルベロスと対峙したからかもしれん」
「そうですか」
いや。
たぶんそうじゃない。
似たような匂いを発している者が近くにいるのだ。が、こんな都市の中にケルベロスがいるとは思えない。無視することにした。
「それでは一緒に、アカジャックの森まで来てくれるだろうか? 馬車を用意しよう。それに《シャクナゲ級》の冒険者を2人。警護のために同行させよう」
「はい」
最初は乗り気ではなかった。だが、馬車に乗ったあたりから気分が高まりはじめた。警護までつけられて、「どうであろうか?」などと様子をうかがわれていると、特別扱いをされている心地になってきたのだ。
(貴族の娘って、こんな感じかしら)
なんて思ったりもした。
おいしい。
「その魔力の匂いをかぎわける――というのは、どんな匂いでもかぎわけることが出来るのだろうか?」
と、イティカが上体を乗り出して尋ねてきた。
「だいたいは可能です。でも、迷子の子どもを探すときぐらいにしか、使えませんが」
「モンスターの匂いをたどったりすることは?」
「やったことないですが、できると思います」
パスタをすする。
まろやかなトマトソースが、口の中で溶けていく。
「なら、ひとつ頼みたいことがあるのだが」
「なんでしょう?」
「これに付着している魔力をたどることはできるだろうか?」
イティカはそう言うと、布袋から一本の角を取り出した。いや。よく見るとそれは角ではなくて、何かのキバのようだった。人の頭ほどの大きさのあるキバだ。
「これは?」
「実はな――」
ここ数日、各地のケルベロスが出没して困っている。だが、ケルベロスはアカジャックの森を住処としており、なかなか見つけ出すことはできない。そこで、アンヌの能力でケルベロスを見つけ出すことはできないだろうか……ということだった。
「うーん」
と、アンヌはうなった。
ミートスパゲティをおごってもらっておいて悪いが、乗り気にならなかった。セイを追いかけてきたのに、そんなバケモノを追いかけるのは厭だ。危険だろうと思う。
「交換条件だ。アンヌくんが手伝ってくれるなら、私もその男を探すのを手伝おう。どうであろうか?」
あまり乗り気にならなかったのだが、しつこく懇願された。結局、アンヌは手伝うことになった。バケモノを退治できると言うのであれば、別に悪いことをするわけではないのだ。
「わかりました」
「すまんな。しかし、アカジャックの森に隠れたケルベロスはなかなか見つけることが出来んのだ」
「では、さっそく」
キバから発せられる魔法の匂いをかいだ。ずいぶんと獣臭い。
「あら?」
と、アンヌは声をあげた。
「どうかしたか?」
「いえ。このキバと同じ魔力の匂いが、このあたりからもしますね」
冒険者ギルドにかすかに漂っている。
「はて? なぜだろうか。私が一度、ケルベロスと対峙したからかもしれん」
「そうですか」
いや。
たぶんそうじゃない。
似たような匂いを発している者が近くにいるのだ。が、こんな都市の中にケルベロスがいるとは思えない。無視することにした。
「それでは一緒に、アカジャックの森まで来てくれるだろうか? 馬車を用意しよう。それに《シャクナゲ級》の冒険者を2人。警護のために同行させよう」
「はい」
最初は乗り気ではなかった。だが、馬車に乗ったあたりから気分が高まりはじめた。警護までつけられて、「どうであろうか?」などと様子をうかがわれていると、特別扱いをされている心地になってきたのだ。
(貴族の娘って、こんな感じかしら)
なんて思ったりもした。
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